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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
七章 何かが蠢くその先で

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造物



 黒い物体から話を聞くにしても。


 レイをこのままにしておくわけにもいかない。

 だからこそアレスはちょっと待ってろと一方的に言い捨ててダッシュでレイの所まで戻った。

 そうして魔術でサポートしつつもレイをよっこいせと抱えあげ、そのまま走る。

 オブジェがあった部屋よりももっと前、牢屋に落ちたあたり。ここまでくれば問題ないだろう、というところまでやってきて、そこでレイを下ろした。


「大丈夫か?」

「わり、結構キツイ。なんだろうな、瘴気汚染とかじゃないんだ。

 なんか、ひたすら本能的な部分に嫌な何かを混ぜられてるような感じがする」

「ここならまだマシか?」

「そうだな。ここならしばらく休めば大丈夫だと思う」

「だったら、ここで待っててくれ。俺はあいつから話を聞いて、それからまた戻ってくる」

「……わかった」


 ぐったりとしてはいるし、顔も土気色みたいになってとても元気だと言い切れない事になってしまっているが、それでもまだ意識はハッキリしていた。

 だからこそ体調に関して確認し、それからここで待つように言う。

 レイもわかっているのだろう。あの部屋が、この城の最奥になっているのも。そしてその先に進むにしても、もうその先がない事も。

 であれば、無理に進む必要もない。

 アレスはまだ平気そうな顔をしていた。この差は一体何なのだろうか、と考えようとして、具合の悪さに拍車がかかりそうになったので何も考えないようにした。


「俺はここで待ってる」

「あぁ、なるべく早く戻ってくるつもりだが……何かあったらモノリスフィアを使ってくれ」

「使える余裕があればな」

「そう言われるとどうしようもないな……」


 とはいえ、あのオブジェがある部屋に行く前まではこのあたりでレイの体調に何らかの変化があったというわけでもない。ここで少し休めば、少しはマシになるだろう。


 この階ではあの半透明骸骨たちを見ていないし、もし仮にやってきたとしてもすぐ近くにはアレスが牢屋に落ちる事になった穴がある。そこに逃げ込めば恐らくはどうにかなるはずだと思いたい。


 全く気にならないわけでもないが、いつまでもこうしているわけにもいかずアレスは再びあの黒い物体がいる部屋まで引き返していったのである。




「――戻って来たのか」

「とにかく情報を集めない事には、ここから出るにも手探りがすぎる」


 黒い物体は、案の定そこにいた。

 動けないと言っていたのでいなくなっていたらそれはそれで困るのだが、もしかしたら黒い物体があえてそう嘘をこちらに吐く可能性もゼロではなかったので、多少は疑っていたのだ。


 何を聞けばいいのか、と考えて何を聞いたところで結局は同じところに行きつくような気がしたために。

 まずは黒い物体の話に耳を傾ける事にした。

 どのみちこちらの事情は説明した。

 ここから出たくても、下の階の半透明骸骨が邪魔をするとなると簡単に出られないし仮に城の外に出たとしても、神の楔が見当たらなければだだっ広い荒野を彷徨う事となる。


 ここがコールラート大陸だと聞いたので、最悪大陸の地図をモノリスフィアに画像転送してもらえれば、もしかしたらどうにかなるかもしれないけれども。

 とはいっても、地図にも神の楔の位置は記されていない。大まかな予想が立てられるくらいだ。それでもないよりはマシだろう。


「ここにはかつて、神の子がいた。それは間違いない。自分が魔女によってここに飛ばされたときには確かに。彼はいたんだ」


 黒い物体が語りだす。その声にはどこか懐かしさのようなものが含まれているように思えた。


「急に現れた自分にこの城の人たちは親切だった。ここは国ではなく誰かの避暑地として建てられたものだと言っていた。名前は憶えていない。けれども城を建てるくらいなのだから、そういった身分や権力を持っていた相手なのは間違いじゃない」

