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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
七章 何かが蠢くその先で

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ある意味捕らわれの二人



 牢にぶちこまれたものの、牢の鍵はとっくに壊れている。

 というか、そもそも鉄格子をアレスが魔術で壊したので既に牢か、それ? と言いたくなるのだが、それでもアレスとレイは半透明骸骨に牢屋にぶち込まれた。


 物理的な攻撃も、魔術もほとんど通用しなかった。

 レイが言っていたとおり、アレスもまた試してみたがやはり通じなかったのである。


 全く通じていないわけではないようだが、結構な威力でぶちかました魔術はしかし半透明骸骨からすると、森の中を歩いていたら頭の上にどんぐりが落っこちてきた、くらいの衝撃にしかなっていないようだったのである。普通の人間が無防備にくらったら身体バラバラになってもおかしくない威力の魔術なのに。


 それが精々歩いていたらたまたま跳ね上がった小石が足にぶつかっちゃった、程度の威力にしか感じられていないとなれば、大陸消すくらいの威力がないと奴らには通用しないのではないか。

 そう考えると、魔術でどうにかするという方法はまぁ無理だなとなるわけで。


 武器で攻撃してもそれもまた通じていなかった。

 魔術よりもノーダメージだった。

 殴っても蹴っても半透明骸骨たちはそんな事お構いなしにレイとアレスを捕獲して、えっさほいさと牢屋にぶち込むのである。


 鍵もかかってない状態の、脱出し放題の牢だというのにそこにぶち込むのはどうなんだろうか。

 半透明骸骨たちはそこら辺気付いているのかいないのか、よくわからなかった。

 ただ、牢屋に放り込んだらそのままさっさと引き返していくので、二人は最初すぐに牢を出てそいつらの後をつけてみたのだ。


 途中で他の半透明骸骨に見つかって、またも牢へ戻る事になってしまった。


 果たして半透明骸骨が一体全体どれくらいいるのか。

 それすらもわかっていない。


 ある程度のグループで行動しているようで、単独で動いているのはいないようだがそのせいで発見されると数の上ではこちらが圧倒的――とまではいかなくとも不利である事に変わりはない。

 一体二体程度ならどうにか回避して捕まらないよう逃げつつ移動するのも可能ではあるのだけれど、他のグループに見つかったり、はたまたどういう連絡手段があるかはわからないが、どうにも仲間を呼んでいるようなので。


 ちょっともたついていたらあっという間に仲間が現れ捕まるのである。


 レイは盗賊として行動する事もあるけれど、しかしここは明らかに分が悪かった。

 まず罠らしい罠がないだけマシではあるけれど、それはつまり、その罠を利用してあいつらをどうにかできるわけでもないという事。

 城というそれなりに広い建物であるというのに、物がほとんどないせいで見晴らしのよい状態で、身を隠すような場所がほとんどない事。

 そのせいで見つかる時はあっという間に見つかるのである。


 せめて物陰に隠れるくらいのスペースはあっても良かったんじゃないかと思わないでもない。

 適当な部屋に入り込んで一時的に隠れるにしても、入った部屋の中もほとんど何もないのだ。

 しかも部屋は隣の部屋とくっついているわけでもないので、入り込んだらそこは行き止まり状態。


 逃げ込むにはあまり向いていなかった。

 せめて家具があれば。一瞬でも身を隠して相手の注意をそらせるような場所があれば。

 もうちょっとこう……うまい具合に逃げられたかもしれないのだけれど。



「はい。そういうわけでかれこれ十……二? 三? まぁそんくらいの挑戦になるわけだが」

「そうだな。一応この下の階はなんもないってのがわかったし、その下もなんもなかったな」

「これだけ失敗してるのにあいつら牢にぶち込むだけで済ませてるとか一周回って優しく思えてきた」

「普通に逃亡者だったらそろそろ面倒になって殺してるよな。よっぽど殺しちゃいけない事情でもない限り」


 ぽーいと放り込まれた牢から当たり前のように出て、アレスはレイはそもそもどのあたりで捕まったんだ? と今更のように問いかける。


「俺? あぁ、入ってすぐだな。一階部分を警戒しつつ移動して見回って、そんな移動してないうちに」


 見つかった直後はとりあえず逃げようと試みつつ、ついでにどうにか倒せないかと思って攻撃を仕掛けたが通じなかったので更に逃げの一手を選び、とやっていたので入ってすぐあたりは何となく覚えているが、それ以外の場所はほとんど記憶にない。まぁどうせ何もないだろうなとはある程度城の中を見て回った今なら言える。


 一応テラのメッセージにあったように、モノリスフィアで撮影したオブジェの画像を半透明骸骨に見せてみたけれど、一瞬だけ動きを止めたもののそれだけだった。

 もっとしっかり動きを止めてくれればいいものを、ちょっとだけ止まって後は通常通りだ。

 しかも二度目は通用しない。


 書庫の本棚の方が効果ありそうだな、とか思い始めたものの、あれは下手をすると自分たちも知らぬ間に精神汚染されて異常事態を正常だと思い込む可能性があるのでチャレンジしてみようとは思わなかった。


