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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
五章 敵だらけのこの世界で

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醜態と背景



 さて、ウェズン達はというと、こちらも課題に関してはそこそこ無難に終わらせていた。

 強いて言うならばスウィーノの視線がやけに刺さっていたのだが、別にわざと足を引っ張ろうだとか、邪魔をしてやろうだとか、そういった妨害はなかった。


 ただ、スウィーノは少々異性との恋愛に重きを置いているタイプらしく、今回の組み分けで一緒になった女性――つまりはイルミナとアクアである――ともしかしたら……なんていう淡い思いを持っていたらしい。

 ウェズンからすれば恋愛? あぁうん、相手の迷惑にならなきゃ別にいいんじゃない? くらいのノリであるのだが、他所のクラスの女性とお近づきに――なんて思っていたスウィーノからすればウェズンはなんというか、目の上のたん瘤そのものであった。


 何故って距離が近すぎるのである。


 別にウェズンとて異性との触れ合いに下心だとかがあるとかではないのだが、イルミナはウェズンを魔術の師として扱っているし、アクアもまた彼らと合流する際ウェズンと手を繋いで現れたのだ。


 スウィーノからすれば、両手に花かよ羨ましい死ね!! と叫びたくなる登場シーンであった。


 イルミナもアクアも別にウェズンをそういう目で見ているわけではない。

 なので甘ったるいいかにも恋人でござい、といった空気は一切ないが、しかしそれにしたって距離が近い。

 恋人じゃなきゃもう完全に家族としての距離感並みに近い。


 念の為スウィーノは確認したのだ。

 もしこの二人がこの野郎の家族だというのであれば、お兄さんお嬢さんとお付き合いさせて下さいと下手に出るつもりでもいた。恋人のまま終わる可能性も確かに高いが、長く続けばいずれは結婚するかもしれない。その時に相手の身内から敵のような認識を抱かれるのは得策でない事くらいスウィーノだってわかっているのだ。

 なので、嫉妬心からいきなり攻撃をしてはならないととても自制していた。


 だがしかし、イルミナもアクアもウェズンとの関係を示せと言われればまぁ普通に他人である。血の繋がりもないし、恋人として付き合っているとかでもない。ただ同じ学園の生徒で、同じクラスで、そこそこ話をする間柄というだけだ。

 一応友人と言ってもいいかな、くらいの関係性。

 恋人ですか、と問われたとしてもウェズンは勿論イルミナもアクアも首を横に振る。


 イルミナ以上にウェズンと行動する時は割と近い距離にいるアクアについては、最初のうちはもしかしてそういう目で見られているのだろうか、とウェズンも思いはした。けれどもなんというか、恋をしているというには何かが違ったのと、ウェズンから見たアクアは可愛らしいけどそういう相手として見ているわけでもなかったため、そして決定的な言葉を言われたわけでもなかったのもあってとりあえず放置だった。


 割とそういう気がしなくもないけど、でも自分の事好きなんだろ? とか自分から言い出すのもなんというか自意識過剰っぽいよなぁ、とウェズンとしては思ったので。

 これで違ったら赤っ恥である。


 けれども、似たような事は他のクラスメイトも思っていたらしく、最終的に友人関係でもあるイアがアクアに問いただす事となったのであった。

 将来的に自分の友人が兄のお嫁さんになるかどうかの瀬戸際……という言い方は大袈裟ではあるけれど、この時点でその可能性が存在していたのもあって聞くしかなかったのである。


 イアからしても、アクアがもしそういう意味で兄の事を好いているのであれば応援するつもりであった。アクアが義理の姉になる、と言われても正直ピンとこないけれどお友達の事をそのうちお姉さんと呼ぶかもしれないのであれば、一応の心構えは欲しい。そんな気持ちで。


 結果として、アクアはウェズンに対して好意を持ってはいたけれど間違いなくクラスメイト達が思っているような好意ではなかった。恋ではない。


 元々ウェズンとアクアがマトモに関わる事になったのは、夏、サマーホリデー期間での事だ。

 それ以前は同じクラスであったとはいえ、大した接点があるでもなかった。

 ただ、サマーホリデーでアクアと一緒に行動する事があった時に、彼女がちょっとした無茶をしでかそうとしたのをウェズンは止めただけだ。妨害とも言う。

 けれども、その妨害はある意味でアクアを助ける結果となったに過ぎない。

 ウェズンからすればアクアを助けようというよりは、野生動物を保護しようといった方向性であったけれど。


 下手をすればアクアの命も危険に陥っていたという事実が発覚し、そこからだ。アクアがウェズンに対して距離を縮めたのは。


 ウェズンからすれば前世の影響もあって、何か妹が一人増えたな……くらいの認識であった。

 もっと色恋沙汰のような雰囲気を出されていたら少しは違ったかもしれないが、年の離れた妹が構ってほしくて近くにいる、みたいな感じだったのだ。


 そしてウェズンのその考えは大体当たっていた。


 アクアはウェズンの事を父親のようなものとして認識していたのである。お前、同学年に在籍してるクラスメイトだぞ年齢差はそりゃあるだろうけれども……と真相をしったクラスメイト達一同は一部思わず口に出して突っ込んだ。



