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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
五章 敵だらけのこの世界で

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考察とフラグ



 リングの中の整理整頓をしよう、と思ったものの中断することになってしまった昨日。

 今日こそは、と思って実行するべきだったのかもしれないが、しかしウェズンは先にイアと話をする事にした。


 イアが原作の内容をどこまで思い出せているかはわからない。

 そもそも今現在、どこまで原作からかけ離れずにいるのかも不明だ。


 初っ端からかけ離れているようなものなので、もうどこまでもかけ離れたところで今更では? という気もしているのだが、それでもあまりにも違う何かになった場合、自分たちの手に負えない事が起きたら困るからなるべくイアの原作の話を聞いてじゃあなんとなくこういう行動をとればいいのかな……? ととても手探り状態であった。


 そんな中、ルシアによる懺悔はさておき、そこからウェズンの両親に関する話まで出てきてしまっては。


 どう考えてもそんなエピソード、原作で語られぬはずがない。

 主人公のお父さんとお母さんが昔凄い人だったんだよ、なんていう作品は古来より多く存在するのだ。

 お前の父さんは歴代で最強と呼ばれる魔王だった、とか言われたくらいならまぁ、そんな父を超える程の強さを身につけろだとかそういう風に捉えるかもしれない。


 けれども、それ以外のエピソードが出たという事は大抵本編に関わる可能性を秘めている。

 ウェズンは前世の作品のあれこれを思い出していっそメタ読みしてみるか……と思って色々と考えた結果、もしルシアから聞かされた両親の話がこの先に関わるのであれば、テラプロメ絡みの事件に巻き込まれるだとか、はたまた何か強敵が出てきて両親の死亡フラグが立つだとか。

 どう考えてもさらっと終わる内容じゃなさそうなのだ。


 多分父も母も未だに現役名乗れそうだが、しかし魔王の看板背負って戦ってた時から数年は経過しているのだ。全盛期と言っていいかはわからないし、ましてや自分が強敵に狙われてそれを庇って両親が死ぬ、なんて展開も無いとは言えない。


 楽観的な想像は最悪絶望のどん底になるが、では最悪の想像をしたからといってどうなるものでもない。心構えができるか、と言われればそんなのはほとんど気休めである。


 ありとあらゆる不吉な想像をした結果、もしそうなったら果たして自分の手に負えるのか、という話だ。


 ウェズンは原作小説の中では主人公という立場かもしれないが、しかし今のウェズンはちょっと前世の記憶があるだけの少年である。前世のおっさんだった頃の記憶など、この異世界でどれだけ役に立てるのか、と自分で思わず突っ込むくらいには微妙なもので前世で弟が読んでいた前世の知識を活かして無双するぞイヤッハー! な展開になる様子もない。


 原作通りの展開になっていればそのまま原作補正とやらでストーリーも進んでくれる気はしているが、そうじゃなければとんでもねぇイレギュラーで追い詰められる可能性がとても高い。


 ウェズンは小説での主人公だという話なので、実際ストーリーそのままに進んでいけば途中で死ぬような事はそうないだろうと信じたい気持ちはある。苦戦して死にかけるだとか、九死に一生を得るような体験をしても一応生存できている可能性はあるのだ。


 だが、この世界にはゲーム版主人公のイアもいる。


 小説と違いゲームは選択肢を自分で選び、尚且つエンディングも複数あるとなればバッドエンドもまた世界の選択である、なんてオチが普通にあるわけで。


 ゲームオーバー的な展開になれば最悪ウェズンもイアも死んでもおかしくはないのだ。それでなくともここは本の中の世界というわけでもゲームの世界というわけでもなく、ウェズンやイアにとってはとっくに現実なのだから。


 まぁ、既に何度かこれは駄目かもわからんね、とか思う程度には危険な状況に陥ったりもしていたので、原作通りに進めていたとしても必ずしも安心できるなんて思っちゃいないが。

