勉強会
よろしくお願いします
これから幼馴染ifの合流作業に入ります。
不定期ですみません
「ふう」
俺は息を吐いた。
「ありがとな、美鳥。助かったよ」
「どういたしまして、一孝さん」
目の前には、彼女がいる。亜麻色の髪、その前髪からヘイゼルの淡い瞳で微笑みと共に俺を見てくれる。
「うっーん」
彼女にも、しんどかったんだろう。ノートが置いてあるテーブルから頭を起こして、椅子に座ったまま、手を組んで上に上げ背筋を伸ばしている。
そのせいか、華奢な体つきの割に豊かなバストが押し出されて強調される形になった。季節的に暑くなり、上は半袖のブラウスシャツ。まあ下にキャミタンクトップを着ているようなので、刺繍の柄や生地の色とかが透けて見えることはない。
でも、綺麗な形をして、胸元に乗ったネイビーチェックのリボンと一緒に、
フニュン
なんて揺れているんだよ。目のやり場に困ってしまう。頭の中では、じっと見ていたいんじゃないのかと意見が強くなってきている。
いま、俺たち2人は学校も終わり、俺の住んでいる学生マンションの一階エントランスに入ってすぐにある共用スペースにいる。そこにあるテーブルに向き合って座っているんだ。テーブルの上には自分と美鳥のノートと他にも数冊のノートが散乱している。
「天野先生のタイプライター板書とマシンガントークは、聞きしに勝るね。同い年の先輩に聞いていたんだけど、それ以上だよ」
「本当ですよねぇ。私も、クラスメートに聞いていたんだけど、書き取るので精一杯です」
天野先生は生物の先生で、とにかく板書の量が半端無い。教室の前面にあるボードいっぱいに書いては消して、また書いては消してを繰り返す。更に書いたことの説明も早口で、そこからの書き込みも増えていく。
実はもう時期始まる期末試験で出る範囲の勉強を美鳥と一緒にしていたんだ。どうも俺のノートには抜けている部分が多々あるらしい。美鳥の書き取ったノートと突き合わせて直してる。
「本当、美鳥様々だよ。流石学年順位一桁だね」
そうなんだ。美鳥は学年でもトップクラスの頭脳を持っている。両親の優れた素質を引き継ぎ、普段の努力もしてたりするんだね。1学期の中間試験では惜しくも学年2番だった。
「ふふっ、ありがとうございます。一孝さんさんが言ってくれたんですよ。普段からの努力は裏切らないって」
ああっ、あれね。俺が中学を卒業する前に彼女へ色々と伝えた事柄がある。それを健気にも続けてくれたんだ。それが実を結んでいると。
「美鳥、充分、誇りに思って良いことだよ。俺は君を尊敬する」
彼女は破顔した。頬を染めて目尻に涙を溜めて笑ってくれている。溜まった涙を指先で拭いながら、
「もう、いきなり。褒めてくれて。嬉しくって涙が出てきちゃいましたよ。でもね、一孝さん。貴方のおかげでもあるんですよ」
俺も恥ずかしくなって、しばらくテーブルを見つめていたよ。頬が熱いや。
「テストといえば、一孝さんだってクラスでは一桁だって聞いてます」
「そうか、じゃあ、俺の目標は美鳥だね。期末試験頑張らないとな」
「光栄ですね。私も負けられません」
今度はお互い赤くなった顔を見ながら笑い合っている。
バトミントン馬鹿だった俺は首の怪我で、そっちの未来は絶たれた。でも、学校の先生になるという目標を見つけたんだ。そのためにも上に行けるように頑張らないとね。もちろんバトミントンは続けるけど。
さて、今日は俺のために尽力してくれた美鳥のために、
「今日のお礼代わりに、お茶でも淹れるかね。美鳥は珈琲で良いか?」
先日、美鳥の家で美味しい珈琲を淹れて飲ませてくれた。彼女は、そっちが好きじゃないのかな。
「いえ、できたら紅茶で、一孝さんの淹れた紅茶も美味しいから」
美鳥が嬉しいことを言ってくれる。両手を合わせて綻んだ顔で頼まれた。
俺は珈琲も紅茶もどちらも好きだけど、どちらかっていうと紅茶党。
俺は椅子から立ち上がり
「承りました。お姫様」
一礼して共用スペースにあるキッチンコンロに向かった。
すると、そこの壁にある掲示板に1枚の張り紙があることに気がついた。
'縁日 花火大会'
の文字が目についた。そうか、そんな時期なんだ。このマンションの近くには神社で、熱くなるこの時期に屋台が並び花火も上がるの縁日があるのを思い出した。
このマンションで暮らす前に家族で住んでいた家からは距離があったしバトミントンに打ち込んでいたから、それほど意識していなかったけど、今年はすぐ側だし、彼女もいる。俺は振り返り、
「お姫様、丁度、試験も終わった後に花火大会があるそうです。ご覧になりませんか? お供しますよ」
「えっ、そういえばですね。もちろんです。一孝さん、私を連れてって下さい」
美鳥まで立ち上がり、笑顔で返事してくれた。
「承りました」
すると、美鳥は下を向いてブツブツと独り言を呟き出した。
「そうだ、ママに話をして、あれを…」
よく聞き取れなかった。
ピロリン
突然、スマホのメールの着信音が鳴る。ちなみに俺宛では無い。
「ママからだ」
美鳥は、スマホを取り出して画面をポチポチとタップしていく。
ピロリン
「ママが買い物がてら、私を迎えにきてくれるって」
「なら、それまで紅茶を楽しみますか」
「うん」
美鳥とのお付き合いは、ちゃんと美鳥の両親とも話ができている。こうやって2人だけ会うことだって許されているんだ。実を言うとお互い小さい時から、こんなものだったんだね。
迎えが到着するまで、インド産ニルギリのクォオリティーシーズンの逸品を2人で楽しみました。




