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年下幼馴染は同級生 でも1/3は俺が嫌い  作者: つむら湯
2度目の登校。再会、出会
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俺の城の玄関の中には

よろしくお願いします

美鳥は教室を飛び出し、あの変なのも消えてしまった。もう俺しか残っていない。帰ることにした。




 帰りに薬局スーパーに寄ってみた。最近増えているお店の形だ。種類もたくさんあるし、なによりも安いのが良い。行き先はチョコのコーナー。


 チョコレートの種類が多いよな。カカオの多い大人向けのものが上、ミルク成分の多いものは下の段に置かれている。その中でも目的はステック状のアーモンドクラッチチョコ。


 段々に探してみるとあったあった。3箱を買う。実は美鳥が好きだったりする。ついでにピーナッツ入りのチョコ大袋1袋買い。有料になったエコバッグに入れて学生マンションに帰っていく。


 自分の部屋番の郵便箱を見てみると、宅配の不在通知。外にある宅配BOXに預かり品ありということだ。


 送り先をみると九州の叔母さんだ。中を見ると水。先日電話で話をした時に、こっちは水が薬臭いと会話していたからなぁ。送ってくれたのだろう。ペットボトルいりの活性水素入りのミネラルウォーターだ。箱で送ってくれた。見た目より重量がある。BOXの備え付けの台車に載せて自分と部屋に。


 さて、覚悟を決めてドアを引開けた。




「おっかえり、おにぃ」




 声と一緒に10歳ぐらいの子供が走ってきて跳び付いてきた。


 が、ドアの境の線のところで空中停止。抱きつこうとしたができずに。両手は前にだらしなく伸びた状態。


 亜麻色のおかっぱ頭にふんわりプルオーバーとラベンダーのジャンバースカートをきた女の子。ただし履いている白いソックス 袖から出ている手、髪の先の色が透けている。形がわかるのだが色がない。透けているのだ。





 はじめて見たのは、美鳥がこの部屋に来た時。


 激怒している美鳥に激しくドアを閉められ後を追って外に出て帰ってきた時、玄関を開けると三和土の先にいた。ベタッとヒラ座りして二ヘラっと笑っている。


 スカートから出ている足と足の間に挟んで突いている両手の色がなかったのだ、膝から下も。


 背筋にゾワッと電気が走り、足が震え、顔の血の気が惹いた。両手で口を押さえて大声で叫ばなかったことを褒めてあげたかった。


 玄関から外に出たかったが足が動かない。腰から力が抜けズルズルと座り込んでしまう。ドアの凹凸が背中をゴリゴリと摩って痛い。


 痛みで気を取り直し、彼女を見た、記憶に引っ掛かる。




「お前、みどりか?」


「そうだよ。コトリは美鳥。10歳です。もう少しで11だよ」




 そうだよ。このくらいの時、美鳥は自分のこと'コトリ'と言っていた。名字を短くして。その前は'ことこと'だよな。




「じゃ、ことり、なんでこんな所にいるんだ?お前の家は違うだろ」


「家じゃ、お兄ぃいない。隣の家にいるお兄ぃいない。公園にも学校にもいない。いないのぅ」




 表情が沈んできている。




「コトリ、嫌われたかなぁ。なんで と聞こうとしてもいないの。教えて、と言おうとしてもいないの。どうして、どうしたら、また会ってくれるのかわからないの」




 大きな目が潤み出した。透けているところが広がってる。




「泣いて、ずっと、ずっと泣いてたら 」




 頭を下げてしまう。




「目の前のドアが開いて、今ね、お兄ぃがいるの」




 すっと顔を上げ、そして立ち上がり俺のところに近づいてきた。しゃがみ込んで顔を覗き込んでくる。後ろがドアで逃げるに逃げられない。


 手を伸ばして頭を抱え込んでくる。


 あれ、抱えられている感触がある。手を腕を胸を感じる。肉の感じがわかる。




「もう、どっか行くのダメ、だめだからね」




 コトリの悲しんでいる表情が微笑みに変わっていき満面の笑顔になった。手を首に回したまま体を左右に振っている。




「いっしょにいよぅよ。あそぼ、遊ぼう!何して遊ぼう」




 そして俺の手を取り玄関からダイニングへ引っ張っていかれた。


 もう、覚悟を決めてコトリの言われた通りにした。


 しかし手の感触もあるけど握っている指とかは透けていたるんだよなあ。


リハビリと筋力強化の目的で買ったバランスボールで遊ぼうとするのだがすり抜けてしまった。でも俺がボールでトレーニングしてる時に背中に乗ったり腹に乗ったりして遊んでいる。


 しかし、お腹が空いたと買い置きのチョコビスを食べられた。


 疲れたのか船を漕ぎ出したので、抱き上げてベッドに移してあげる。


 横になった上に毛布をかけたけど透過して体が出てしまった。何度やっても結果は同じだった。


 仕方がないのでエアコンの暖房を動かして部屋をあっためて寝た。俺は床にごろ寝。翌朝、俺の強張った体に抱きついてコトリは寝ている。


ありがとうございました

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