 ただ、危険が生じるだろう事はわかっているが、それでもなるべくその可能性を低くしておきたいというだけの話だ。



 それもあって、ここで両親に関するエピソードが出てきたのは何らかのフラグなのではないかとイアに自分が知ったことを伝えようとしたのだが。


 イアは、ウェズンの話を聞いて「えっ、何それ知らん情報」みたいな顔をしていた。


「……心当たりは」

「おにいの話聞いてもさっぱり。そもそも原作にそんな話があった気がまるでしない」


 いくら内容を忘れているといっても、それでも何となく話で聞かされていくうちに思い出せるような部分はあっただろう。

 前世での話になるが、昔買った本を、数年後うっかり同じ物を買ってしまった時。

 出版社が異なり新刊コーナーにあったが故に騙されたようなものなのだが、昔読んだ本を改めて購入してしまったわけだ。

 最初の数ページを読み始めた時は気付かなかったけれど、読み進めていくうちになんだか「ん?」「あれ?」と思うような事が増えてきて、まだ読んでいないはずのその先の展開までなんとなくこうなんじゃないか、と思うようになり。

 そうしてラストシーンで「やっぱりな」となったのだ。


 それは先があまりにも見え見えな話だったからというわけではなく、昔に読んだけど内容を忘れていたものを、読んでいくうちに思い出したというだけの話であるのだが。


 何の変哲もなく他愛もないような場面の話であればともかく、両親の何か故郷でやらかし逃避行だとかだ。それなりにインパクトのある話であるので、もし原作にあるならイアの記憶の片隅に引っかかるように気になったとしてもおかしくはない。


 だがそれがない。

 イアも流石にそんなエピソードなら多少内容聞けば思い出せる気がするんだけどなー、とうんうん唸りながら首を傾げ記憶を掘り起こしているようだが、どうやら全く心当たりがないらしい。


 ウェズンが考えた可能性はそう多くない。


 一つ。スピンオフ。

 原作が人気出た後で、原作の時間軸より過去、もしくは未来での話を新たに出した場合。

 番外編のような立ち位置なので、原作しか知らないのであればイアが知らなくても仕方はない。


 そもそも原作が好きだからといって、それ以外のスピンオフ全て履修するとは限らないわけだし。


 原作漫画でアニメ化したりして人気が出た後、小説版とかで別キャラにスポット当てた話が出る事は割とある話だが、その小説は漫画原作者が書いてるわけでもない。一応世界観とかキャラのすり合わせはして原作の雰囲気を壊さないようにしてはいるけれど、それでも時々「なんか違う」と思う部分もあるわけで。


 前世の弟はよく嘆いていた。

 ゲーム作品がノベル化したものの、圧倒的コレジャナイ感の作品が多いのだと。

 そりゃあゲームで話は終了しているようなものだし、ゲームの内容そのまま小説にするとなるとRPGなら一体何巻で終わるかもわからない。しかもその手のノベル化した本は大抵一巻読み切りか、多くて上中下巻である。

 原作内容そのままを小説にして十巻以上続く作品はとても稀。少なくともウェズンの記憶にはなかった。


 巻数が少ないので原作に沿った内容だとあまりにも巻きで話が進むので原作知らない人は置いてけぼりだし、ゲームに出てなかったキャラの過去とかに焦点当てた場合あまりにも悲惨な話が多いのだ。

 最初は幸せいっぱいな暮らしをしていたとしても、途中からこれでもかと不幸な出来事に見舞われて、そうして旅に出るしかない状況に追い込まれたりして続きは原作で――とかいう、続きは劇場版で、とかいうのと似た何かが発生する。



 弟は言っていた。

 スピンオフが悪いわけではない。ただ、ゲーム原作のライトノベルはギャンブルみたいな部分があるのだ、と。

 漫画原作だと大抵は他のキャラにも焦点当てて原作では出てこなかったキャラの日常だとか、それ以外の魅力的な何かを出せるけれど、ゲームの場合は何故かそのハードルがおかしな方向に上がるのだと。



 そこから仮定すると、もしイアが知らないスピンオフがあったとして。

 それが小説で原作者が後から出したものなのか、それともゲームの方基準で出された話なのかで大分違ってくる。


 原作者は当然原作者なので、スピンオフやっても自分が公式だからどんな展開が出てきても全部公式ですと言い切れる。故に、内容がとんでもなく地獄であっても平然としている。