 そしてそれが発覚した時点でアクアは時たまウェズンの事を「パパ」と呼ぶようになった。とてもいかがわしく思えるのは何故だろう。

 先生の事を間違えてお母さんと呼ぶのは若さゆえの過ちというか、微笑ましさを感じる事もあるというのに同級生の女子生徒からパパ呼びは何故だかそうもいかなかった。


 長い沈黙の果てに「とりあえず、なんかそれ微妙な気持ちになるからやめて」と言葉を絞り出せたけれど、そうでなければこの場でもアクアはウェズンの事をパパと呼んだのだろう。

 色んな意味で問題しかない。


 ちなみにアクアの実の父親はとうに鬼籍である。

 つまりウェズンはジェネリックお父さんだった。


 ちなみにアクアはあの一件以降、地味にウェズンの養子になれないかとあれこれ調べていたらしいのだが、それも説得の果てにどうにかやめさせた。ただでさえ血の繋がりのない妹がいるのに血の繋がりのないほぼ同年代と思われる子とか、家族の相関図をこれ以上ややこしくしてくれるなとそれはもう一杯説得した。


 父が既にいないのはわかったものの、では母親は何やってんだとなればどうにもアクアの母親は研究者らしく己の興味の赴くままに実験と研究を繰り返すタイプであるようで、実の子であるアクアにはほぼノータッチであるのだとか。ウェズンは自分の家も冷静に考えると内面がアレすぎるけど、しかしアクアの家庭もどうかと思うな……と遠い目をしてしまったくらいだ。


 ウェズンの家庭は表向きは平和だし割と普通であるのだが、しかしその実父親は神前試合に三度参加した凄い魔王らしいし、その妻である母もまぁ普通の女ではないだろう。

 ついでにいうならそんな二人の子であるウェズンは何気に前世の記憶を持った転生者であるし、血の繋がりのない妹であるイアも前世の記憶持ちである。ウェズンと違うのは、イアの前世の方がウェズンの前世よりも更に未来であろう感じで、ウェズンからすればイアの前世は宇宙人と言っても過言ではない事くらいだろうか。


 表向きは仲の良い普通の家族のはずなのに、注釈つけると途端におかしくなる家庭。それがウェズンの家である。


 そんな真実を知らなければウェズンの家庭はありふれた普通の家庭なのだが。



 ともあれ、作った覚えも産ませた覚えもない娘が勝手にできるところであったという事実に、ウェズンは将来恋人ができた時に修羅場フラグにならんかそれ……と言いたくなる未来をどうにか回避したのであった。

 血の繋がりのない妹二人目、と考えれば何も問題はないのでそういう扱いをする事にしている。



 ともあれ、そういった意味での距離の近さなのだがまぁスウィーノからすればそんなん知ったこっちゃないのである。普通に女子生徒とイチャイチャしているようにしか見えないという状況下。

 女にモテたくてモテたくて仕方のないスウィーノからすれば、師匠扱いだろうとジェネリックパパだろうとともあれ女子と距離の近いウェズンが羨ましすぎてハゲて死ねと思わず呪いそうな勢いであった。


 このスウィーノ、黙っていればそこそこ見た目は悪くないのだが、口を開けば途端に残念さがあふれ出す残念野郎なので悲しい事に今の今まで女子におモテになられた事は一度もなかった。

 見た目に釣られてちょっといいな、と思った女子もしかし一度スウィーノと話をすれば途端にその芽生えかけた恋心は粉々に粉砕、木端微塵さらば恋心そんなものはなかった、となってしまうのである。


 せめて残念な言動をどうにかできればワンチャンあるのだが、現状スウィーノはその残念な言動を正す事もできず悲しいくらい負のループであった。


 ちなみにそんな態度のスウィーノに、アクアが心底ドン引きした表情で、

「節操なさ過ぎて引く……」

 とぽそっとギリギリ聞こえるかどうかの声量で呟いた一言は、スウィーノの胸に消えない傷跡を残す結果となった。


 ウェズンからすれば前世でも女にモテたいのにこれっぽっちも興味もたれなくて発狂してる野郎などそれなりに見てきたからスウィーノのそれも割と見慣れたものだったのだが、アクアやイルミナからすればドン引きレベルの代物だったらしい。

 まぁ、女性目線で見れば相手が誰でもよいという時点で、じゃあ別に自分じゃなくていいなら他あたってほしい面倒だし、となるのかもしれない。それ以前に、手っ取り早く性欲解消させたいだけか? という勘繰りもあるのだろう。何か前世で妹の一人がそんな事言ってた気がする。



 まぁ、女性陣の言い分からして、誰でもいいというのは失礼な話だよなとウェズンもわからんでもないのだ。

 けれどもスウィーノの言い分としては、この人しかいないという唯一に振られたら二度と立ち直れそうにないから……とのたまってたので、その気持ちもわからんでもない。

 失恋の傷を最初から浅くするために決まった相手にしないという消極的な理由もどうかと思うけれど、成程これが男女の溝……とウェズンは声に出さずに受け流す事にしたのであった。



 ちなみにウェズン達と組んで此度の課題に挑む留学生でもあるセドリックは、スウィーノが醜態晒し始めたあたりで終始背景に徹していた。

 両手を適当な角度で伸ばしたり曲げたりしてサボテンっぽいポーズをとった後は、微動だにしなかったあたりこいつもどうかしている。

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― 新着の感想 ―
拝読していてまだ先に200話以上もあるので感想書き込むつもりなかったのですが、ジェネリックおとおさんという、衝撃の単語に思わず吹き出してしまい…!! なかなかの威力でした… せっかくなのでついでに書く…
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