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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
四章 恐らくきっと分岐点

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父の思惑



「――あぁ、ウェズンか。どうした?」

「どうしたじゃないんだよなぁ! 何なのさっきの!」

「さっきの……? あぁ、そういう事か」


 しばらく呆然と佇んでいたウェズンであったけれど、しかしいつまでも呆けてはいられない。

 ここまできて、もう疲れたからまた今度にしよ……と先延ばしにしてしまったら、なんだかもう次の機会なんてもの、当分こないんじゃないかと思ったのだ。主に自分のやる気的に。


 それに……今回の用件は割と急なものではないけれど、いつかそのうち本当に必要に駆られて連絡をしないといけない日がやってくるかもしれない。

 その時にまたこんな面倒な事をするようなのはちょっとな……と思ってしまったのだ。

 先に確実に親と連絡を取れるようにだけはしておきたい。


 その後、別段何の用事もなくて連絡をする機会が年単位でなかろうとも。


 そうして先程のやたら不機嫌な女の声によって伝えられた連絡先を登録し、モノリスフィアを操作して連絡をしてみれば出たのは父であるウェインだった。


 実の親に連絡取りたいだけなのに、なんであんなわけのわからんワンクッションが入ったんだ?

 そう思うのは無理もない。

 これが、たとえば自分はどこかの家に養子に出されて実の親とは中々連絡がとれない、とかそういう事情でもあるのなら話はわかる。

 でも別にそういった込み入った事情も何もないのだ。


 普通に! 直通で! 連絡取って問題ないはずだろう!?


 そう思うのは当然ではないだろうか。


 別に家族間の仲がとんでもなく冷めきっているだとかでもなし。


 特殊な事情がある、と知らされているならともかくウェズンはそう言った話を聞かされた事はない。なのでそうなれば、普通に問題なく連絡がとれると思ったっておかしくはないだろう。


「生憎と家は手紙くらいしか届かないようにしてあってな。母さんのモノリスフィアは現在ある人物が預かっているんだ」

「そのある人物ってさっき僕が連絡した人かな。なんかすっごく機嫌悪そうだったんだけど」

「だろうな。あいつが機嫌がいいなんて事滅多にないから気にするな」

「うわぁ……」


 気にするなとか言われてもとても今更である。


 むしろそういうのは手紙にでも事前に書いて知らせておいてほしかった。


「で、さっきの人誰?」

「知り合いだな」

「知り合い!? 知り合い程度の間柄の人にこんなわけのわからないワンクッションいれさせたの!? そりゃ機嫌も悪くなると思うんだけど!?」


 これが友人、それもかなり親しい間柄だとかであればわからんでもないのだ。

 緊急連絡先は基本的に信用できる相手を指定するべきだろうし。いざという時に連絡しても連絡がつかないようなところを緊急時に連絡する先にするとか、もうそれ連絡受けるつもりがないだろうとしか思えないし。


 なんていうかもっとこう……いざという時背中を預けて戦える相手だ、くらい言える人だったならウェズンだって納得したに違いない。

 そんなウェズンの心情を察したかどうかはわからないが、

「まぁ、向こうにも色々と事情があってな……もし、そうだな手を貸してもいいと思うのなら貸してやってくれ」

「無茶をいいおる……」


 そもそも名前も知らない父の知り合いを助けるって何?

 そういうのはせめてもっとこう、事情を説明するとかあってからでは?


 などとウェズンが疑問を口にするよりも早く、で? とウェインは声を発し、

「わざわざこうして連絡を取ってくるくらいだ。何か用事があったんだろう?」

 なんて本来の話に戻してしまったのだ。


 いやまぁ、最初からそれが目的ではあるんだけど。

 しかしそれにしたって脱線しかけた内容ももしかしなくても重要なんじゃないかこれ……と思えるのは、ゲームで例えるならばサブイベントだとかの気配がぷんぷんしているからだろうか。


 何となくではあるがウェズンの勘が囁いている。

 もしそうなら逃さない方がいいのではないか? と。

 ゲームと現実を混同するなと内心で冷静に突っ込みも入っているのだが、しかし父がわざわざそんな事を言うという事は、父が直接何らかの手助けをするのは難しい状況にあるからではないかとも考えられる。


「……まぁ、こっちも最近少し時間に余裕が出てきたから、あまり大変な案件じゃなければ手伝うくらいはできると思うよ」

「そうか。助かる」


 話を戻したくせに更にウェズンが前の話に戻せば、しれっとそんな事を言うあたり父も中々いい性格をしていると思う。


「で、本題っていう程重要な話でもないんだけどさ。単純に何かあった時の連絡先を登録しておこうと思ったのと、あとは……そう、魔晶核って知ってる? って聞きたくて」

「なに?」


 連絡先、の部分でそうかそうか、と微笑ましいものを見ているかのような声でうんうんと頷いていたウェインであったが、ウェズンの口から出た魔晶核という言葉に次の瞬間にはとんでもなく低い声が出ていた。

