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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
六章 広がるものは

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こういう時は首を突っ込む



 時間的にはまだ明るい。

 ウェズン達だってお昼ご飯を食べてから宿をとって、そうして今だ。


 夕飯にはまだ早すぎるけれど、しかしまだまだ昼、というか昼下がりと言っていい時間帯ではある。

 だからこそ別にまだお子様が家に帰ってこない、と嘆くのは早い気がした。


 だがしかし。


 ウェズンからするとなんてゲームにありがちなイベントなんだ……! という感覚もあって、思わず「あの……」と声をかけてしまったわけだ。


 恐らくはその子の母親だろう女性は、宿の主人に話しかけていた。

 夫婦、ではないように思える。どちらかといえば友人とか近所で仲が良いだとか、そういった雰囲気だった。


「すいません、ちょっと話が聞こえてしまって。その、戻ってこないと心配するにはまだ早い時間なのでは……?」


 ウェズンも別に態度からして「心配性だなぁ」なんて言う感じではなかった。

 ただ、この時間でそう心配すると言う事は何かあったのですか? という親切心をにじませた態度だったので。


「本当は、お昼に戻ってくるようにって言ってあったのよ」

「あぁ、それなら確かにちょっと遅いと思いますね。ってことは朝から出かけて?」

「そうよ。朝早くに起きて、ご飯食べたらお友達と一緒になってでかけて。

 お昼ご飯までには戻ってきなさいって言ってあったのだけれど……」


「確かにそれは心配ですね。元気いっぱい遊んでたら案外気付かないかもしれないけど、でも流石にそろそろお腹空いたりしてそうですし」

「えぇ、前にそれで空腹すぎてお腹が痛い、なんていう事になって」

「あー、わかるー。あるそれー」


 別にウェズンは子供の頃にそういった体験をしていないけれど。

 ただ、前世ではあったので。


 前世の自分。おっさんだった頃の記憶が特に多くあるのだけれど、幼少期の思い出がないわけではない。

 おっさんがまだ少年だった頃。まだスマートフォンだとか、携帯ゲーム機なんてものすらなかった時代。いやまぁそういう風に言うととても昔に思えるけれど、割とすぐに携帯ゲーム機は世に出てきたのでそこまで大昔ではない。

 ただ、そういったゲーム機なんてものも無かった頃、そんな時代で子供が遊ぶとなれば大抵は外だった。

 女の子とかおとなしめの子は家の中でも遊んでいたけれど、元気いっぱい身体を動かして体力を発散しないといけないやんちゃ坊主たちはもっぱら外を駆け回ったものだ。


 人数が集まれば野球やサッカーといったスポーツを。

 人数がそう多くなくたって、学校のグラウンドやちょっとした空き地を駆け回り、時としてそう大きくはない山なんかに入ったりもした。

 山だと場合によっては自然に実っている木の実だとかがあるので、おやつにも事欠かなかったのだ。


 お小遣いをもらった直後なら、自転車に乗って少し遠くの駄菓子屋へ、なんてこともあった。


 やんちゃ坊主たちは体力も余っていたけれど、同時に育ち盛りであったが故に。

 割といつでも腹ペコだったのである。



 ある程度成長して高校生くらいになればそれなりに落ち着くのだけれど、小学生くらいの頃は言葉を理解できる山猿と言われてもおかしくないくらいだった……と今なら思う。


 朝っぱらから元気いっぱいお外に遊びに出かけるような子だ。

 つまりは、それくらいの年齢なのだろう、と思われる。


 もうちょっと年齢が上なら、そろそろお昼だし戻ろうか、となるのだけれどそれくらいの年齢は楽しくなりすぎて時間を忘れて……なんてことも普通に有り得てしまう。


 単純に楽しくて時間を忘れて、そうして気付くのだ。


 お腹空いた、と。

 そうなると途端になんだか動くのも億劫になって、動けない……なんてこともまぁ、ないわけじゃない。そこで蹲ってても何の解決にもならないとわかっているのだけれど、それでも動きたくなくなるのだ。所謂電池切れってやつ。


 もしくは。


 元々戻るつもりがあったとして、何かがあって戻るに戻れなくなった、なんてことも考えられる。


 であれば、母親がこうして心配するのは当然と言えた。


 本来の帰宅予定時間から一時間くらいならまぁ、楽しくて時間を忘れてたんだろうなぁ、で済む。何より遅くなろうとも怪我もなく戻って来たのであれば全然構わない。


 だが、世間一般でお昼ご飯になるだろう時間はとっくに終わっている。それどころかそろそろおやつの時間と言ってもいいくらいだ。

 それでも戻ってこないとなれば、夕飯時に帰ってくるかも疑わしいしそりゃあ心配にもなる。


 思えば前世のウェズンだって弟がそれなりにいたので。

 妹たちはそうでもなかったけれど、弟の中には時間の概念どこに置いてきた!? と言いたくなるようなのがたまにあったので。流石に数日家に帰ってこないとかはなかったけれど、何の連絡もなしに帰ってこないとなればまぁ、心配はした。そんな記憶も思い出される。


 ま、弟の場合は割と別の弟や妹から、どこそこの友達の家に行くって言ってた、とかそういう話がなかったわけでもないので心配しすぎて警察に……! なんてところまではいかなかったけれども。



