表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
九章 訪れますは世界の危機

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

397/466

別方向からやってきたフラグ



 その話は封印だ、とイアに言ったものの、正直ウェズンは地下闘技場が気になって仕方なかった。


 前世でもそんなんお目にかかった事ないぞ。あるのか本当に。

 いや、あるところにはあるんだろうけれども。

 リアルに存在しているとして、どちらかと言えば可能性が高いのは海外だろうなとは思うがきっと自分が暮らしていた国にもあったのかもしれない。知らんけど。


 地下ではないが闘技場なら映画やらゲームやらで見た事はある。

 ゲームだと商品目当てに参加する事だってある。


 だがそれはあくまでもゲームだったからだ。

 リアルで闘技場が目の前にあって、それじゃ参加してみるか、とはならない。

 大体前世のウェズンは格闘技とは無縁な存在だったので。多少のアウトドア経験はあれど流石に格闘技までは手を出していなかった。まぁ、弟たちの一部ではステゴロで喧嘩覚えたのもいるけれど。

 思春期辺りにグレて明らか悪そうな連中とつるんでたのを拳骨で制圧して連れ帰った事はあるけれど、だからといって喧嘩が滅法強かったわけでもない。


 前世では、というか今世でも基本的にウェズンは平和主義者だ。


 だがこうして割と終わってる感あるとはいえファンタジーな世界に転生した以上、それなりにそういった面を楽しんでいきたいとは思っている。楽しむ余裕がなくなったらメンタル荒む一方でロクな事にならない予感しかしていない。


 とはいえ、学園内で他の誰かに地下闘技場の存在を確認するにしても、それはそれで何らかのフラグが立ちそうな気しかしない。

 生徒の間で噂になってるくらいならともかく、下手に教師に聞いて「あるぞ」とかしれっと答えられるのも微妙な気持ちになるけれど、更に「じゃ、参加してみるか」とか強制的に地下闘技場の選手デビューはしたくない。


 ゲームの闘技場は割と何でもありのルールだからレベル上げてスキルとかしっかり把握して装備とかもきちんとしておけばある程度どうにかなるとは思うけれど、実際の闘技場で果たしてそこまで何でもありの試合があるだろうか?

 ゲームならHPがゼロになってもそれはただの敗北扱いになってゲームオーバーにはならないだろうけれど、現実でのHPゼロは間違いなく死亡である。戦闘不能=気絶だとか、そんな生ぬるいものではないに違いない。


 そういった何でもありのルールが適用されていて、最悪死ぬのもあり得るようなのなんて、この先にある神前試合くらいにしておいてほしい。


 となると、仮に地下闘技場が存在していたとして、魔術や魔法を使わず己の肉体の身で勝ち抜け、みたいな可能性が高い。


 そうなった場合、ウェズンは間違いなく勝ち抜けない。

 何でもありで最後に生きていれば勝ち、とかそういうルールならどうにかなりそうな気はするが、魔法や魔術を使わずステゴロでの勝負となると、入学した直後、クラスメイト達とそれを実際にやって勝ち抜いたとはいえ、今はもう恐らく勝てない。今同じことをやれば恐らくは途中で脱落する。

 あの時はイアからそういうのがある、と聞いていたから覚悟をきめてやったからどうにかなったのだ。

 もし知らないままあの流れに巻き込まれていたならば、えっ人殴んの……? と戸惑い躊躇って恐らくレイあたりにボッコボコにされていたはずなのだ。

 正直フィジカル面では今現在、明らかにレイの方が優れている。あの時はレイも様子見していた部分があったから、どうにか勝てたに過ぎない。


 地下闘技場にいる猛者がどんな者かは知らないが、レイよりも更にフィジカルに優れたようなのがいたら間違いなくワンパンKOである。

 なので、下手に生徒や教師に聞いて自分が参加するフラグは立てたくなかった。

 観客側で見るだけならまだどうにか。


 だが気になっているのは事実だし、このままだとうっかり好奇心があふれ出して最悪な状況で最悪な相手に地下闘技場の話題を出すかもしれない。具体的にはテラあたりに言ったらアウトだと思っている。

 テラなら地下闘技場が存在しているのなら、その話題を出した時点でじゃあお試しで参加してみろとか言い出してこっちがいくら参加はしたくないと言っても選手として参加させられそうな予感しかしないので。

