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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
八章 バカンスは強制するものじゃない

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合流からの再出発



 ヴァンとファラムがレイとウィル、二人と合流するまで何をしていたかと言えば。

 概ねレイたちがやろうとしていた事と変わらない。


 要するにこの都市を崩壊に導こうというやつだ。


 ヴァンは自分の瘴気耐性の低さ、という普段であればデメリットでしかない特性を活かして妙な感覚のする方へと移動して、そうしてやたらとでっかいビルにたどり着いた。


 そもそも入り口が閉ざされていたのであれば入るのにも苦労したかもしれないが、開いたので。

 その場にウェズンがいたならば、セキュリティ大丈夫か? と突っ込んだかもしれない。

 イアだってそうだろう。


 ところがこの手の都市に馴染みがなかったヴァンもファラムも、あら開いてますね不用心な、と特におかしいと思わないまま入ったのである。警戒心はどこへいった? と言われそうだが、守衛らしき存在も何もないのでもしかしてここ、ハズレかな? とか思っただけだった。


 既にここは必要とされていない建物だから、こうして出入りが自由になっているのかもしれない。

 そう信じて疑ってすらいなかった。

 そもそも疑うポイントがなさすぎた。そういう物だと思った時点でそういう物になってしまったのである。



 実際、この都市のセキュリティは結構ガバガバであった。


 そもそも外敵が滅多に来る事はなく。

 テラプロメに対して叛意を持つ者がいたとして、そういった者がここから脱出を図ろうとするのであれば取るべき行動は限られてくる。

 それ以外の部分に守りを重ねる必要などないのだ。


 一つの家で例えるのなら、侵入者が来るかもしれないと気を付けるべきは玄関と精々窓なわけで。

 そういった部分は勿論テラプロメもセキュリティをしっかりとしているけれど、家の内部、重要な物があるでもない部屋を無意味にガチガチにセキュリティ固めるか、となると、普通はしないだろう。

 特殊な、というか保管にしっかりと箱に入れなければならないような包丁だとかがあるならばまだしも、百均で購入しただけのキッチンアイテムしかない台所を要塞ばりにセキュリティ強化など普通はしない。

 ヴァンとファラムが入ったビルもまた、そういう感じのやつだった。


 本来ならば、そこまで重要ではなかったはずなのだ。


 大体そこのビルも、番人の存在をアピールするために外側にあれこれデコレーションされているようなものではあったが、内部は現状ほぼ使われていない。

 だからこそ人っ子一人いなかったし、無人であったがために明かりもついていない状態だった。


 本来ビルの出入口は自動ドアになっているのだが、電源がついていない事で、開かない、と判断して二人が諦めて立ち去るのであれば、レイたちと合流できるまでにもう少し時間がかかったかもしれないし、合流できないままだったかもしれない。


 ただ、普通のドアのように開けるタイプではないな、と判断した二人がここから開くんじゃないか? なんて言いつつ強引に両側に開くようにした結果、自動ドアは自動ではなく手動でこじ開けられる形となって開いてしまったのである。

 正直そこも完全にロックかけてたら開かなかったかもしれないが、どのみちテラプロメの住人が勝手に入り込んだりするわけでもなく、また役職持ちの者たちが利用する際は申請してから利用するので、セキュリティをガッチガチに固める必要はない、と上は判断したのだ。

 テラプロメに対して反感の意を持つ者は限られている。

 そして彼らは自由に行動できない状態になっている。


 ある程度自由が許されている者たちは、立ち入り禁止となっている所に勝手に入り込んだりはしないし、それ故に特にセキュリティを厳重にする必要がないと判断された建物をそのままにしても、今までは侵入するような者など現れなかったのだ。



 ところがそんな事は知ったこっちゃなかったヴァンとファラムは堂々と正面から侵入したし、暗い中で明かりの魔術を発動させてあちこち見て回り、ヴァンの感覚を頼りに進んだ先で。


 恐らくビルの内部のシステムをあれこれできる部屋、と二人が判断した所にたどり着いてしまったのである。


 警備にあたる者がいたなら、途中で揉めて応援要請だとかで事態を大きくして二人の歩みを少しでも遅らせられたかもしれないが、どうせ誰も来ないし入らないだろう、と思って放置していたからこそ、二人は特に何かに邪魔をされる事もなくたどり着いてしまった。


 普段から住人たちが立ち入り禁止を無視して侵入するような治安であったなら警備が置かれていたかもしれないが、そうではなかったのが仇となった形だった。


 正直何が何だかわかっていなかったけれど、それでも何となくここはそれなりに壊れたら困るんだろうなぁ……とヴァンは思ったし、ファラムもまた同じ考えだったので。

 色々と操作して壊そうと考えたけれど、操作方法がよくわからなかったので最終的に物理で破壊したのである。物理、というか魔術で。


 もっと重要な施設であったなら守りをもう少し固めていたはずだが、誰もいなかったという時点で重要と言う程ではなかったのだろう。一番上をSとして一番下をEという風にランク付けした場合、恐らくここは見張りも何もいなかったし魔道具での防衛もされていなかった点から、C~Eランクあたりに該当するんじゃないかなぁ……と思っている。


