表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
七章 何かが蠢くその先で

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

314/466

見失われた方向性



 ウェズンが最初に思ったのは、悪戯魔法とか何それ面白そう、というものであった。

 ギネン鉱石を回収した後、学園に戻ったところで他にやる事はまだない状態だったので、他に何か使えそうな素材を見繕ってこようぜ! という展開になったのは別に問題がない。

 どうせこの日までは情報収集とか素材集めに費やそうぜ、という期間内の話だったので。


 学園に戻ったところで学園でできる事は図書室で情報を集める事くらいだし、正直それは最初に魔法罠について調べようとなった時にあれこれやったので、またやりたいと思えるものでもなかった。


 調べるにしても、やりがいも何も感じられないのだ。

 これがせめてもうちょっとこう……パズルゲームみたいに一つヒントを見つけたらそこから他の解釈が、とかこれはこういう事なのか、みたいな閃きがあったのであれば話は違ったと思うのだが。


 だがしかし、延々と使い物になるかどうかもわからない情報を集めて、そうしてそこから更にあれこれ調べていくとなるとなんだか役所で無駄に書かされる書類みたいな感じがしてどうにもウェズンは苦手だったのだ。実際は無駄な書類ではないのだろうけれど、書く側から見てもこれ必要なのか? と思うようなものだったので重要性もわからないとなると、どうしたって無駄に思えてくる。


 それはどこか趣味の物に似ているかもしれない。

 重要性を理解している者からすれば大事なものだが、価値を理解していない者からすれば二束三文のガラクタにしか思えない、というような。


 書類ならまぁそれでもどこかで使うから書いてるんだろうな、で済むが趣味で集めた物の場合、下手をすると家族が勝手に処分するなんて事もあるので油断はできない。自室以外のスペースにまで物を置いているようなら邪魔だから、で処分されるのも仕方がない場合があるが、自室に入り込んでまで処分された場合は最悪殺人事件に発展しかねない。

 まぁ前世のウェズンの家庭はそういったトラブルはなかったのだが。

 趣味に走った弟や妹たちはいたけれど、案外きちんと住み分けていた。



 ともあれ、学園に残っていてもやる事はほとんどないと言ってもいい。

 本を読むのは嫌いではないが、しかし今だとどうしたって魔法罠に関係しそうな物以外に手を付けるのは憚られる。交流会が終わってからなら好きなだけ好きなジャンルの本を読めとなるのかもしれないけれど、今はそうではなかった。



 そんな感じで、同じように考えていたヴァンたちと適当に各地で何か使えそうな素材がないかと見繕っていたところだったのである。

 正直ギネン鉱石の時と比べると圧倒的に伝手も何もない。

 だが、まぁ。

 瘴気汚染度の高いところへうっかり行ったとしても、ウェズンが浄化魔法を使えばヴァンに関しては問題がないので普段よりも冒険しちゃおっか、という気持ちであったのは確かだ。

 なので、学園の学外授業でも行った事がないような土地へもちょっとだけ行ったのだ。


 まぁそこで、まさかルシアを女性と勘違いして修羅場が発生するとか思わなかったけれど。


 そして困った事にそうやって遠出までした割に、収穫はあまりなかったのだ。

 連絡先をある意味強制的に交換する羽目になった教授が早速とばかりにメッセージを飛ばしていたので、どうせならと思って何かいい素材ないですかね? とメッセージを送ってみれば、いくつか魔法罠以外にも使えそうなアイテムが記載されて、ついでにどこそこで入手可能、と案外しっかりとした情報がきたのでそれじゃ次はそっち行ってみようか、となったところで。



 イアたちから魔法罠、ぶっちゃけあんま使えないってよ、という連絡がきたのである。連絡というよりは報告なのだが。


 しかもその魔法罠をメインにするには向かないと言ったのがよりにもよって自分の母である、というのを知って。


 ウェズンは秒で納得してしまったのだ。

 まぁそりゃあの人たちからすれば魔法罠とかちょっと変わった攻撃魔法みたいなものなんだろうけれど、と。


 けれども今現在、魔法罠に関してあれこれと調べている者たちの情報がちらほら出ているモノリスフィアを見れば、母の言い分は割と当たっているとしか言えない。

 考えてみればその通りはあるのだ。では、何故すぐにその事実に気付かなかったのか。

 答えとしては呆気ないものである。魔法罠そのものに馴染みがないから。

 知らないからこそ何となく凄そうだし意外といけるんじゃないか? という空気になっただけに過ぎない。


 もしあの場で、もっと魔法罠について詳しく知っている者がいたならば、使えないわけじゃないけどあれをメインにするのはやめておけと忠告をした事だろう。

 テラやジークが何も言わなかったのは、あくまでも生徒の自主性に任せた結果ともいえる。

 ぶっちゃけ効果ないからこっちにしとけ、とかあれこれ口を出すのは簡単だが、そうやって自分たちで考える事をやめてちょっと躓いたらすぐにテラやジークの意見を頼りにされるのは困るからだろう。



