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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
四章 恐らくきっと分岐点

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潜むつもりのない波乱



「えー、ぼちぼち進級テストとか始める事になると思うわけなんだが」


 朝のホームルームでテラが告げた言葉は、学校として考えるならば特におかしなものではない。


「一応お前らはさ、今日まで生き残ってきたわけじゃん? 座学の成績もまぁ、そこまで酷いのいないから、このまま進級させても何も問題はないんだけども」


「問題ないなら別にいいだろ」


「そういうわけにもいかないんだよな……他のクラスでちょっとギリギリなのとかそれなりにいるらしくて」


 レイの直球すぎる突っ込みに、しかしテラはそっと首を横に振ってみせた。

 他のクラスの事とか正直どうでもいいんだが、と呟くどころかしれっと言ってる時点で、じゃあ別にその進級テストってうちら関係なくない? とか言い出しそうになった生徒は一人や二人じゃないのだが、言ったところでどうなるものでもない、というのもまた理解していた。


 テラの思い付きで与えられる追加課題とかに文句言ったところでどうにもならないのに、恐らく学園側から言われただろう事に文句言ってどうなるというのだ。

 テラですら多分文句言ったんだろうなと思われるのに、その上で実行されるらしいものなのだ。

 テラの思い付きの追加課題とかはこちらの言い分次第ではじゃあ今回は見送りで、なんて事もあるけれど学園側、それもテラより立場が上だろう相手から言われた事がそう簡単になくなるはずがない。



 それ以前に、この学園の上って誰だ? とふとウェズンは思ったけれど聞いたところで多分わからないのでその疑問は早々に頭の片隅に追いやられた。

 学園長とかいるだろうとは思うけど、見た記憶がない。

 いや、見かけた事はあるかもしれないけれど、その人がそうだとわかったわけではない。


 なんだったらテラの次によく話をする事のあるウェッジが実は学園長でした、とか言われても驚かない。

 いやまぁ彼は自分で教師だと名乗っていたし学園長でないのは確かなのだけれど。


「この一年で弱い奴はバンバン死んだりしてったわけですが、だからといって来年、次学年からは死なないかってーとそうじゃないわけだ」


 まぁ、そうだろうなとは思う。

 二年生ともなれば授業の内容も今よりもうちょっと難しい物が出たりするだろうし、学外での魔物退治ももっと増えるだろうなとは思っている。

 魔法や魔術に関する専門的な知識が必要になる授業だって増える事だろう。


「で、えーと、一応一年目って同じクラスの連中とはそれなりに交流深めるっていうか、一緒に行動する機会多かったと思うんだけど」


 言いながらテラはがしがしと頭を掻いた。かゆいから、といった感じではない。なんというか面倒ごとをどう対処すっかなー、みたいな雰囲気が漂っている。


「これからはそれ以外とも関わる事が増えるわけだ」


「えーと、それってたまにテラ先生が授業やんないで講堂で他のクラスと一緒に座学やる、みたいな感じでですか?」


 生徒の一人が質問するも、テラはまぁそれもあるんだが……と言いながら正確にはそうではない、と言い直した。


「今までお前らが学外授業に行く時は、組み分けられたグループ以外の連中とそうかち合う事ってなかったと思うんだけども。

 まぁそこら辺はこっちでもそこそこ調整してたわけ。

 とはいえ、学院側との兼ね合いとかはないから、そっちと遭遇して殺し合い、なんてことになった奴もいると思う」


 そう言われて、何名かがかすかに頷くのが見えた。


 ウェズンは実のところほとんどそういった事がないので、えっ、知らないうちに他のクラスメイト修羅場くぐってた……? と少しだけ困惑した。


「ただ、これからは行き先が被る他のグループとかも出てくるとは思う。そうなった時、場合によっては他のクラスのグループと協力しないとクリアできない課題、なんてのも出たりするとは思う」


 なるほどな、と一応納得する。


 神前試合で魔王として選ばれた相手はさておき、それ以外はある程度連携の取りやすい仲間が選ばれる。

 そうなると大抵は同じクラスの中から……という事になりやすいが、他のクラスから選ばれないという事もないわけで。


 そこら辺から色んな組み合わせを試していって、自分の実力がより発揮されやすい組み合わせを見つけていけって事なんだな……とは理解できた。


 いくらデータでこいつとこいつの実力近いから、組み合わせればちょうどいいだろうとか思っても、いざ試してみたら相性最悪、なんてことだって有り得るわけだし。その逆も勿論あるだろうけれど、結局のところは実践あるのみである。



「でだ。他のクラスの課題だとかで、ちょっとうちのクラスも混ざる事になったわけだ。

 あと、前に来てた留学生の中で、ここに残る事が決まった連中もそれに参加する。

 ある意味で、あいつらがこの学園できちんとやっていけるかを見極めるテストみたいなのも含まれてるな。

 多分大丈夫だとは思うけど、それでも万が一ってのもあるから」


 留学生。

 そういやいたなと思いだすのにそう時間はかからなかった。


 元々ウェズン達のクラスはほとんど関わらなかった相手ばかりだ。

 時々見かけはしたけれど、直接関わる機会がない。


 他のクラスの連中だとかは何らかの縁があったのか、見かけた時に和やかに談笑している者も見かける事になったが、ウェズンを含めクラスメイト達はそういった知り合って話をするようなタイミングがほとんどなかったのである。

 まぁ、別に知り合わなくても何も困らない……といった者たちばかりというのもあるけれど。


 案内をした初日、イアにつっかかってきていたクイナならウェズンも何度か見かけたが、最初の頃はともかくここ最近は何やら忙しそうに駆け回っている姿を視界の隅に一瞬捉えたくらいである。

