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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
六章 広がるものは

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魔法の本



 結局のところ父はテラプロメと関わるのならば相応の覚悟を決めろと忠告するためだけにわざわざ学園に足を運んだらしい。

 何となく、他にもあったんじゃないかなぁ、とウェズンとしては思わないでもないのだが、しかし父には父なりの考えがあるのだろう。

 今言う事でウェズンやイアを逆に危険に晒すかもしれない、とかそういう気づかいくらいはあるのだと思いたい。


 とりあえずウェズンからすれば父が連れてきたイアが、血の繋がりがなかろうとも彼女もきちんと家族なのだと父が思っている事を確認できたので良しとする。

 正直、ちょっとよくわからなかったのだ。


 なんか戯れで拾ってきました、とか言い出されても何もおかしく思えなかったから。

 父も母もその表情を見て何を考えているのか、だとか、そういうのがウェズンにはほとんど理解できなかったのである。

 下手すりゃ我が子の暇潰しになりそうな生きた玩具を持ってきた、とか言い出したっておかしくないと思われているという事実に、父はちょっとくらい泣いてもいい。


 その拾ってきたイアがまさか前世の記憶持ちとは思いもよらないだろう。


 ウェズンだってイアが言うまでそんな事考えたりもしなかったし。

 仮に前世の記憶があるといっても、地球基準で考えたに違いない。

 一体どこの銀河系だよ白亜都市メルヴェイユ、と今でもふと思う。



 ともあれ、一応心配して忠告とかしに来たんだな、と理解はしたし納得もした。

 一応ウェズンだって前世のおっさんとして生きてきた記憶があるので、その場のノリと勢いだけで軽率な行為はしないぞ、と思っている。

 思っているので、一応親の言う事は聞いて行動に移す時はきちんと覚悟を決めようと思っている。


 思ってはいるが、実際その場に居合わせた時にどうなるかは定かではない。


 最悪ルシアが知らないうちにテラプロメに連れ戻されました、というオチだって無いとも言い切れない。

 授業が休みの日とか、一緒にいるわけでもない時に呼び出されたとかであれば知らないうちに、という可能性は普通にあるだろう。


 心配なのは事実なので、一応それとなく様子を見ておこうとは思っているが、テラプロメからルシアを連れ戻しに来る誰かよりも、正直今現在のルシアのメンタルもそれはそれとして心配である。


 平静を装ってはいるけれど、やはりふとした時にその表情に翳りが見える。

 ルシアはそれを二年になったらやっぱ授業の難易度も上がるものだね、なんて苦笑と共に言うものだから、とても上手く誤魔化されていた。

 ルチルが死んだとかいう話を聞いていたヴァンあたりは、その事もあって言葉通りの意味ではないのだろうと思っているようだけど、流石に踏み込むべき内容ではないと思っているのか、こちらもかなり当たり障りのない対応である。



 事情は分からないけどなんかあったんだろうな、と思われるルシア。

 どういった事情かはさっぱりわからんけどどうしてかイルミナのお母さんの身体を使っているジーク。

 正直後者の方がインパクト強すぎてこのクラス他の生徒に何があっても、すぐに気付ける感じじゃない。


 あとついでに言うのであれば、学院からやって来たウィルがレイとよく一緒にいるのを見て、モテたくてもモテない非モテどもがリア充を許すな! と日々レイに喧嘩を売ったりしているのも何かあってもすぐに気付けない原因の一つだと思う。


 ちなみに売られた喧嘩は最高高値でお買い上げした後、見事に叩きのめしているレイに、クラスの一部で打倒レイ! というスローガンが掲げられるようになった。


 多分そのうち学級崩壊とかしてもおかしかないな……とウェズンは呆れた様子で眺めている。


 ついでに他のクラスなのにその打倒レイ! という一部の集まりにしれっとスウィーノが参加していたのがウェズン的には驚きポイントであった。

 モテる男を絶滅させても、モテないやつが選ばれるって事は多分ないぞ、という非情な現実を言うべきか悩んだが、まぁ夢を見るのは自由なので……とウェズンはスウィーノの事を視界からそっと外した。



 さて、そんな二年になって早々騒がしい日々が開始されていたが、そろそろ新入生にとっての学院からの強襲イベントが始まろうとしていたのもあって、ウェズン達はとりあえず知らない生徒は全部新入生、くらいの気持ちでなるべく関わらないようにしていた。同じクラスにいたら詳細は言えないが頑張れ、としか言いようがないが、ウェズン達のクラスには新入生が入らなかったのでそれだけで大体関わる事はなくなる。