 オブジェはさておき、あっちの書庫はなんというか、画像として残しておいたら呪われる気がして。


 図書館にある古めかしい本よりもなんというか、えげつない呪いが込められていそうな気がしてくる。

 ただ古いだけの本でも場合によってはなんというか、おどろおどろしい雰囲気を感じることがあるというのに、あれよりヤバイと思えるだけの代物だ。安全が確保できる、もしくは保障されているのならともかくそうでないのならモノリスフィアで撮影もやめておくが吉だろう。


 アレスはあれを撮影しようとしていたが、レイは本能的な部分がやめとけと訴えているのをひしひしと感じている。


 かといって、他に打つ手がないので再度モノリスフィアでテラに連絡をとってみた。


 何をどうしてもあの半透明骸骨にとっ捕まるので脱出がままならない。このままだとこの城から出られないとなれば、帰るに帰れない。


 途中、一度諦めて城の最上階から更に外に――屋上のようなところへ出てそこから城の外に行き、いっそどこにあるかわからない神の楔を探す方向にシフトしようかとも思ったのだが、困った事に城の外に通じる場所がなかったのである。

 折角牢の天井から上に行ってあちこち見て回ったのに、だ。


 そもそも最上階の部屋には窓がないわけではなかったが、いずれも小さい。

 人が一人通れるほどの大きさかと問われるとまずもって無理だったのだ。


 大きな窓なら割ってそこから脱出もできただろうけれど、小さな窓が一定の間隔をあけて点在している挙句、窓を壊しても頭が通るかも微妙なサイズ。

 壁をぶち壊して……と思って試しに魔術をあててみたが、壊れなかった。


 神の子が何かをした、とは思いたくもないが、しかし城にそういった護りがあるのは確かだ。

 結局上からの脱出は不可能とみて、再び下の階探索チャレンジが再開したのである。


 だがしかし、次々にやってくる半透明骸骨。

 動きが毎回同じならいっそそれを覚えてどうにか回避もできるだろうけれど、出現する場所もあいつらの動きも毎回異なるので同じパターンでもってその場を切り抜けるという事ができそうにない。


 そうして、半透明骸骨に牢屋に戻される事計二十五回を迎えたわけだ。


 いっそ救助を求めたいくらいだが、しかし学園だってこの城が正確にどこにあるかまで把握しているかどうかはわからない。仮に救助を向かわせてくれていたとしても、城に入った時点で半透明骸骨が牢屋へぶち込むために捕まえにくるのであれば、救助者が増えるだけ。


 何か、せめて突破口があればよいのだが……


 だがしかし、テラに相談してもいい案がなかったのだ。絶望である。

 圧倒的火力でぶち倒せ、と普段のテラなら言うのだが、その圧倒的火力が足りないのである。かといって威力を増すためにできる事はほぼない。こうなるとわかっているなら事前準備をして、とかもできたかもしれないが、こんなことになるなんてわからなかったので現状自分たちが切れるカードは限られている。


 テラが一応他の教師にも相談してみる、と言っていたので、本当にどうにかなるのを祈るしかなかった。


 リングの中に食料はある。水もどうにかなる。

 けれど、それだっていつまでも大丈夫というわけではない。

 それに、牢屋以外で安息の地というか安全地帯がないので、このまま時間が経過してそのうち寝る、となった時に。


「レイは寝具って持ってる?」

「いや。最低限野宿用の寝袋はあるけど、お前の言ってる寝具ってそうじゃないだろ」

「そうだね。寝袋なら俺も持ってる」


 神の楔があるからこそ、野宿をするような事というのは実のところそこまでない。

 目的地まで遠く、どうしても途中で野宿をしなければならない、というのならともかく、そうでなければ一度神の楔で宿がある所まで戻るか、そうでなくとも学園に戻って自室で寝るという選択肢が普通に存在するからだ。


 そして野宿をするのであれば、寝袋があれば大抵はどうにでもなる。


 わざわざベッドだとかを持ち運んだりはしない。けれどもこうなるとわかっていたなら、せめてベッドくらいは持ってくれば良かったなと思わないでもないのだ。

 他の部屋に寝具があるならそこを利用するという方法もあったかもしれないが、ビックリするくらい何もないので。


 もう何度もチャレンジしていい加減疲れ果ててきたので、休憩を兼ねて牢屋の中で連絡がくるのを待つことにした。そうしてぼーっとしながら、時折思い出したように適当な会話をする。内容は本当にどうでもいいようなものばかりだ。何故って重要そうな話題は最初の方で終わらせてしまったので、これ以上広げようがなかった。


 そうしていい加減話題もなくなりそうになってきたあたりで。


 モノリスフィアに連絡がやってきたのである。


 だがしかし、これといった解決策はなかった。絶望である。


 ただ、クラスメイトもその状況を知らされたらしく、一応心配の声がちらほらあり、事態の解決にならなくとも何となく心に沁みた。これで短い付き合いだったね、とかさらっとお別れの言葉があったなら凹むしブチ切れたかもしれない。


 そんな中、ウェズンのメッセージだけが心配をするでもなく。


『その半透明骸骨ちょっと撮影してみてほしい』


 というものだった。


 お前はもうちょっと心配しろ。二人そろってそう呟いて、それから。


「行くか」

「そうだな。一番いいアングルで撮影してやろうぜ」


 まぁそんな事を言う程度には。


 二人はお疲れであった。

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