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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
一章 伏線とかは特に必要としていない

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報連相の大切さ



 休憩時間が終わり、再び授業の始まりである。


 時間割といったものが特に決められていないからか、先程の話の続きからになるらしい。


「さて、勇者と魔王の戦いによる余波で、幸か不幸かこの世界の次元に影響が出たらしくてだな。これ以降異世界からの迷い子だとか来訪者だとかは現れなくなった。よそ者に世界を好き勝手される機会はなくなったが、同時に異世界からの知識や技術も仕入れる事ができなくなったわけだ。

 ある程度の道具はそれでもこの世界で自力で再現できるようになってきてるけどな。浄化機はまだそこまでに至っていない。もし浄化機を自力で作って何の問題もでない状態で使えるのであれば。それを作り出せた奴は世界中から引っ張りだこになるな。

 ま、製作段階で失敗すると瘴気発生するから気軽にチャレンジしてみろとは言えないんだが」


 確かに製作段階で動作確認していざ失敗となれば、その近くにいる者が瘴気の影響を最も受けるのは言うまでもない。

 一攫千金のチャンスではあるが、同時に命の危機にも陥るとなれば気軽に試そうとはならないだろう。後先考えずにやらかして失敗して周囲に瘴気振りまくだけ振りまいた場合、周辺住民の怒りの矛先がかろうじて生きていた製作者やその家族に向く事だって考えられる。


「ここまでで何か質問あるか? あってもあんま答える気ないけど」

「じゃあなんで聞こうと思ったんですか」

 思わずウェズンは突っ込んでいた。

「どうせ出てくる疑問なんて浄化機もそこまで役立ってる感じしないし、だったら今頃世界中瘴気まみれのはずじゃないんですか~? とかいうやつだからな。その答えについてはこれから話すが、他に何か面白い質問あるか?」


 普通の質問ではなく面白い、とつけられた事で周囲は困惑していた。気になるべき部分はあと勇者と魔王について、になるだろうか。しかしそれもこの後語られる気がする。

 結局特に質問らしい声が上がらなかった事でテラはそのまま話の続きを開始した。


「ところで魔物にも瘴気の自浄作用がある。

 魔王の目的はこれだった。

 瘴気を取り込んで強くした魔物を倒した場合、その魔物が取り込んでいた瘴気はそのまま消滅する。再びまき散らされるわけではなかった。魔王はそこに目をつけて、強い魔物を大量に討伐し一度に瘴気を浄化しようと考えたわけだな。

 とはいえ一人で世界規模の浄化なんぞできるはずもない。どうやったかは知らんが各国にそれら強力な魔物を送り込んで、人海戦術で倒そうと思ったらしい。

 ま、そういった連絡一切受けてなかった人類からすればたんなる侵略にしかなってないんだがな。被害も甚大だったようだし。

 ちなみにこれらは後に勇者の口から語られた内容だ」


 うわぁ。


 出てくる感想はこの一言だった。

 その魔王が何らかの手段で魔物をある程度操るような事ができたとして。

 魔物使って一斉浄化しよう、と思ったまではいい。完全に操れるならその時点で魔物に自滅するような指示を出せばいいわけだけど、それをしなかったって事はできなかったんだろう。精々が行動の指向性を多少定めるのが限界だったのかもしれない。

 でもそこで何の連絡もなしにやらかしたら、そりゃ周囲は魔物操って襲いに来た奴にしか見えないよな。


「今のところ見た目で明らかに瘴気塗れな場所は少なくなってきてるが、だからといって土地から完全に瘴気がなくなったわけじゃない。見えない部分にはまだ大量の瘴気が、なんてのはどこの土地でもある話だ。

 完全に瘴気の影響がないのはここいら一帯くらいだな」


 へぇ?

 魔法だとか魔術についての扱いを教えたりする以上、どっかで失敗する人が出るのは明らかだろうしそれでも瘴気の影響がない、と言い切れる事が気になりはしたものの、これも恐らく後で説明されるのだろう。

 数名そこら辺気になっている様子だが、質問をするまでではないと判断したのか大人しく話を聞いているだけだ。


 というか、あまりにも皆大人しく授業を聞いている。

 前世の記憶だと、この手の授業なんて真面目に聞いてる奴なんて精々数えるほどであとは聞いてるふりして別の事やってるか、まったく聞かずに友人と話をしているかだったと思うのだが。

 いや、大学辺りは割と皆真面目に聞いてたな、と思ったが、それにしたってそれ以前の学校の様子と比べると違いすぎた。



「まぁそういうわけで、魔物に関しては見かけたら退治推奨されてるわけだ。特に強い奴は倒せばその分今まで取り込んだ瘴気も消滅する。ちなみに浄化機で土地を浄化したらその土地にいる魔物も弱体化するかとなると、特にしない。過去に試した結果だな。

 土地に溜まった瘴気は浄化機でどうにかなるが、魔物に取り込まれたら後はもう倒すしかない。魔物に関しては放置しても弱体する事はなくむしろ瘴気を取り込み強くなる事の方が多いからな。倒せる相手じゃないにしても放置するんじゃなくて、見かけたという報告が義務とされてるのはそういう理由からだな」


 へぇ、という声が周囲から上がる。

 ウェズンも幼い頃に外に出てもし魔物を見つけたら、必ず大人に伝えなさいと母によく言い聞かされたものだ。自分で倒せる相手ならともかく、そうじゃない相手に無理して突っかかっていったってロクな事にはならない。弱い魔物ならある程度放置しても問題はないかもしれないが、放置しすぎて知らぬ間に手に負えなくなる事もあるので見かけても倒せないなら誰かしらに連絡をしておかなければならないのだ、と説明されたのはつまりそういう事だったのか、と納得する。


