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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
七章 何かが蠢くその先で

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固まる方針



 罠については図書室で見た本と、あとはそこそこ詳しい相手を見つけたことでどうにかなりそうではあった。


 レイも実家でそこそこ詳しい奴がいるから、とりあえずそっちに話だけでも聞いてみる、と言っていたし、そこら辺がどうにかなれば次に待っている問題は――



 材料である。


 そこらのお店で売っていたとしても、まず魔法罠に使うような素材は普通のお値段をしていないと考えて間違いではない。


 それらを毎回店で購入するにしても、ではその代金はどこから捻出するか。


 学校行事なのだから、学校から支給される、というわけでもない。

 一応学園で貸し出したり使っていいと言われている罠に関しては通常の物でしかないが、魔法罠に関しては渡せる数に限りがある。

 何故ってウェズン達以外の生徒だって勿論いるし、クラスは別にテラがやってるクラスだけというわけでもない。


 一部のところにだけ支給してそれ以外はなし、というわけにはいくはずがない。


 それに、今年入学したばかりの生徒たちはまだ勝手がわかっていないというのもあるけれど、少なくともウェズンたちは去年一応どういう流れで交流会をやるかを掴んだだろうし、上級生に至ってはもう今更説明は不要だな? というところまできている。


 ここまできたらむしろ学園で支給される道具だけで事足りるわけでもないだろうから、材料調達は各自でやれ、となってもそれはある意味で当たり前の流れだった。


 というか、学園で支給される魔法罠も、ある意味で初心者が使うには向いているかもしれない……といったものなので、確かに上級生になってから配布されても困る……となっても何もおかしくはなかった。


 むしろそれなら各自で材料を調達していかに学院の生徒を葬れる罠を作るかに意識を傾けた方が有意義というもの。


 上級生ともなれば、そこはもう慣れたものなのだろう。

 とはいえ、ウェズン達はまだ慣れるまではいかなかったのだが。


 来年は、もっとスムーズにいくだろうなとは思うのだが、しかし今年は魔法罠を作ったり材料を調達するという点ではまだ未知だ。どうしていいのかをまだ理解できていない。



「うーん、何作るかはまだ作り方もわかってないのが多いから何とも言えないんだけど」


 魔法罠に関しての資料を漁っていたハイネが、どこか諦めたように本を閉じた。

 なんというか、ちゃんとした作り方が載っている本がないのは悪用防止なのか、はたまた色々と問題があるが故に書に記すのが難しいのか……生憎そこら辺の事情はさっぱりだが、料理のレシピみたいに気軽に判明しないのは確かだ。


「ただ、なんていうか、ある程度共通の素材はありそうなんだよね」


「まぁ、魔法罠ってくらいだから、魔法関係で共通する素材はあるだろうよ」

 ハイネの言葉にレイが頷く。

 これを武器に例えるならば。

 剣を作るか槍を作るか、はたまた斧を作るかで材料は多少違いが出るだろうけれど、けれど金属部分に関しては共通しているといってもいい。

 鉄で作るのか、鋼で作るのか、それともミスリルを使うかオリハルコンを使うかで違いはあるだろうけれど、まぁともあれ武器を作るのであれば何を作るかまだはっきりと決まらずとも、金属の確保だけはしておいても間違いではない。


 それと同じように、魔法罠にもいくつか共通している素材がある。

 確かにそれらを使わない物もあるけれど、使う物なら事前に確保しておけば後は他に足りない分を追加で入手すればいいだけの話で。



「でさ、このギネン鉱石っていうのなんだけど」


 一度閉じた本を再び開いて、向きを変えてこちらにわかりやすいようにハイネが見せてくる。


「これは確実に確保しておいて間違いはないんじゃないかな?」


 言われて、ウェズンは開かれたページを覗き込んだ。


 ギネン鉱石。

 魔力を含有しているために、魔法や魔術との親和性が高い。

 故に武器に使うなどすれば武器に魔法や魔術を纏わせたりだとか、はたまた相手の放った術を切り裂く事も可能。


 まぁ、普通の武器でもできなくはないだろうけれど、鉄の剣とかに炎纏わせたら最悪剣が溶ける、とかありそうだもんな、と文字を読み進めながらウェズンは思った。

 鉄より金を使った武器のがそうなりそう、とも。


 といっても、何も武器だけに使われるものではなく、魔法罠に使う時にもかなり使い道がありそうなのだ。

 場合によっては足りない材料の代わりに使用されることもあるらしい。


 魔法罠に関して何を作るかはまだ決めていないけれど、確かにハイネの言う通りこれがある程度あれば、何かの際に応用して使う事はできそうだ。


 他にもいくつか、事前確保しておいてよさそうな素材の名が他のクラスメイトからも挙げられたので、ひとまずそれらをメモしていく。

 まだどんな罠を作るかも決まっていないが、逆にある程度材料がそろえばそこから作れるものを、と選択も決まってくるだろう。むしろ作りたい物に注目しすぎてどう頑張っても材料が集まらなくて結局作れませんでした、となるよりはマシかもしれないとも思い始める。