 ウェズンも思わずびくっとなる程度には低い声だった。


 思えばウェズンは父に叱られた記憶というのがない。

 前世でもどっちかというと世話をしてくれていたのは家政婦さんだった。両親は仕事に精を出し、正直あまり顔を合わせて会話をする事も滅多になかったくらいだ。

 とはいえ、家政婦さんは仕事で家事を請け負っているとはいえ、前世のウェズンたち兄弟姉妹の事もしっかりと面倒を見てくれていた。住み込みではなく通いであったけれど、それでも多分実の両親よりも接する時間は多かったのではないだろうか。

 なんだったら親よりも親のように面倒見てくれてた気がする。

 というか学校に通っていた頃の弟たちは授業参観に親よりも家政婦さんに来てほしがっていたくらいだ。


 ともあれ、今世の父と関わったのは前世の記憶を思い出してからだ。

 なので、その頃には善悪の基準も大体わかっていたし、これをやったら親が怒るだろうなぁ、という判断基準もしっかりわかっていた。だからこそたまにちょっとお子様らしくそれっぽい振る舞いをした事はあるけれど、怒られる程の事はしていない。

 学園に行く前に魔術を教わったりだとか、戦闘訓練だとかで厳しい事を言われたことはあるけれど、それは別に叱っていたわけではない。厳しくしておかなければいずれ命にかかわる事だ。甘やかすわけにもいかないとウェズンだってわかっていた。

 それに父は、できもしない事をやれと言うような無茶は言わなかった。今のウェズンには難しいかもしれないが、いずれはできるようになるだろう、というちょっとした過大評価というか期待はあったかもしれない。


 生憎と反抗期らしい反抗期も前世で済ませてしまったからか、今のウェズンには親に反発してやろうとも思っていなかった。

 いや、もしかしたらイアの言う原作のウェズン少年として存在していたのであれば、魔王ではなく勇者になりたい、という願いこそが反抗そのものなのかもしれないが。



 そんな、これといって親にこっぴどく叱られるという事がなかったが故に、ある意味で父のそのとても低い声はウェズンが驚くには充分であったのだ。


「……授業でやったのか?」

「いや。授業では言われてない。ただ、人から聞かれたんだ。知ってる? って。

 知らないし、他にそういうの詳しそうなクラスメイトも知らないっぽかったし、そうなると気になるけど図書室で調べるにしても取っ掛かりがなくてさ」


 実際ルシアが他に詳しいだろう相手に聞いたかどうかはさておき。


 ちょっと困ったように言えば、父は小さな溜息を吐いたようだった。


「誰にどんな意図をもって聞かれたかは知らないが。世の中には知らないままの方がいい事もある」

「えまって、そんなヤバいブツなの? 禁忌的な存在なの?」

「禁忌、ではないが。まぁ、知ってしまえば面倒な事になるのは確かだ。何を聞かれても知らぬ存ぜぬを貫け」

「いや知らないから聞かれてこうして調べてみようかな、って思ったんだけど……?」

「調べるな。知らないままにしておけ。いつか知る事があったとしても、それは今じゃない」

「……わかった」


 そこまでして知りたい! と思うものでもないのだが、こうまで言われると逆に気になってしまう。

 けれども、なんというか父の言い回しが今はまだフラグが立っていないから先に進めないゲームにありがちなやつに近い感じがしたので。

 ウェズンは素直に頷いたのである。



 さて、ここでとても残念なすれ違いの話をしよう。


 ウェズンは知ったら何らかの面倒に巻き込まれるような利権絡みのアイテムなのだろうか、なんて思っていたが。

 ウェインはそういう意味で言ったわけではない。

 何気にウェズンがその魔晶核を現在所持している状態であるが故に。

 下手に知られると厄介だからこそそう言ったのだ。


 どうせいつか知るかもしれない日がやってくるとは思っている。知らないままでいられればそれでいいが、そうもいかないだろうとウェインは知っているのだ。

 いつか、どうしたって関わる時はやってくる。


 だが今はまだその時ではない、そう思いたかった。


 現在の魔晶核の所持者がウェズンだろうとも、その本人がそのアイテムの事を知らなければ所持しているという事実もわかるはずがない。下手に知った方が厄介な事になるからこそ、ウェインはそう言ったのであった。

 まぁ、息子には間違いなくそんな思惑伝わっていないけれど。


「で? その魔晶核とやらの事を聞いてきたのはどんな奴だ?」

「え? 同じクラスでよく課題とか一緒にやったりする人」

「名前」

「……ルシア」


 なんだこれ尋問か? と思いながらもウェズンは特に疚しい事があるわけでもないから、とさらっと答えた。こういうのは下手に隠そうとすると余計躍起になってあれこれ聞かれると相場が決まっていたので。


「家名」

「えーっとなんだっけ……あ、そうそう。レッドラム」


 そもそも学園に入学した最初の頃に自己紹介だとかをしたけれど、名前はともかく家名とか呼ぶ機会があまりなかったのもあってウェズンの記憶からは危うく抜け落ちるところだった。

 もっと長い名前だったら思い出せないところだったとすら思っている。


「あぁ……そういう……いやわかった。やっぱそのまま知らぬ存ぜぬを貫いておけ……」

「え? いやだから知らないんだってば今の時点で」

「あぁだからそのままでいろ」


 何だろう。さっきと違って今度はやけに疲れ果てた感じの声に。


 ウェズンは釈然としないながらも、はいはいわかりました、と軽く了承したのである。

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