 そこそこの日数が経過したのもあって、閲覧図書が増えたという事で賑わっていた図書室も多少は落ち着きを見せただろうかと思いウェズンは今更のように図書室へ足を運ぶ事にしたのである。



 便乗して、というか寮の自室で大人しくするのもそんな気分じゃないし、かといって学園の外に遊びにいくのも外出許可とらないといけないのが面倒、というのもあって暇を持て余した一部がウェズンについてくる形となった。


 ウェズンが図書室に行く、と言い出して真っ先に便乗したのはイアだった。

 そこにルシアとヴァンもついてきて、他のクラスの生徒から売られた喧嘩を買って倒してきたレイが合流。たまたまその場に居合わせたアレスと、レイの喧嘩にがんばえー! とペンライト振ってたウィルが遅れてやってきて、そこにファラムとハイネも図書室に行こうと思っていたらしいので共に行く流れとなった。


 ……合計九名。

 まぁ、二桁まではいかずとも中々の大所帯に思える。


 とはいえ、別に誰かの部屋に遊びに行くというわけではない。図書室だ。

 この程度の人数入ったうちにもはいらないだろう。

 大体他のクラスの生徒たちだって図書室を利用しているのだから。


 図書室なので、要はまぁ、騒がなければいいだけの話である。



 図書室に入って、二年になった事で閲覧図書が増えたと言われたけどどのあたりにありますか? と司書に問い合わせる。そうして案内されたのは、一年の時に利用していた場所から扉一枚更に先へ進んだいかにもな場所だった。

 こんなところあったんだ……と物珍しそうに周囲を見回す。

 天井にまで届くんじゃないかと思いそうなくらい高い本棚。

 そこにずらりと並ぶ分厚い本の数々。


 一目見てどういった本かタイトルがわかるものもあれば、背表紙に何も記されていなくて何の本なのかわからないものも沢山あった。

 ただ、そのどれもが明らかに年代物だろうなと思えるもので、丁重に扱わなければならないのだろうなと言われずとも察する。


 大半は魔導書との事だし、まぁ適当に見てみますか……となったものの。


 去年、ウェズン達が読んだ魔導書とはあまりにも難易度が違いすぎて早々に全員頭を抱える羽目になった。


「は? むっず、ナニコレむっず」


 二年になったけどこれまだ絶対授業で必要な知識得てないだろ、としか思えないような専門書の数々。

 タイトルもわからない本よりも先に背表紙にタイトルが記されていて、一応どういった魔導書であるか、がわかるものを選んだけれどどれもこれもやたらと難しい。


 一応、理解できれば役に立つだろう事は確かなのだが理解するためにはまだいくつか、必要な基本知識が抜けている気がする。


 えっ、関連書籍とか他のやつ探してみる? となってもどれがどれだかさっぱりなのだ。


 もしや、一年の時に読める魔導書だとかそっちで見落としでもあったのかもしれない……そんな気にさえなってくる。


 なんというか、ストーリーで例えるならば起承転結の転からいきなり読んだような、必要な情報大分すっ飛んでる気にしかならないものばかり。


「わからん。何もわからん……」


 真っ先に匙を投げたのはルシアだった。

 机に突っ伏し頭を抱えている。


 さながら高校受験に備えて問題集を見たら大学のやつだった、並みにさっぱりなので仕方がない。


 それぞれさっぱりわからない魔導書を一先ずあった場所に戻して、さてどうしたものかなと再び本棚を見回す。


 ぐるりと室内を囲むように聳え立つ本棚。それがまるで超えられない壁のように見えてきた。


 そんな中、イアが背表紙どころか表紙にも裏表紙にも何も書かれていない本を持ってやってくる。


 何故そんな何もわからない本を持ってきたのだ、と思えば、タイトルのあるやつ難しいから逆に外側から何の本かもわからないやつのがわかんなくても仕方ないよね、って気分で持ってきたとの事。


 ……どっちにしてもわからないというオチが待ってるじゃないか、と思ったが、案外こういう本に知ってる、もしくは理解できる何かがあればタイトルのない本から手を付けていく方がいいかもしれない。

 そう思って。


 ウェズン達はイアが椅子に座り机の上に置いた本を開くのを眺めていた。


 表紙を開いて、そして。




「あれ? おにい? 皆?」



 そして、イアを除くその場にいた者たちの姿が忽然と消えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ウィル、学園生活めっちゃ謳歌してるwww レイ、ラブコメ主人公やってんなあ。 ウェズンの両親評、結構酷いな。まあ隠し事って結局不信買うだけだからな。 [一言] ・ルシアの身内が亡くなった…
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