 重要な施設であるならせめてもっと人の出入りがあったりだとか、そうでなくとも住人たちの目が常にありそうな場所を選ぶべきだとも思う。

 確かにここは街中という点ではそうだけど、住人の数があまりにもいなさすぎてセキュリティがとてもガバガバ。今の今まで侵入者だとか外敵の存在があってもどこかに侵入される前に対処していた都市は、まさか今日こんな事になるだなんて想定すらしていなかったのだろう。


「なんか、都市部の移動区画制限に関するあれこれ、だったっぽいんだよね。壊したの」

「モニターにそういえばそんな感じの事が表示されてましたね」


 レイとウィルにお前ら何やってんの? と聞かれて今までの事を答え、そうして自分たちが壊したのは何であったのか、を思い返す。

 モニターだけでなくその部屋にあった機材もほぼ壊れただけならまだ良かったが――テラプロメ側からすれば全然良くないのだが――その機材がバチバチと嫌な音を立ててスパークした後、そう間を置くこともなく爆発。

 あ、ヤバイな、と思った二人は早々に部屋を脱出して少しでも爆発するであろう地点から離れようとしたのだけれど、部屋を出た直後に爆発し、そしてそれが恐らく別の何かに引火し二次被害を誘発。

 障壁張りつつそれでもどうにか逃げていたのだが、二人が入らなかった部屋のどこかに何やら可燃物でも積まれていたのか、大爆発を引き起こし、ビルの窓ガラスが割れそこから爆風に押される形で二人は落下したのである。


 ちなみに落ちる前にウィルがどうにか二人を回収したので二人はけろっとしている。制服に少しばかり汚れがついてはいるものの、障壁を展開していたのもあってかほぼ無傷であった。普通なら原型を留めず死んでいてもおかしくはない。


「移動区画制限、なぁ……」


「ビルから落ちる時に見たのですけれど」

「余裕だな」


 まぁ確かにこれだけでっかい都市ならそこらの町や村のようにどこ行くにも徒歩で、とはならないだろうし、何らかの移動手段があってもおかしくはないと思ったレイが呟けば、思い出したかのようにファラムが声を上げた。

 爆風に押される形で窓ガラスが吹っ飛んでできた新たな出入口から落下して、下手をすれば死んでいてもおかしくはない状況だったというのに周囲の景色を堪能する暇があったなど、そりゃあレイだって余裕だななんて言っても仕方がない。


「向こう側に駅っぽいものがありましたわ」

 あっち、と言いつつ指さした方向は、レイとウィルがやって来た方角だった。


「駅、あったか?」

「えぇ……わかんない……」


 駅、と言われても恐らくレイとウィルが思い浮かべた物とは異なるのだろう。

 大昔に異世界から様々な技術が持ち込まれたとはいえ、魔道具に頼った大型な道具は下手をすると劣化したり故障した時に瘴気を発生させやすい。そうなると魔物が出没するし、そうでなくとも瘴気汚染は人体にも影響を及ぼすのでできる事なら避けたい事態だ。


 だからこそ、レールの上を高速で移動する列車という存在を知識として知ってはいても、二人は実物を見た事がないので。

 駅、と言うと現在あるのは主に馬を使った乗合馬車だとか、そういったものだ。

 自動車やらバイクといった物もないわけではないのだが。

 液体燃料で動かすにしても、肝心の液体燃料があまり確保できていないのだ。だからこそ、そういった使えるのならとても役立つだろうけれど現実的に考えると使えない物、というのは大抵博物館のようなところで眠っている。


 ともあれ、二人が思い浮かべたような駅とはきっと見た目も規模も異なるのだろう。

 知らない間にスルーして通り過ぎてきたのかもしれない。

 そう思って、じゃあ一回引き返してみるか……と二人はお互いに顔を見合わせて頷いたのである。


「折角合流したとはいえ、この様子じゃ固まって行動するよりある程度分散して情報集めたりした方がよさそうだから、僕らはそれじゃあ反対方向に行ってみる事にするよ。モノリスフィアも問題なく使えるようだし、何かあったら連絡する」

「おう」


 転移した先で一網打尽にされないために時間差で向かったとはいえ、こっちで合流できたのなら共に行動する事も視野にはいれていたけれど。

 だがあまりにも人がいなさすぎるし、情報もマトモに入手できていない状態だ。

 現状これといった危険が特にないようなものなので、引き続き別行動をした方が効率がいいだろうと判断した結果だった。


 もしここに来て次から次に戦闘を仕掛けてくる相手ばかり、となっていたなら一緒に行動したとは思うが、そういった状況になりそうな感じではなかったので。


 ウィルとファラムがお互いに手を振りあって、それから背を向けて移動し始める。


「とりあえず駅とやらを見てくるか」

「そだね」


「では次はどちらへ向かいましょうか?」

「そうだな……なんとなくだけど、あっちの方、かな?」


 レイとウィルが目的を定めたのに対して、ファラムとヴァンはハッキリと次に行くべき場所を決めてはいないけれど。


 まぁ、どうにかなるだろう。


 そんな風に思っていたのである。

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