明日(美鳥)のために、その1
よろしくお願いいたします。
美鳥がパウダールームに入ってからも、美華姉のメールがスマホに届いている。ベッドに腰掛けて読んでいた。
「一孝さん」
ちょっとだけは元気がでたのかな。声に元気さが灯る。
通路にはパウダールームを出た美鳥が立っていた。真っ白いローブを羽織り、ポツンと佇む。
胸の前で手をにぎり、なにが言いたそうに、微かに唇を開いては閉じてと繰り返している。
でも、俺か話しかけようと美鳥を見ると、手で顔を隠したり、体の向きを変えたり、ドアを開けたりしてパウダールームへ逃げようとするんだよ。
フッ
嘆息して美鳥に話しかける。
「そろそろ、こっちに来ないか? 疾しいことなんかしないからさぁ。体は冷えないか?」
「でっ、でもぅ」
未だ、彼女は躊躇している。俺はなにもした覚えはないのだけれど、
「そうだ、美鳥。美華姉からメール来てるよ」
「えっ! お姉ちゃんから?」
そう言って、やっとの事、こちらに来てくれた。スマホをタップして、メーラーを表示させて、近づいてきた美鳥に渡す。すぐ画面を見るかと思ったけど、そのまま俺を見る。
「ん?」
美鳥は意を決したように話してきた。
「一孝さん、私って匂いませんか、変な匂いしませんか?」
縋るように囁くように聞いてくるんだ。
俺は思いっきり息を吸った。
「もう」
嗜むように美鳥は俺がきているロープの端を掴んでくる。
「シャンプーかな? ボディーソープか? フローラルの良い香りしかしないよ」
にっこりと笑って答えてやった。
「ありがとうございます」
美鳥は口元に微かに笑みを浮かべる。目を閉じて胸に手を当てて嘆息していた。
ほっとしたのだろう。肩から力が抜けて、表情も柔らかくなった。
「そうだ。お姉ちゃんからのメール」
手に持っている俺のスマホを見ようとしだが、
「画面、真っ暗になっちゃった」
「フッ、早く見ないから」
笑いを堪えて、少し吹き出してしまう。そして携帯を返してもらう前に、手でベッドをぽふぽふと叩いて、
「いつまでも立っていないで座らない?」
「うん」
美鳥は微笑み、そう答えて徐に座ろうとした。座り側に腰に手を回して引き寄せて、俺に寄り添うように座ってもらう。
「!」
「うん、この香りだぁ。いつもと違うけど良い香りだね」
俺は美鳥の横顔に、唇を近づけて話しかけた。
美鳥は、体を小さく震わせると俺に体をよせて来てくれた。頭を肩に預けてくれる。
そうして美鳥からスマホを受け取り、ぼちぼちっとして操作をしてから返してあげた。画面を見た美鳥は、
「お姉ちゃん」
と一言洩らしてから、美華姉からのメールを読んでいった。
画面をスクロールして、たまにビクッと頭を振るわせ、肩を震わせていく。
そんな美鳥の横で俺はゴソゴソと手を動かしていた。
美華姉からのメールを思い出しながら
……………………<携帯>
明日の、いや美鳥のためにその1。
キャビネットに麻の袋も入っていただろう?
中にホッカイロが入れてあるニットケースの袋が二つ入っている。
ホッカイロを取り出して開封してくれ。
そうしたら、それをニットケースに戻すんだ。
そして
手元のものが出来上がったんで、美鳥を呼ぼうとしたんだけど。
いつの間にかー美鳥は腰掛けていたベッドを上がり、足を正して正座をし、スマホに向かって土下座をしていた。
「美鳥さんや、あなたはなにをしている?」
彼女は表をあげた。頬は染まっている。
「あまりに、御もっともな、お言葉が書いてあったんですよ。土下座してしちゃいました。えへっ」
「ブファッ」
俺は吹き出した。
「なに?」
俺の態度に彼女は訝し目で見返してくる。
「ごめん、ごめん。実は俺も同じ様に土下座したんだよ」
ポカンとして、それを聞いた美鳥の顔が笑いに変わる。
「なんなんでしょう。私たちって似たもの夫婦になるですね。えっ? 夫婦!」
彼女は自分の言葉に赤面した。俺も恥ずかしくてソッポを向いてしまった。誰も見てないのにね。
そんな美鳥に俺はニットケースを渡す。
「これは?」
「美華姉から言われたんだよ。渡してくれって。お腹につけるんだって」
「お姉ちゃん、こんなものまで。一孝さんもありがとう」
両手で受け取り、彼女は微笑むとそれを下腹部に当てていった。
「あったかい」
リラックスした美鳥の顔を見れた。
「ベッドに上がったついでに、体を横にしたらどう? 横臥すると良いって美華姉が言ってたね」
「そこまで話してくれてるんですか」
美鳥の顔は、驚きと喜びでごちゃ混ぜになっていった。
コロン
そして俺の言った通りに、ベッドに横になり寝そべった。
俺に背中を見せて横になっているものだから、ロープを着た体の線が出てしまう。見えてしまう。ご立派な瓢箪でした。
いかん、いかん。
美華姉のメールには続きがある。
……………………<携帯>
もう一つあるだろう。
それを背中の腰の下、お尻の少し上に当てるんだ。
お前が当ててやれ。
こうして子宮を表と裏から挟む様に温めるんだ。
まあ、お前に言っても感覚的にはわからないよな。
まあ、兎に角やってくれ。
そういえば、多分、お前の前に美鳥の尻のラインがみれるだろっ。
しっかりと張っていい形なはずだ。見れるっての彼氏の役得だぞ。
まあ、ご褒美だと思ってくれて構わない。
まあ、それ以上はす る な!
美華姉!
逆に意識しちゃうじゃないですか? モヤモヤが増えて行く。
我慢して、ニットケースをお尻の上あたりに当てる。
「ハフゥ、あったかい。ポカポカとあったかいですね」
美鳥の背長越しに、嬉しがいっぱいの声が聞こえて来た。
はい、この声は、ご褒美だね。
ありがとうございました