 例えるのであれば、そう……

 謎解きゲームがあったとして、その謎の答えがわからずヒントを求めるのであればまだしも、ヒントを聞いてもわからないから答えをすぐに教えてくれとか言い出すような……


 そういった方向性に生徒たちが進んでしまえば後の事を考えるとテラにとってもジークにとってもそれは望むものではないわけで。


 これがただの学校で勉強を教えるだけの所であればまだしも、生きていくための、人生に関わるような事だってあるために様々な事を学ばせている学園なので。

 必ずしも正解が貰えるとは思うな、というのも教師たちの考えの一つだろう。まぁ人生に正解なんてないようなものだしな……と思えばそういった教師たちの考えを否定はできない。


 ウェズンとしてはあっさりと納得したけれど、やはり一部はそう簡単に納得はできないようでもあった。

 まぁ、まだ数日とはいえそれでもそれなりに苦労してあれこれ調べたりしたのだ。

 それが無駄だと言われて即座にはいそうですねとはならないのもわかる。



 けれども、冷静になって考えてみれば。


『去年は砦っていうか要塞っていうか、まぁ室内に罠を仕掛けてたからそれなりに引っかかってた気もするけど、今年は魔法罠って任意で発動できるから、そういう建物もない状態なわけだろ?

 って事は屋外。それって害獣なら普通の事だけど、学院の生徒からすれば開けた場所でもあるわけだし、魔法罠の種類が豊富で各種様々取り揃えてあるからいつでも初見みたいな感じで嵌められるならともかく、そうじゃなかったらさ、一撃で仕留め損ねたらこっちがじり貧になるんじゃないかな、って言われてみれば思えてきたんだけど』


 ウェズンは素直に思った事をモノリスフィアに打ち込んだ。


 室内の罠であれば、室内という限られた空間内で罠が発動するので回避しようと思っても逃げ場がなかったりするかもしれない。咄嗟に逃げようとして壁にぶつかるとか、天井付近にしか安全地帯がなかっただとかで、相手の動きも制限できる可能性は確かにあるけれど。


 だが、そういったものも何もない屋外であれば、咄嗟に逃げようと思えば全方向どこへでも逃げられるだろうし、それらの動きをあらかじめ制限できるような罠がなければ仕留め損ねた時点で次からは更なる警戒をされるのは明らかだし、そうなれば面倒な事になるのも言うまでもない事で。



 実際現状ウェズン達があれこれ調べた結果作り方がハッキリとわかっていて、材料も揃っているから作れる魔法罠というのはほとんど魔法罠としては初級レベルの物ばかりだ。しかも作れる種類も少ない。


 上級レベルの何かすっごい魔法罠とかがあったなら切り札扱いできたかもしれないけれど、今作れる罠を切り札にするのは正直とても心許ない。



 そんなウェズンのメッセージを見て、他の面々も薄々内心で思っていた事だったのだろう。ただ、無駄足踏んでる可能性をあまり考えたくなかったからこそ目をそらしていただけで。


 確かに開放的な屋外で罠を仕掛けたとして、しかも限られた種類しかないのであれば何度も同じ罠を見る事になるのなら、そりゃまぁ学習能力があるなら何度も引っかかるなんて事にもならないわけで。

 そして初見で仕留められるか、となると微妙なわけで。


『え、それじゃどうしようか……』


 と、生徒の一人の途方に暮れたようなメッセージに、


『今から方向性変える? でもどうするかって話し合いになるよね。文字打ち込むの大変だから一回学園に戻った方がいい?』

『他のにするにしてもなぁ……どっちにしたって罠を仕掛けて学院の生徒を攻撃するっていうのはそんな変わらないと思うんだが』

『でも魔法罠に頼り切りはよろしくない。むしろ普通の罠の方がまだマシかもしれない』


 などというメッセージが連続して流れてくる。


『それなんだけど』


 確かに去年も罠は仕掛けていた。ウェズン達が担当する区画以外でだって、罠は普通に屋外で仕掛けられていたし、全く引っかからないというわけでもなかった。

 まぁ去年は学院の生徒も交流会初参加だったからといってしまえばそれまでだが。


 けれども今年は、二度目の交流会なので。

 罠がある、というのは最初から分かった上での事だ。

 そういう意味では仕掛ける側の方がハードルが高い。

 それもあって、普通の罠より何か凄そうな魔法罠とか良さげ、みたいな流れになったわけだが。


『ちょっとした考えがある』


 やることは去年とそこまで変わらない。ただ、防衛側は間違いなく去年と比べて難易度が上がるだけで。


 何も魔法罠にこだわる必要はない。

 あくまでも、交流会参加者である学院の生徒をボコボコにする、もしくはきっちり仕留める、が目的なのでそうするのは別に罠だけじゃなくたっていい。


 だからこそウェズンは先程送られてきたメッセージを読み返したうえで、自らの考えを打ち込んでいったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