「まぁ、それはそうだろうね」


 普通の家ならまだしも城を建てるとなればその分費用だってかかるだろうし。

 貴族や王族といった身分でなくとも、あとは財産を大量に持っている者か。

 商人が真っ先に浮かぶけれど、冒険者をやっていたってやり方次第では一攫千金も可能だと聞いているので、そのパターンも考えられる。

 そう、たとえば父のように浄化機の部品として魔晶核を入手した、だとか。

 そういった、一代で馬鹿みたいな財を成す事もできないわけではないのだ。

 とはいえ父に関しては、財を欲したというよりは母の容態をどうにかしようとした結果だったのだが。


 結局母はあの数年後に亡くなったので、アレスの中ではジークと再会できるまでは、親友を奪われ更には母も助ける事ができず、アレスにとって大切な存在があっという間にいなくなっただけ、という結果になっていたのだが。そのせいで正直今でも父との仲はよろしくない。


 学院に入ったのだって、父がかつてそちらにいたからそちらを勧められただけだ。

 正直学園に行きたくて仕方がなかったくらいだ。あいつが勇者を目指すなら、それなら自分は魔王を目指してやろうと。父への反発心と言われると否定はできない。


 結局、しれっと学園に転入したのでアレスが将来勇者として選ばれる、という父の希望は潰えた。ジークが見た目はだいぶ変わってしまったとはいえ生きていてくれたので、父の事をそこまで憎み続けるのもどうかと思った、というのも事実だ。というかむしろそこまでずっと父の事を考えていたくない、というのが正直な気持ちだ。


 ジークがいたから、といっても素直に喜んでいいわけではないのもわかっている。何故って今ジークとして存在している身体は、同じクラスのイルミナの母のものであるわけだからして。



 ともあれ、城を建てた人物に関してアレスはそこまで重要そうではないな、と聞きながら判断していた。

 実際、いきなり魔女の転移魔法で飛ばされたとはいえ見知らぬ人間が突然現れたにも関わらず、特に何の尋問もせずそのまま受け入れているくらいだ。相当のお人好しか、もしくは相当に自分の実力に自信があったのかもしれない。

 身を守る手段があるのなら、多少の事には寛容にもなるだろう。


 権力や財産があったところで自衛手段がなければ、もっと周囲を疑うように警戒していてもおかしくはないはずなので。



「そこに、彼もいたんだ。彼は……ここで何の役割を持っていたのだったか。生憎そこはわからない。ただ、城主は彼の事を丁重に扱っていた。神の子だとして」

「城主が、それを認めていた、と?」

「お前は神についてどこまで知っている?」

「世界を滅ぼそうとして、その延命のためだけに茶番劇を繰り広げさせてる愉快犯」


 これ以上ない程的確な表現だと思った。それでもやらなきゃ神の機嫌を損ねて世界が一瞬で終わるかもしれない。好き好んでやってるわけでもないけれど、しかしやらなければならないという状況下に陥れて、そうして神はそれすら喜劇の一つとして見ているに違いないのだ。


「……ま、そうかもしれないな。そうじゃないかもしれないけど。

 ただ、まぁ、神の子は、神と共通する特徴があった。神についての文献も、確かにそこの本のどれかにあったはずなんだけどな。どれがそうだったかまではもう憶えちゃいないんだ」

「神と共通する特徴……?」


 それは外見とか、そういうものなのだろうか。


 もし、仮に。

 神がこの世界の住人としてしれっと生活していたとして。しかし神の見た目がわからなければ、誰もそこに神がいるなどとは気づきようがない。ずっと神がいるだろう場所に、神前試合の時だけ姿を見せるその場に居続けている、とは限らない。そしてその姿を偽っていたのだとすれば。人に紛れていたとしても気付けるはずがないので。

