表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編

神様、僕の才能は、

作者: 水月美ツ夜

 小さいころ、外で遊ぶのが大好きだった。特にサッカーが大好きで、将来はサッカー選手になりたいと真剣に思っていた。

 でも小学二年生の時、怪我をして二度と足を使った運動が出来なくなった。動かせなくて、車いすを使った。

 当然サッカーなんて出来るわけもなくて、そこで僕は初めて挫折を口にした。


 それから僕は、救われた音楽の道に進みたいと思った。大好きだったサッカーが出来なくなっても、音楽のおかげで救われた。車いすでピアノを演奏し、作曲作詞を行う小学生が居るとバズり、音楽家、ピアニストも夢じゃなくなった。

 でも小学六年生の時、坂道で車いすをふざけて押されて手をついて、そのせいで手も動かなくなった。

 当然ピアノも音楽ソフトも動かせず、そこで初めて僕は人への憎悪を心に覚えた。


 僕はそれでも音楽から離れたくないと思った。そこで、歌を歌った。プロにも達する歌声を手に入れた。誰かがいないと動けない体でも、歌は歌えるとそういって、やはりSNSでバズった。

 でも中学三年生の時、声変わりでうまく歌えなくなった。おまけに無理して高い音出して喉を壊し、歌手としてなんてとてもじゃないがやっていけなくなった。

 当然そんな奴の歌なんて聞く人が居なくなって、気づけば歌うのをやめていた。


 僕はやっぱり芸術から離れたくないと思った。だから、口に鉛筆をくわえて絵を描いた。たとえ音楽をやれなくても、誰かに自分の思いを伝えたかった。すると当たり前のようにバズった。

 でも高校二年生の時、いじめっ子に目をつけられて殴られ、口に上手く力が入らなくなってしまった。前歯はほとんど砕けてしまった。

 当然絵が描けなくなって、僕は絵を描くのを諦めてしまった。


 僕は砕けても何かしたいと思った。五感は全部そろっている。だから僕は誰かを評価しようと思った。今までの経験のおかげで、公平な判断のできる人物として人気を博した。

 でも大学一年生の時、突発難聴と落ち続けていた視力のせいで、公平な判断が出来なくなってしまった。

 当然依頼が来ることも、僕の評価を見る人もいなくなった。

 挑戦しようとして、全部気づけば壊されていた。

 誰かを笑わせようとしてみても、上手くいかなくなって気づけばみんな離れていった。

 僕は今、誰も車いすを引いてくれなくて困っている。

 誰も僕を助けない。ぼんやりと掠れた視界で、どう頑張ろうとも動かせない手足で、何も聞こえない耳で、思ったような音が出ない声で、上手く力の入らない口で、僕は、どうすればいいというんだ。

 みんな僕を天才だと言った。君はサッカーが上手い。君は最高の音楽家だ。君の歌声は人の心を動かすね。君には素晴らしい絵を描く才能がある。君の観察眼はどの評論家にも負けない。

 そのすべてが、ことごとく潰れていったら、才能がどうのという話じゃないだろう。

 努力して努力して、やっと手に入れたと思ったとたんに崩れていく。すべてが無になっていく。

 神様、僕の才能は、努力を失うことですか?

 神様、僕の才能は、全てを無に帰すことですか?

 神様、僕の才能は、世界に絶望することですか?

 神様、僕の才能は、なにもかもを諦める心ですか?

 神様、僕の才能は、

 神様、僕の才能は、

 神様、僕の才能は、なんの、一体何のために存在するものでありますか?

 神様、僕の才能は、

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