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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
八章 バカンスは強制するものじゃない

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懐かしさは消えた



 ある程度周辺施設のいくつかを破壊したので、そろそろどこかで合流して皆で行動した方がいいんじゃないか? なんて話になって。

 だからこそまずはイアに連絡をとったのだ。ウィルが。


 そうして、どうやらヴァンとファラムもこの近くにいるらしいとアレスのモノリスフィアから連絡が来て。

 なのでファラムの方にも連絡をしたから、とりあえずわかりやすい場所で合流して、とイアが言っていた、なんてアレス経由でメッセージが送られてたので、早速わかりやすい場所、とやらを目指したのだ。


 確かに外で周囲を見回せば、なんというか……目印になりそうな建物はいくつかあった。

 そのいくつかあった中の一つが、ちょっと放置したままだと後々マズイ気がしたものだから、ウィルがファラムに連絡を入れて、ちょっとそこの施設破壊してから合流するね、なんてことになったのだ。


 施設の破壊に関しては、そこまで苦労しないだろうと思っていた。


 何故ならそこは魔道具によって動いているらしかったので、その魔道具の動きさえ止めてしまえば後は勝手に停止するという事がハッキリしていたので。


 建物に侵入するのに必要なカギはレイがしれっと入手していたので、拍子抜けするくらいあっさりと中に入れてしまったのだ。本当にどうなっているんだここのセキュリティ。

 今までは住人達も勝手に不法侵入とかしないだけだったんだろうけれど、そうやって平和が維持されて警備とか最低限で大丈夫どころか廃止しても問題ない、とか上が判断してしまったのだろうか。


 確かに警備を置くとなると、それなりに色々と必要になるのは確かだ。

 警備をする人材か、はたまた警備ロボみたいな物のどちらかは。


 人材に関しては住人を作り出す施設があったので、むしろ作成し放題な気がするが、しかしこの都市は限られた範囲までしか存在していない。

 バカみたいに人を増やしてしまえば、それだけの人数を賄う食料が足りなくなる可能性もある。

 ちょっと先程破壊してきた食料関連の施設を思い出すと、そう簡単に食料不足に陥るか? という気もするが。


 だが、万が一という事はどんなものにだって有り得るので、一気に人数を増やしてしまわないよう上だって注意はしていたと思う。

 住人を作る事ができる施設がある、という事は恐らくここで犯罪などをやらかしてしまった者の処分はきっと酷く簡単なのだろうとも思われた。

 そういった簡単に増やせる施設がないのであれば、どんな相手であろうとも労働力の一つとして数えられる。魔道具やゴーレムを応用したロボットみたいな物が仕事をしているといっても、結局人の手が必要になる部分は必ず存在するのだ。


 ウェズンの前世でも、技術が進歩して人の手が不要になりつつある職業というものは増えつつあって、いつか人間はいらない存在になるのではないか、なんて話題も出ていた事があったけれど。

 それでも最終チェックは結局人が行う事が多かった。機械だって年数が経過すればその分劣化するのでメンテナンスは必要だし、コンピュータに任せたとして、どこぞの愉快犯がウイルスばら撒いて知らずそれに感染したならそのままにしておくわけにもいかない。

 結局何らかのトラブルが発生したならその時点で人力での対処が必要になるわけで。


 というか何でもかんでも便利な道具に頼り続けた結果、人力でやってた技術が廃れていざ道具が駄目になった時、その道具を修理していた人やその方法までも失われて……なんていうどうしようもない話だってあったくらいだ。


 そういった事を考えたのであれば、まずここに誰か一人くらい最低でも配備されていたっておかしくない、というかいないと問題ではないのかと思うのだが。


 誰も、いないのである。


 侵入するような馬鹿は少なくともこの都市の人間にはいない、となれば、まぁ侵入者など滅多に来ないのに警備の人間ばかり配置させるわけにはいかないのかもしれないが……


 異常も何もない日々が続けば、そういった仕事を与えられた者もどうせ今日も何もないと思い込んで仕事をしなくなる可能性もあるし、仕事をしていたとしてもやる気も意欲も何もないから異常があっても気付かない、なんてことがあったっておかしくはない。

 それなら定期的に見回りして異常がないかチェックする、というやり方の方がまだマシなのかもしれない。


 だがそれなら侵入者が来た時点でそれに対応できる手段があって然るべきなのに。


 ここも、ビックリするくらいそういったものがなかったから。


 油断していなかった、と言えばウソになる。


 まさかいきなり床の一部が開いてそこからわけのわからない物体が出てきて爆発するなんて誰が予想しただろうか。


 咄嗟に障壁を張ったから即死は免れたけれど、障壁越しにやってきた衝撃にウェズンは凄まじい勢いで吹っ飛んだのである。


 レイとウィルは咄嗟に反対方向に飛んだので、多分かろうじて無事だろうけれどウェズンは吹っ飛んだついでに障壁ごと突っ込んで壁にめり込んだ。本当に障壁がなかったら死んでいた案件である。