「で、そのギネン鉱石ってどこで確保できる感じのやつ?」

「ごめんそこまでは書いてないや」


 ルシアの問いにハイネはとてもあっさりと答えた。

 ダメじゃん。そこが一番重要なやつだろ、と周囲から突っ込みが入る。


「あぁ、それなら僕が知ってる」


 そんな中、すっと手を上げて言ったのはヴァンだった。


「マジか」

「あぁ、それ、採取できる場所が限られてるというか、場所が場所だから」


「もしかして危険なところ?」

「どうだろう? そんな話は聞いた覚えがないけれど」


「その場所には普通に立ち入ることが可能なのか?」

「大丈夫、だとは思う。僕は少なくとも入れた」


 物によっては地元の人間ならまだしも、他所から来た人には立ち入りを禁ずる、というところだってある。

 地元の人たちの収入源を、他所から来た奴らが根こそぎとっていきました、なんて事になりかねないのであればそれはそうだろう。


 場合によってはそこの土地の人との交渉もしなければならないだろうし、であれば何が何だかわかっていない人を行かせるよりはヴァンに行ってもらった方がいいだろう。

 そう判断して。


「なら、それはお前に任せていいか?」

「いいよ」


 レイの言葉にヴァンはあっさりと頷いてみせたのであった。

 大分ノリが軽い。


 ヴァンが行く事を拒否するような場所ではないのであれば、瘴気汚染度もそこまでではなさそうだと思いつつも、それでも本当に大丈夫なんだろうか、という心配は生じるわけで。


「あー、折角だから僕もついてっていいかな?」


 なんとはなしにウェズンはそう言っていた。


「勿論構わないとも、友よ。きみがいてくれるのならばとても心強い」


 クラスではとっくにヴァンの瘴気耐性の低さは知られているので、万が一を考えてウェズンもついていく事に関して誰も反対はしなかった。むしろ推奨された。


 ヴァンがかつて行った事があるであろう場所であったとしても、今がどうなっているかはわからない。

 前はそこまで瘴気汚染されていなかったとしても、今は違うなんて事は普通にあり得るのだ。

 もしそうなっていたとして。

 そうなっていたら最悪そこでヴァンは瘴気を浄化しきれず結界に阻まれ学園に戻ってこれない、なんてこともあり得る。

 一応ウェズンが以前渡したアイテムによって多少どうにかなるかもしれないとは言えども。


「あー……俺はとりあえず罠に関して詳しい奴に話あたってくるから、材料調達に関してはそっち終わってからだな」

「私も魔法罠っていうのなら、おばあさまが何か知ってるかもしれないから駄目元であたってみるわ」

「あっ、ウィルも一応心当たりあるからそっち行ってみる」


 はい、とばかりに手を上げたウィルはさておき、罠そのものに関してはレイとイルミナも名乗りを上げた。


 確かにそういうの知ってそうな感じなので、誰も文句などつけようがない。


「はい、イアもちょっと調べたいというか思いついたというかな事があるのでちょっと情報収集してきたいでーす!」


 そこに更にイアが便乗するように手を上げた。

 ウェズンとしては何をするつもりだ? と聞きたかったが、ここで答えられて困る内容であった場合もありえたので、それに関しては後でこっそり聞くことにする。


「魔法罠……わたしにも少しばかり詳しいだろう人が心当たりにあるので、そちらをあたっても?」


 更にファラムが言う。

 正直まだ魔法罠に関しては作り方以前の問題なので、知ってる人、心当たりのある人にはまず先にそこら辺調べてもらいたいのは事実。

 なのでこちらも反対はされなかった。


 たとえ材料がそろっても作り方がわからなければどうしようもないし、作り方がわかっても材料がなければどうしようもない。

 現状どちらを優先させるとかではなく、出来る事から手をつけていくしかないのだ。

 そのために手分けして行動するのは、そう考えれば当然の流れである。


 他に魔法罠によく使われる素材に心当たりがありそうな生徒が、それじゃこっちあたってみる、だとかじゃあ自分はあっちを……なんて言い出して、そうなれば次は行動に移るのみ。


 とはいえ。


 話を聞きに行くのも材料を調達しにいくのも、授業のある日は難しい。いくら神の楔で転移できるとはいえ、授業が終わってからそちらに赴いたら夕飯の支度をしている真っ最中でした、なんてこともあり得る話で。


 もう少し図書室で魔法罠に関してだとか、他にもあれこれ調べる事はあるだろうからと具体的な行動に出るのは授業が休みの日、もしくはサマーホリデーに突入してからになりそうだった。

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