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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
九章 訪れますは世界の危機

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軽率な隠しコマンド



 恐らく島があるかもしれない、とされている場所に行くには、大まかに二つの方法がある。

 一つ、島の近くの大陸から行く方法。

 こちらはどうにか陸路で行けない事もなさそうではある。

 といっても、島に渡るためにやっぱり多少海を移動する事になりそうではあるのだけれど。

 ただ、そちらからはまだ木の上から魔術で飛ぶだとか、そういう方法で行けない事もなさそうな気がしている。


 魔術でずっと飛びっぱなしだと消耗が激しいが、しかし短距離ならどうにか……といったところだろうか。


 難点は、神の楔が近隣にない事で島に行くまでの大半が陸路とはいえ相当な距離を移動しなければならないという事だ。


 もう一つ、向かい側の大陸からどうにかして渡るルート。


 地図で見る限り、島があるだろう場所と向かい側の大陸は案外近い。

 細く伸びた地形の先端が島があるだろう位置に結構近い感じがするのだ。

 向かい側の大陸のそちらには、町があって案外すぐに行けそうな気がしなくもない。


 だがしかし、難点はやはり存在する。

 海路から行けばあっさり到着しそうではあるが、しかし暗礁が多く船での移動は推奨されていないというのだ。

 実際向かい側の大陸にある町は海が近いくせに港町ではないようで。

 であれば、仮にそちらに神の楔を使って転移しても、そこから船を調達するところから始めるのであればかなりの時間がかかりそうだし、ましてや暗礁が多く船での移動は直通で行くとなれば最悪船が転覆する可能性もあり得る。それを避けるためには、やや遠回りしなければならない。しかしそうなると意味がない。


 近いように見えるといっても、やはりそれなりの距離があるため大陸の先端あたりから魔術でもって飛ぶにしたって途中で力尽きる可能性もあるし、そうでなくとも。


 先程ウェッジとの会話では出なかったが、そこらの海域を縄張りにしている大型の魚だとか、海獣なんてものがいたのであれば。

 下手に術で飛んで移動するにしても、鳥か何かだと勘違いされて襲われないとも限らない。


 急がなければならない、とウェズンは思っているが、だからといって危険に突っ込んでいくのは問題しかない。


 オルドが脳内からジークなら飛べるから助けてもらえ、と告げてきたのでウェズンはダメ元でモノリスフィアからジークへ連絡を入れ、ついでに頼りになりそうな助っ人の力を借りる事にした。


 メッセージは急いでいるのでとても簡潔である。


 ジークには大至急助けてほしい事がある、という文面で。

 それからもう片方の助っ人には、世界の命運について。


 いくら急いで切羽詰まっているといっても、そのメッセージはどうなんだ? と思われそうではあるが。


 幸いな事にジークは早い段階でメッセージに気付いてくれたし、助っ人として頼もうとしていた相手も同様にすぐさま返信がきた。


 ジークの肉体は既にドラゴンのものではないし、イルミナの母親の肉体である。

 魔女の身体ではあったが、しかしかつてウェズンがジークと戦った時、あの時ジークからは竜の羽が背中から出ていた事もあるので、オルドの言うように飛べない事はないのだろう。

 ただ、大勢を連れていくには難しいかもしれない。

 だが、まぁ。


 ウェズンが連絡を入れた二人は別にジークの力に頼らずともどうにかできるだろうと思ったのだ。

 本題に入る前に一触即発になったりしないだろうか……という不安もあるにはあったけれど。

 どうにかなるはずだと信じたい。

 どうにかなる、と断言するには少しばかり難しかった。



 ウェッジが見せてくれた古い地図には確かに島があった。今使われている地図からは消えているけれど、もしそこに島があるのならば良し。本当に水没しているなら、その時は別の方法を考えるしかない。

 どちらにしても、今回助けを求めた相手なら頼りになるはず、と思う事にしてウェズンは向かい側の大陸にある町まで神の楔でやって来た。


「それで、一体何がどうなってこんな所へ?」


 助けてほしい、とただ事ではない勢いでメッセージが送られてきたのもあって、ジークからすればしぶしぶではあったのだ。

 正直相手がウェズンでなければスルーしていた。


 既に時刻は夜である。

 海が近い事もあってざざぁんと波の音が聞こえてくるが、しかしすっかり暗くなった事もあり、わーい海だと浮かれるような雰囲気は欠片も存在していなかった。


「僕の思い違いであればいいんだけどね……でも思い違いじゃなかったら、緊急事態なんだ」


 どう説明するべきか。

 説明はしないといけない。何もわからないまま手伝え、は流石に無理があるだろうから。


 だが、もう二人、ウェズンが呼んだ相手と合流してからでいいだろう。同じ説明を何度もしたいとは思わないので。


「明日とかじゃダメだったのか?」

「余裕かまして手遅れになりました、じゃ不味いんだよ。正直どれくらい猶予があるのかもわからないからさ、こっちでま、なんとかなるだろ、って甘く見積もった結果アウトだったら本当に問題しかない」

「それで、こんな夜になってからこんな辺鄙なところまできたわけか……」


 そもそも学外授業でここ来た事あるのか? なんて言われてウェズンは即座に否定した。

 来たことはない。初めてである。

 地図で町の名前があったからどうにかなったけど、もし記載されていなかったらここに来るだけでも結構な時間を費やしたに違いなかった。


「それで、他に誰を呼んだと?