 あぁ頑張ってるんだな……くらいの感想しか浮かばなかった。


「つーわけで、進級テストに関しては他のクラスと合同になって何かやる、みたいな事になる可能性がとても高い」


 ここに残る事になった留学生たちの見極めをしろ、とかそういう内容ではなかった。

 まぁ、教官の真似事をしろと言われても、多分このクラスでそういった事に向いてる奴は一握りしかいないのでそんな無茶振りはないと思っていたが。


「近日中にもうちょっと詳細はっきりすると思うから、そん時は色々と準備しとけよー」



 そんな、とてもゆる~いお知らせに生徒たちは「はーい」だとか「へーい」だとかの同じくゆる~い返事をしたわけだ。

 その後は普通に授業が始まって、放課後を迎え、寮へ戻り一日が終わる。



 詳細がハッキリした、と言われたのはそこから二日後の事だ。

 思っていたよりも早いお知らせである。


 近々行われる合同授業と銘打たれたそれは、内容だけなら普段の学外授業のようなものだった。

 ただ、いつものメンバーで行くというよりは、他のクラスの生徒も含めランダムで選出したような組み合わせだというのが、いつもと違う部分だった。


 顔も名前もロクに把握していないような他クラスの生徒と組む事になってしまったとなると、中々にやりにくいのではないだろうか……とも思ったのだが。

 よくよく考えれば入学当初クラスのメンバーで学外授業に行った時だってロクにまだお互い知らないようなものだったのだ。そう考えれば別にそこまで気にする必要もないだろう。


 選出に関しては成績その他事項を考慮した上で組み合わせた、との事らしいが、その他事項の部分がどういう風になった結果こうなったのだろうか……とウェズンは首を傾げてしまった。



 モノリスフィアに送られてきたその通知。

 そこから送られてきたメンバー一覧、というデータを確認してみれば。


 ウェズンと共に行動する事になる生徒はイルミナとアクア。

 それからセドリックとスウィーノという人物の名が記されていた。


 他のクラスと合同で混ざるから、てっきり同じクラスの人とは精々いても一人くらいだろう、と思っていたのにメンバーの大半が自クラスの人間である。

 誰がどのクラスか、というのもそこには記載されていた。それを見る限りセドリックは留学生としてこちらにやってきて、そしてここに残る事を決めた者であるらしかった。

 スウィーノはどうやらウェズン達がいるクラスから離れたクラスの生徒らしい。

 正直全く知らない相手である。


 まぁどうにかなるだろう、と思いつつ、他の面々はどういう組み合わせになったんだろうと思って視線をつらつらと移動させてみる。


 どうやらレイとハイネは一緒らしい。それ以外にコーネルとシンという人物の名があった。

 この二人もどうやら留学生らしい。


 テラの話では少し前までは留学生でここに残ってやっていけそうな人物は片手で数える程度くらい、とか言われていたが、その後少し増えたとかなんとか。

 ウェズンは自分に特に関係する話でもないなと思って軽く聞き流していたので具体的に今現在、何名留学生が残っているのかもよくわかっていない。


 留学生に関しては今後学園で本当にやっていけるかどうかの見極めもあるらしいので、留学生と一緒のグループはもしかしたら課題内容が面倒なものになるかもしれないな……なんて思いながら、他のグループを確認していく。



「うわ」


 その声が無意識に漏れたのは、イアの名を見つけた直後だ。


 イアのグループにはヴァンとルシアもいる。

 それだけではない。

 サーティスとソーニャという留学生の名と、更に――


 クイナ、という名が何度確認してもそこにあった。


 大丈夫かここ……と何とも言えない不安感が浮かんでしまって思わず同じようにモノリスフィアに目をやっているイアへと視線を向けてみたが……


 イアも丁度自分がどのグループに組み分けられたのかを知ったのだろう。


「わぁ」


 とか小さく声を漏らしていた。


 クイナがイアに突っかかって――というかニナではないのか、と言っていたのは初日だけだった。その後は留学生は授業のあれこれで忙しく関わる暇もロクになかっただろうから、クイナもわざわざこちらに足を運んだりもしていなかったのだとは思う。

 イアもウェズンも人違いだと少しきつめに言ったのもあるから、そこで引いてそれで終わっているとはいえど、しかしクイナが納得して引いたというわけでもなさそうではあった。


 今回行動を共にする事になって、またそういった疑惑が浮かんだりした場合……


(面倒な事にならなきゃいいんだけどな……)


 まぁイアとてそれくらいの対処、自分でできるだろうとは思うのだ。

 それでも心配するのは、単なる兄心である。


 一応ヴァンとルシアも一緒のようだし、万一クイナとまた揉めるような事になったりしたら、仲裁に入るくらいはしてくれる……はずだ。

 そうだと思いたい。


 行先に関しては記されていなかったので、当日か前日あたりに各グループに連絡が来るのかもしれない。


 他のクラスと合同だとか言われた割に同じクラスの面々がいる状態なので、全く知らん人たちとグループ行動をしなければならない、という緊張感はない。

 ウェズンとしてはセドリックとスウィーノがどんな人かはわからないが、まぁどうにかなるんじゃないかと思っている。


 レイに関してもハイネと一緒ならハイネがストッパーになってくれそうなので、そちらも心配はない。


 ただ、何度見てもイアとクイナというその名前が並んでいる部分だけが――



 やけに不安を煽っていた。

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