 死なないかもしれないけど果たして全治何か月コースになる事やら。


 なので、確実に知っていそうで、余計なフラグが立って地下闘技場に参戦するような事のない相手に聞いてみる事にした。


 具体的には学園を卒業した相手。

 それなら、現時点生徒でもないし教師でもない。なので地下闘技場の有無だけをほぼ安全に確認できるという寸法だった。


 早速モノリスフィアにメッセージを打ち込んで、そうして送信。

 すぐに気づいて返信がくるとは思っていないので、ウェズンはモノリスフィアを机の上に置いて飲み物でも用意しようかと一度席を外した。


 そうしてカップにカフェオレを注いで戻ってくれば、思った以上に早く返信があった。


 地下闘技場に関しては、どうやらあるらしい。

 懐かしいな、の一文で察した。

 だがしかし、かつてはあったらしいが、今はどうだかわからない、とも。


 どうやら当時割とメジャーな施設だったらしい。

 仮にも学び舎に地下闘技場ってどうなんだとしか思えないが。それなりに利用者も多く賑わっていたのだとか。

 嘘だろそんなキッズが休み時間に体育館でボール遊びするくらいのノリで使われてたのかよ……と思うが、それだけ白熱したバトルが繰り広げられた結果、うっかり地下闘技場が崩壊するかもしれない展開に陥り、危うくその場にいた生徒たちが生き埋めになるところだったとか。何それ怖い、と無意識にウェズンは呟いていた。


 とはいえ、完全に崩壊したわけでもないので、取り壊されて埋め立てられた、とかではない限りはまだあるだろうとの事。

 危険だから立ち入り禁止とかされてそうだな、と思った。

 それは例えるのなら、実際は封鎖されているがアニメなどでは何故か当然のごとく開放されている屋上のように。


 ともあれ、地下闘技場が実在したという証言を得られたことでウェズンとしては満足したのだ。謎を謎のままにして、結局どうなんだろうともやもやする事がなくなっただけでも精神衛生面には良い結果と言える。

 なぁんだそっかー、とそのままモノリスフィアをリングの中にしまおうとしたウェズンだったが、その直前に来たメッセージに思わずその手を止めた。



「え、は? 何? 弟?」


 すっかり全部解決した気になっていたウェズンに、突然ぶちかまされた一文には、近々ウェズンに弟ができるらしいとの事。

 弟。

 えっ、母さんが妊娠して……!?

 自然にウェズンの思考がそうなるのも無理はない。思えば入学してから母と会う事はほぼなかった。連絡していないわけではなかったが、直接会う事なんてなかったはずだ。会ったっけ……? というくらい憶えていない。父に関してはこちらに足を運んでやって来た事もあるけれど、母は基本家からあまり離れようとしていなかったので。

 それも今にして思えばテラプロメのせいなんだろうと思っていたが、それにしたって。


 弟、と既に性別がわかるまでになって……?

 と思いながらメッセージを返せば、いや養子、ともっと頭を悩ませるような返信である。


「養子……? それはつまり、イアと同じような、って事だよな……?

 え?」


 原作にはない展開。間違いなくそう言える。いくらイアが原作の内容をほとんど忘れてしまっていたとしても、流石に途中で家族が増えるなんて展開を完全忘却するという事もないだろう。


 イアの時は神前試合による結界が解除された時に、そのすぐ近くに生贄として捨てられていたイアを発見して、という流れだった。

 怪我をしていたイアを父が連れ帰って、そうしてそのまま我が家で面倒を見る形となったのはウェズンだってしっかりと憶えている。

 今回も同じような状況か、というとしかし神前試合はまだ先だ。なので、結界が解除されてとかそういうやつではないのは確かで。


 どういう事だろうと思っていれば、更にメッセージがやってくる。


 新たに養子として迎えた相手はどうやらウェズンと同学年の生徒らしい。

 同年代、と言わないのは同学年だろうと年齢の差は普通に存在するからだ。実際ウェズンとイアは年齢差がそれなりにあるが同学年である。

 ついでに学園の生徒であるとも。


「は?」


 そんな声が文字を読み進めていくうちに出るのも当然の結果だった。


「いや、え? どういう事?」

 つらつらと書かれたメッセージを更に読む。

 そうして養子として迎える事になった一連の流れとかを見つつ、その相手の名を発見して。


「ルシアが義弟に……?」


 果たしてウェズンに困惑する以外、現状何ができただろうか。

 義妹だけでは飽き足らず義弟までできるとか、いや、前世と比べれば全然問題ないけれども。数的な意味で。


 何が問題って、近々そうなるとかではなく、既にそうなっている、というウェズンにとってはもっと早くに連絡しろ? と言いたくなるような展開である。


 地下闘技場のフラグは立たなかったらしいが、別のフラグが出来上がるなんてこれっぽっちも想像していなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