 他の作家が原作の雰囲気を壊さないようにするタイプのスピンオフであれば、あまりにも酷い内容だと最悪炎上する。ファンの怒りを買い、次からはこの作家の作品絶対買わないわとネットでぼろくそ叩かれて、なんだったら他の自分が今までに出していた作品にまで飛び火する。


 あまりにもはっちゃけすぎて原作の雰囲気をぶち壊すと後が怖いので、その手の作品はなんとなく一線を引いている――ように思われる。


 両親の話がそのスピンオフだったとして。

 原作者が手掛けたなら平気でとんでもねぇ展開になってもおかしかないが、そうじゃなければまだ良心的な部分に着地できる気がしている。

 とはいえ、ウェズンからすればとっくに過去の話なので今更どうにかできようはずもないのだが。


 ただ、そのせいで今後自分たちの身に何らかの面倒な出来事が降りかかる可能性も否定できない。



 スピンオフじゃない場合の別の可能性としては。


 一応ネタとして存在はしていたけれど、作者がそこを書かないまま裏設定とかで終わった場合。

 その裏設定を公表してあったなら知っているファンなどもいたかもしれないが、自分の中にしまい込んでいたのであれば、イアが知るはずもないものだ。



 ともあれ、ウェズンが生まれる前の話だ。

 原作にあろうとなかろうと、今からどうにかできるものではない。


 ただ、もしイアが知っていたのであれば。

 テラプロメに関してもうちょっと何かこう、詳しい情報が得られるのではないか、とは思ったけれど。


 うんうん唸って記憶を掘り起こしていたイアだったが、やっぱり何も記憶にないらしく。


「わからぬ!」


 の一言で結論が出てしまった。


「ってか、そのテラプロメ? ルシアの故郷だから名前は出てた気がするんだけど……そもそも原作に関わってたかどうかもわからぬですな」

「そうか」

 名前だけ出て本編にはそれ以上何もない、というものは割とよくある話だ。

 それならばあまり気にしなくてもいいのだろうか。とはいえ、そのうちルシアがその故郷とやらに呼び戻される可能性は普通にあるわけで。


「……んー、でもお話の中だとルシアって別に途中でいなくなったりしてなかったからなぁ。一応最後までいたと思う。あれ? いたよね?」

「僕に聞かれても……」

「そだね。もうなるようにしかならんよ」


 大雑把にぶん投げたような発言ではあるのだけれど。

 実際そうなのだから仕方がない。


「それはそうとさおにい。

 テラプロメってなんかこう……いかにもな黒幕感というか、話聞いてたら登場作品ジャンル間違えてる気がしない?」

「それを僕に聞かれても」

「まぁそうなんだけどね」


 てへっ、みたいに笑って言うがそんな事よりもむしろ……


「僕は、前に聞いたイアの前世の故郷に似てるんじゃないかって思っているよ」


 人間牧場に空中移動都市。


 イアの前世で過ごしていた白亜都市メルヴェイユは確か宇宙にあった人工衛星都市、だったか。規模が大きいし移動してるかどうかもわからないけれど、そらにあるという点と、人工的に生み出される人間という点で。


 スケールの違いこそあれど、どうしてもそう思えてしまうのだ。


「……言われてみれば。えっ、じゃあもしかしたらそこに行ったらあたし懐かしいって思ったりするかな?」

「それはどうだろう。てか、普通に行く方法ないみたいだからそんな機会はないんじゃないか」

「そっかー」


 残念そうな雰囲気を出したものの、別にイアもそこまで残念だとは思っていない。そもそも前世の故郷にそこまでの思い入れはないので。


 ただ、とイアは口に出さずにちらりとウェズンを見上げた。


 行く方法ないみたいだし、そんな機会はないんじゃないか。


 なんて。


 なんだかまるでフラグみたいな事言っちゃったやおにい……とは思ったけれど。


 イアまでそう言えば本当に何かのフラグのような気がするので、それを口に出すのは兄のために一応自重しておいた。

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