 だがこの母親はそうではない。


 連絡――そもそも一般的にモノリスフィアが出回っていないので、学校だとかで支給された事のない相手はマジで連絡がつかないなんてのも普通にいる。大抵そういった相手は町の外に出る事もないので、家にいなかったら町のどこかで買い物してるとか、仕事にだとかで行先も想像がつくのでそこまで問題にならないが、しかしこういった場合を考えるとやはり考え物であった。



 えー、心配ですねーとか言いながらするっと井戸端会議に参加する主婦のノリでいるウェズンは、そのまま学園の生徒である事、数日この町に滞在する事、授業の課題をするためではあるけれど、まぁそこそこ自由時間があるのでなんだったら探してきましょうか? なんて話を取り付けている。



 ウィルとファラムはそれを見て、内心で「えっ!?」と驚いた。

 いや、別にいいのだ。

 確かに子供が帰ってこないとなれば母親が心配するのはわかるし、探しに行こうにも母親が探しに行ったとして、その間にしれっと子供が帰ってきたら今度は母ちゃんが家にいない! となりかねない。

 そういう意味では母親には家にいてもらった方がいいまである。


 だからこそ、代わりに探す誰か、が必要なのは当然なのだ。


 この場合は友人や知り合いから駆り出されるか、もしくはこの町の冒険者ギルドで依頼を出すか。

 とはいえ、依頼を出すとなると報酬も用意しないといけない。

 子供の命が危険に晒されている、とかであればそりゃあ報酬を用意するのは当然くらいに思うけれど、単純に遊びに出かけて時間を忘れているだけならなんというかこう……依頼を出すにしてもしょぼい依頼で申し訳ない……という気持ちになるかもしれない。


 この町に滞在している冒険者がどういった層かは知らないが、稼ぎにならない依頼はしない主義、とかいうのしかいなかったらそもそも依頼を出したところで……となってしまう。


 だからこそ、ウェズンの申し出は母親からすれば渡りに船なのだ。


 初対面の相手であっても、身分を開示しているので得体の知れない人間ではない。

 ついでに今しがたするっと会話に入り込んでわんぱく坊主あるあるな会話をしているウェズンに、母親は「ほんとそう! いっつもおかげで大変で……」なんて頷いている。

 凄い、馴染み方がおかしいくらい凄い。


「ウェズン様って妹がいるだけで、弟とかはいませんよね……?」

「うん、イアっていう血のつながらない妹と、アクアっていう自称娘ならいるけど」


 思わずファラムは小声で問いかけたし、ウィルもアクアは違うだろうけれどつい名をあげた。


 あとは、魔術の師匠とかでイルミナが一応そこに若干該当しそうな気がするけれど、いずれも年頃のお嬢さんである。


 もしかしてウェズンの幼少期の話だろうか、とすら思えるが、しかし二人はイアから聞いている。

 ウェズンは昔から落ち着き払った子であったと。なんだったら引き取られたイアの面倒の大半を見てもらっていたと。


 なんでそんな見てきたみたいに詳しいの……? お友達だって特にいなかった、みたいな話だったじゃない、イアの情報から。


 なんて思ってしまって。


 どこ情報なのそれ、やけに解像度高いけど……と突っ込みそうになるところであったのだ。


 それにさも課題をする合間に、みたいな事を言っているが実際は何をするのもまだ決まっていない。

 なんかそれっぽい感じのやつを見つけるために、とりあえず町に出て情報を集めようぜ、となっていたのだ。


 なので、とてもアレな考えではあるけれど。


 迷子の子を探しに、というのはまぁ、課題の一つとしてレポート作るにしてもどうにかなるんじゃないかなぁ、と思わなくもないのだ。

 だが、流石に面と向かって課題に丁度いいからその迷子探し引き受ける、などとは言えない。

 お前うちの子なんだと思ってるんだ、と母親ならそんなことを言われたらキレてもおかしくはないし。


 時間的余裕もあるから、という親切っぽい申し出と、別にお前の子とかどうでもいいけど課題に丁度いいから、という申し出ならどっちが頼めるかとなればまぁ普通に考えて前者である。


 学園の生徒であるために、もし危険な状況に――あまり考えたくはないけれど魔物と遭遇して身動きがとれないだとか――なっていたとしても、一応どうにかできる可能性も高いことだとかを言われて、母親は大分揺らいでいた。


 見知らぬ人にこんなことを頼むのは……という気持ちもあるが、親切で申し出てくれているので冒険者ギルドに依頼を出すだとかをする必要もなく、またそこそこ戦える手段を持っているなら多少の危険はどうにかできるとも言われてしまえば。

 更には身分を提示しているのも大きかった。


 これがただの旅人です、だとか旅行者です、だとかであれば母親ももう少し警戒しただろう。


 あと、ウェズンと一緒にいるのがウィルとファラムという女性である事も母親にとっては若干の安心材料だった。この三人、どう見ても悪党に見えない。学園……確か魔王側の育成機関よね、とか思ってもでも皆が皆勇者側にいったら神前試合とやらは行えなくなるし、そうなると未だ結界が解除されないところは大変だろうというのもわかる。


 きっとこの人たちはそういう事を考えて、あえてそちらを選んだのね……なんて、性善説なのか案外ちょろい感じで母親はウェズンの事を信用してしまっていたのである。大丈夫か? と聞いてはいけない。



 なのでまぁ、


「本当にいいの? だったら……お願いするわ」


 なんて。


 母親はこうしてウェズン達に依頼を出す形となったのである。

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