 見た目は全然違ったけれど、音に合わせて動く花の玩具みたいなやつだったな……と崩れた壁に埋もれつつ思う。最初に揺れ動いていた感じが何となく似ていたのだ。


 爆発した後、魔道具のどれかに影響を及ぼしたのかギギ、となんだかイヤな音がしてその後更に爆発が起きたので、レイたちと合流しようとは思わなかった。

 むしろレイたちも反対側から脱出を試みているはずだ。

 爆発の中心地に留まる理由はどこにもない。


 どうにか瓦礫から脱出して障壁を維持したままモノリスフィアを取り出す。

 そのままウィルにここから脱出する、と送ってモノリスフィアをしまい、駆け出した。


 ここを脱出したのなら、何かそれっぽく目立つ場所で合流しようと言っていた場所へ行けばレイとウィルだけではない。ヴァンとファラムとも合流できるはずだ。


 目立つ建物はいくつかあったけれど、一番わかりやすかったのは塔みたいになっていたやつだ。

 流石にその中に入り込んで最上階で会おうぜ、なんてことはないだろうから、合流するのはそう難しくないはず。

 他の建物だと入口がどこかわかりにくそうなのもあったし、表だと思ったら裏口だった、みたいなのもありそうだった。そこら辺を考えると、間違いなく合流場所はあの塔っぽい建物だろうとアタリをつける。


 本来ならばそんなわかりやすい場所に集まるなんて逆に自分たちが危険になるかもしれないはずだが、しかしここには人がほとんどいないので。

 目立つ場所だろうとそうじゃなかろうと、結局のところそこまで変わらないんじゃないか、としか思えないのだ。


 監視カメラみたいなのがあったとして、ウェズンは流石にそれがどこに設置されているか、都市にあるであろうそれら全てを把握しているか、となれば勿論できてはいないので。


 見つかりにくそうな場所に集まったところで、そこがガッツリカメラの映る範囲内だった、なんて事だってあるわけで。


 それならもうどこにいたって同じである。

 であるならば、合流地点は分かりやすい場所であることの方が望ましい。



 そう思いながらもどうにか外に出て。


「えぇー、今度は何でござるか~」

 うへぇ、みたいな声が出そうなテンションでもって自然と言葉が出ていた。


 先程までは前世の街中のような、しかし無人のせいでいっそ巨大なジオラマか何かです、とか言われた方がまだしっくりきそうな場所には、いつの間に出てきたのか陶器のようなつるりとした見た目のマネキンがうじゃうじゃと存在していた。


 コンクリートの地面を移動するたびカツコツ、まるでハイヒールでも履いているかのような足音が鳴っている。


 うじゃうじゃ、と言っても前世の馬鹿みたいに大勢いるような状態ではない。見える範囲にいるのは精々百人……いや、百体、といったところか。

 まぁそれでもさっきまで誰もいなかったところにそれだけの数の動く物体が現れたのだ。結構な数と言ってもいい。

 後ろを振り返ってみれば、今しがたウェズンが出てきた建物があるけれど。

 全壊とはいかないが半壊くらいはしている。逆方向から脱出したであろうレイとウィルは見える範囲にはいない。向こう側がどうなっているか、とても気になるが今はそれよりも自分の置かれた状況を理解する方が先だった。


 相手が人間であったなら、ウェズンもあえてリングから似たような服とか出してこっそり着替えて紛れ込む、とか試したかもしれない。

 けれどいるのはマネキンみたいなやつばかりで、服を着替えて紛れたとしてどう足掻いても一発で見分けがつく。

 ウォー○ーをさがせとは比べ物にならないくらい容易にウェズンが一発で見つかるのがわかりきっている状態だった。


 とはいえたかがマネキン、と高をくくってその場を堂々と突っ切るつもりもウェズンにはなかった。


 あちこちを何かを探しているように動いているマネキンたちは、多分きっと恐らくウェズン達を探しているのだと思う。

 まさかこの都市のお偉いさんが落っことしたコンタクトレンズを探しているとかではあるまい。そもそもこの世界にコンタクトレンズってあったっけ? という疑問はさておき。


 どうにか崩れた建物から脱出して道のど真ん中に突っ立っていたわけではないためすぐにウェズンが発見されるという状況にはなっていないが、しかしここからいざ! と出て行けば間違いなく秒で見つかる。

 今ウェズンがいるのは建物の敷地内ギリギリのところで、一応建物をぐるりと取り囲んでいる塀があるからまだ奴らに発見されていないだけだ。

 しかし出入り口から堂々と出れば即座に見つかる。


「えっ、これどうしろってんだ……?」


 いっそ今から反対側に回り込むみたいにしてレイやウィルと合流するのを優先するべきなんだろうか……?


 そう悩んだ時だった。

 カツン、という音が頭上から聞こえてきて、咄嗟に見上げれば塀の上に一体のマネキンが立っている。

 表情などは存在していないが、しかし目があるのなら間違いなくそいつはウェズンを見ているのだろう、とウェズンだってわかりきった状態で見下ろされて。


「ミツケタ」


 口なんてないのに一体どこから声をだしたのか、とかそんな疑問を相手にぶつけたり内心で思うよりも先に。


 そいつの言葉に反応したのか、外側であちこち彷徨っていたマネキンたちが一斉にこちらに向かってやってきたのである。


「はぁああああ!? あーもーなんなんこの都市はさぁああああああ!」


 突然のホラー展開やめろや、とか言うよりも先にウェズンは塀の上に立っている一体に向けて魔術をぶちかまし、そうしてこちらにやってこようとしているマネキンたちがたどり着く前に、と出入口から素直に出ていかず塀を飛び越え着地して。

 そうして全力ダッシュをかましたのである。

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