 とはいえ、ある程度大きくなってからは家の近所で出る魔物なんて本当に雑魚しかいないので見かけるたびに仕留めていたから、久しく誰かに連絡を、という事をした覚えがなかった。


「正直な、魔物の生態に関しては未だにあんまわかってない。普通の動物みたいに増えたりする場合もあれば、ある日突然ぽんと発生する場合もあるからだ。恐らくは魔物と一言で言っても種類とかが異なってるんだろうな、とは思っても中々それらを捕えて研究しよう、とはならんのだよなぁ」

「えっ、どうして?」


 女子生徒の声があがり、テラはがしがしと頭を掻いた。

「そんなの簡単だろ。魔物は瘴気を取り込んで強くなる。で、仮に一時的に動けなくしたとして、そいつを解剖しようとしたとしてだ。

 掻っ捌いた瞬間体内の瘴気が溢れない、という保障がない」


 そう言われれば納得するしかない。


「ある程度体内の器官がハッキリわかってるならどうにかなるかもしれんが、それすらわからないんだ。戦闘中に切ったり刺したりしてダメージを与えた時だって場合によっては瘴気を噴出する魔物もいる。

 倒せばいいが、倒さず研究に使うために中身の確認をするならある程度生きていてもらわないと困るわけだ。死んだら消えるからな魔物」


 死ねば消えるから殺した魔物の死体を掻っ捌くという事はできない。中身を調べるならそうなると生きたまま切開する事になる。しかし生きたままだと魔物が抵抗するかのように体内の瘴気を放出する場合がある。

 瘴気の量によっては研究しようとしていたこちら側が甚大な被害を受ける事もある。


 うん、詰んでる気しかしないな。


 恐らくそんな感じで結論が出たのだろう。

 生徒たちの表情は「あー……」みたいなとりあえずなんて言っていいかわかんないけどとりあえず頷いとこ、みたいな反応だった。


 しかも魔物の内部器官が全て同一であるならまだしも、魔物と一言で言っても様々な種類がいるのだ。

 一種類だけでも中身を調べたとして、それ以外の魔物には全く当てはまりませんでした、という場合今度は他の魔物を捕えて調べなければならない。

 見た目が動物っぽくとも、中身が本当に動物と同じかどうかもわからないのが魔物である。


 研究のたびに瘴気を溢れさせていれば、土地の汚染速度がとんでもない事にだってなりかねない。

 であれば、周辺に人が住んでる場所でそれをやるのはご近所と揉める原因でしかない。

 仮にそういう実験を近所から文句なくやれるとするならば、町まるごと一つ研究者たちで暮らしていて、とかじゃなければ難しいだろう。


 調べればもしかしたら何らかの打開策は見つかるかもしれないが、一度で成功するとも限らない研究。何度も繰り返す事で浄化機ですら浄化しきれない程瘴気が溢れる可能性を考えるなら、周囲の人間は良い顔をしないだろう事はわかる。仮に自分たちに被害がこない遠くの地でやってる、とかならまだそこまで反対もしないかもしれないが、誰からも反対されない土地というのは恐らくありはしないだろう。



(いや、仮にどっかの土地を植民地化して、そこに全ての被害を押し付けるみたいな事にすれば、できなくもないとは思うんだけど……)

 などとウェズンはちらっと考えたが、まぁその場合元々その土地に住んでる住人たちとの反発は必至。

 ちょっとした戦争吹っ掛けて敗戦させた上でその土地で好き勝手するにしても、いずれ不満が高まれば敗北するのが濃厚だとしても再びその土地に住む者たちが立ち上がり新たな戦に、なんて事だって有り得てしまうわけだ。


 どの土地を犠牲にしたとしても、最終的にはそうなるだろう可能性が高い。


 しかも下手に戦争に発展した場合、後々まで禍根を残すだろう事も容易に想像できる。

 復興を第一に、とかしている時点でそれをやればやらかした側は間違いなく周囲から新たな世界の敵認定を受けそうだ。


(やっぱ戦争なんてロクなもんじゃないんだよなぁ……)


 想像しといてなんだけど、マジでろくでもなかった。


「はいそういうわけで、基本的に各地の魔物を倒したりする組織、ギルドが生まれたのがこの辺りの時代ってわけだな。一応冒険者ギルドなんて銘打ってるわけだが、別段そこまであいつらは冒険しちゃいない。

 ただ、まぁ、魔物退治以外でも報酬如何で他の仕事も請け負ってくれるから、そう名乗ってるってところか」


 ウェズンが住んでた家から少し離れた町にも確かに冒険者ギルドとかいうのは存在した。

 あれを初めて見た日、うわマジでファンタジーにありがちなやつじゃん、と思ったのを覚えている。

 興味ありすぎて買い物に来た母に無理言って中を見せてもらった事もあった。

 依頼掲示板とやらには魔物退治の依頼だとかどこそこでなんとかの薬草を採取してきてほしいだとかの依頼、あとは体力的な仕事の人手が足りていないので急遽手伝えそうな人は是非! みたいなのが多かった記憶がある。


 そういう意味ではとてもありがちだと言っていい。


 冒険してないのに冒険者ギルドとはこれ如何に、と思ってしまうが、何でも屋だとか万事屋とかよりはわかりやすいので、まぁ、あまり深くは気にしない方がいいのだろう。きっと。

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