 実は案外身近に神様がいました、というオチがあったとしても不思議ではないのだ。

 とはいえそれは希望的観測に過ぎないが。


「神は、人と同じではいられない。人は神の姿を模して作られたとされているがそれはあくまでも形だけ。中身はどう足掻いたところで異なる」

「……現状、本来人だった種族はとうに存在していない。今いるこの世界の住人の大半は、人とそれ以外の種族が混じった混血種だ。お前の話はそれを人として言っているのか? それとも」

「あぁ、姿かたちという点では同じようなものだ。ただ人という言葉が便利だからそれを使っているに過ぎない」


 そう言われて、本来の人間種族が存在していた大昔とまでは話は遡っていないようだと判断する。


 そこまでさかのぼられていたらそれはそれで困るけれど。

 だがそうなると、神の子がいたのは案外最近の話ではないか、となるわけで。

 魔女の寿命がどれくらいかはわからないのだが、アレスの知り合いの魔女に聞いたとして果たしてマトモに答えてくれるかはわからない。


 神が人を作ったのであれば、それもまた神の子となるのではないか、と思ったが黒い物体曰く決定的な違いがあるらしい。


「神様っていうのはな、人間が作るようなものは作れないのさ。それでもどうにか真似て作ろうとしても、失敗するんだ」

「ん……?」


 その言葉に。

 何かが引っかかった。

 けれどもそれが何なのかがわからない。


「あの部屋のあれだって、神の子はただ人が作るような何かを作ろうとした結果に過ぎない。出来上がったアレを見て、城の連中のほとんどは精神をやってしまったけどね」

「とんだ呪物だな」

「城の人間のほとんどは、出来上がったアレを見て呑まれた。発狂する程度で済んだならマシな方だ。精神がイカれてもそれでもまだ、いつかは治る可能性もあった。

 神の子は、そんな様子を見て最初はすごいと言われていたのだと素直に勘違いしていたようだよ。それは違う、と教えてあげられるだけのメンタルを持ったやつはその時点でいなかった」


 まぁ相手が神様本人ではないとはいえ、その子供である、となれば。

 下手なことを言って傷つけるような結果になったなら。一体どんな事が起きるか想像するだけでも恐ろしいとなるのは当然の流れだろう。

 それに、一応この城で彼らはそれなりに仲良くやっていたのであれば。


 そんなクソみてぇな呪物作ってんじゃねーぞ、どうすんだこれ処分するの大変だろうが。


 なんて。


 折角一生懸命作ったであろう本人の前で言えるか、となると。


 まぁ、無理だろうなとは思う。

 自分より立場が下だ、と判断できるような相手であったなら、そういうボロクソに貶そうとした者もいたかもしれないが、神の子とされている相手にそんなことを言えば次の瞬間自分の首が胴体からお別れしている可能性だって有り得るわけで。


 神の子と呼ばれていた相手の事をアレスは知らない。

 その神の子とやらの性格だとかがわかっているなら、もう少し別の可能性も考えられたかもしれないが、知らないので。当たり障りのない部分までしか考えられなかった。

 見た目も彼、としか言われていないのでアレスには想像できないが、とりあえず男性であるというのだけはわかっている。


 とはいえ、その見た目が繊細そうであれば折角作った物を酷評するのは傷つくだろうと思うかもしれないし、彼、と言われていても見た目が自分が想像するより幼いのであれば。

 流石に幼子相手にキツイ言葉を投げかけるのは良心があれば躊躇うだろう。


 お互いに気心が知れているのであればうわゴミじゃんこれ、とか笑い話のように言えたかもしれないがそこまでの仲だったかもアレスには知りようがない。


「結果としてアレは今でのあのままだし、その次に作られた書庫は……もっと酷い事になった」


 オブジェ二つが並んでいただけの部屋も相当だったけれど、書庫の方が酷い、と言われてもいまいちピンとこない。

 確かにタイトルが判別できない本もあって、それらをじっくり見ているだけで意識が飛びそうになるのだけれども。


 けれど、発狂するまではいかないと思っているのでアレスにはどうにもすぐに理解できなかったのだ。

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