 教師や生徒なら学園から共に来ただろうから、外部の奴なのはわかるけど」


 今なら学院も同じ島内にあるので、学院側の誰かというわけでもない事はジークにだってわかっている。


 同じ敷地内とはいえ流石に学園の生徒が学院に乗り込むのも問題がありそうだな、となったのならば、別行動で出てくるというのもないわけじゃないが、それならもっと説明に時間がかかっていてもおかしくはなかった。

 しかしこうもあっさりと神の楔でここにやって来たという事から、学院の生徒か教師でもないと判断した次第だ。


「ここにいたか」

「は?」


 神の楔のすぐ近くだと町中なので、周囲の人の目を考えた結果町の外で待つ事となったのだが、現れた人物を見てジークは思わず声を出していた。


 港町というわけでもなく、何の変哲もないただの町。

 これといった特徴があるかと言われるとそうでもない町に、夜になってからやって来る人間というのはそもそも珍しくもある。

 なので下手に町中に留まり続けて周囲の目が向けられた場合、それはそれで面倒な事になりそうだなと思ったからこそウェズンは町の外にさっさと出てきたのだ。

 ジークもここで待った方が合流するだけなら便利だろうけれど……と思ったものの、それでもやはり人の目が気になったのか特に何を言うでもなく移動してきた。


 待ち人は町の中からやってくる。

 町から外に行く際の出入り口になっている場所は、限られていた。

 その中の一つを指定してメッセージを送り、そうしてそこで待っていたのだが、町中からやって来た人物にジークの表情が露骨に歪む。


「お前かよ……いや、どうして、とは言わんが」


 これがレイだったなら隠す事なく「うへぇ」とか言い出してもおかしくないくらい嫌そうな表情だった。


 どうして、という疑問は今更すぎた。

 ちょっと考えたらそりゃそうだよな、とわかりすぎるくらいわかるものだったので。


「それで、壮大な理由で呼びだしたのはどういうつもりだ? 神前試合に関する事ならまだしも、そうでなくとも私は既に参加もできない身だ。それ以外でこうして呼び出される理由もないと思うのだが」

「ウェイン、言い方。

 もうちょっとあるでしょ、言葉選び」

「ぬ、しかしだな……」


「父さん、母さん」


 やって来たのはウェズンの両親、ウェインストレーゼとファーゼルフィテューネだった。

 そこだけ見れば親子なのでいる事に関しては特におかしな話でもないが、そこにジークがいるというだけで途端におかしな集まりに変わる。


 そうでなくとも何の関係もない、と言い切れるものでもないのだ。因縁が無いとは決して言えない。

 そりゃあジークだってイヤそうな……というかイヤな顔はする。


「確証はないけど、このままだと大変な事になると思ったから呼んだ。

 勿論、無駄足になる可能性も充分にある。それでも、万が一を考えたならこれが最善だと思ったから」


 何もホームシックになって両親恋しさに呼び寄せたわけではない。

 考えた末の人選だった。



 本来ならば、きっと同じ学園の生徒、それも普段ウェズンとよく関わっている連中の中から声をかけるべきなのだろう。

 ここがイアの知る小説やゲームの中であったなら、選択肢はそうなっていたに違いない。

 けれどもここは既にイアの知る世界とは別の道を歩み始めている。

 それに選択肢だってウェズンやイアの前に表示されたりなんてこともなかったので。


 それならば、現時点で考えられる最高の人選はとなれば。

 戦力面でも信頼面でも、両親は最適と言えた。

 少なくとも身内なので、ウェズンの言葉を聞く耳もたずに切り捨てはしないだろう。

 二人はなんだかんだ肝心な事は言わなくても、それでもウェズンの事を案じてはいたようなので。


 だからこそこうしてやってきてくれた。ウェズンとしてはそれだけでも心強かった。


 ゲームだったら絶対に出ないであろう選択肢。


 神前試合から出禁を食らった父と、父と並んでも足手まといにならない実力を持つらしき母。

 そしてジーク。


 正直この時点でゲームだったらラスダンラスボス余裕だなと思える面子である。


 もし、両親を頼れなければアレスやワイアットといった、学園や学院の面々の中から声をかける事になっていたかもしれない。

 ただ、説明がとても難しくなるし、最悪ウェズンの頭がどうかしていると思われる可能性も大なので流石にその選択肢はウェズン本人も遠慮したいと思っていた。


 この三人ならウェズンの知らない情報も持っているだろうし、その上でウェズンがこれから言う荒唐無稽かもしれない話も即座に切り捨てたりはしないだろう、と思いたい。


「その確証を得るために、まずこの先にある島の神殿に行きたいんだ」


 正直ここでいつまでも立ち話をする時間も惜しい。

 説明は移動しながらでもいいだろう。

 それについては誰も反論しなかったので、ウェズンは足早に移動を開始した。

 長編の次の更新は中旬か下旬あたりになります。

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