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私たちはGじゃない!

   キー

スキール音が耳に突き刺さる。

 マゼンタがローラーブレードのブレーキを路面に擦り付けて止まる。ブレーキが踵にあるからつま先をあげる姿勢になるんだ。


「なんか、大きな音がしましたけど何かありましたか?」


 マゼンタがライムと川合さんの間に、体を割り込ませて、


「すいません。この娘が何かしましたでしょうか?」

「おねっ、…マゼンタ違う、違うの!」


 川合さんへ突っかかっていきそうな勢いのマゼンタをライムは後ろから抱き抱えるようにして止めている。


「こちらは、川合さん。クラスメートなの!いつも仲良くしているの」

「えっ、そうなの』


 マゼンタから緊張感が抜けたのを感じて、ライムは、ハグをやめていく。


「ごめんなさい。ライムが何かやらかしたかと勘違いしてしまいました」

「私、そんなにドジじゃあないもん」


 そんなーやりとりを見ていた川合さんは呆気に取られた顔をしていた。そのうちに、ライムとマゼンタを交互に見て、


「美鳥が色違いで2人になってる。ねえ、貴方たち双子だったの?」


 恐る恐ると聞いてきた。


「私たちって、そんなにそっくりなの?」


 川合さんはコクコクと首肯している。


「実はそうなんだ。姉妹なんだよ。でもね歩美」

と、話しているのは赤いブラウスを着ている娘。

「ほんとは、私が美鳥なんだよー」

「えっ」 


 いつの間に入れ替わったんだ。声も同じに聞こえた。驚いた俺はライムとマゼンタを交互に見てみる。

 何時だ? メイクの手直しで、俺の前からいなくなった時か?

しかも、なんで?


 俺の頭の中をハテナマークがグルングルン巡っている。

赤いリボンの娘は、じっと俺の目を見てきてる。


「一孝さん。信じてわたしが美鳥だよ」


グリーンのブラウスの娘は手で口を塞ぎ、頭を左右に振っている。小さい声で、


「違う、違う。わたしが美鳥なの、お兄ぃ」


 そんな仕草の2人を見て、やはりこっちが美鳥と言おうとすると、


「私は、グリーンの服の娘に1票かね」


 川合さんが何かを目の前に何かを置くような仕草をしている。


「じゃあ、俺も」


 川合さんを真似て、目の前に置く仕草をする。


「ドン」


 声を上げたのは赤いぶを着たマゼンタだった。


「ちぇー、うまく美鳥に化けたつもりだったんだけどなぁ」


 マゼンタが両手で天を仰ぐみたいに開いて、諦め顔で、


「ごめんな、美鳥。悪ふざけがすぎたね」

なんと美華姉が美鳥に頭を下げて謝った。で、川合さんの方へ向き直して、


「わたしが姉の美華って言います。ようこそ。いつも、ウチのライムがお世話になってるみたいで」

「いえいえ、こちらこそ、楽しまさせて…仲良くさせていただいてます」


 マゼンタが破顔する。 


「良かったよ。貴方みたいなお友達ができて。あのボッチな美鳥にねえ」

「もう、ボッチじゃないし」


 そうこう言いあっていると青いリボンとブラウスを着ているシアンさんまできてしまった。


「彼方たち、何、戯れあっているの! お仕事は?」


でも、みんなの顔を見渡して、



「何か、あったの?』


 聞き出しても無駄と感じたのか。ライムの側までくると顔を覗き込んで、


「もう、動き出して大丈夫?」


 なんて心配そうに聞いている。


「今度は青! 美鳥って実は三つ子なの?」


 またまた、彼女は驚いているのだけれど、なんか周りをキョロキョロと見だす。


「川合さん、何かさがしてるのか?」


 なんか不審な感じがしたんで、俺は川合さんに聞いてみた。


「いえね、3人目の美鳥がいるってことは、4人目がいるんじゃないか探してるんだよ」


 俺は思わず吹いてしまった。 


「それはないよ、川合さん」


 彼女は指をフリフリ講釈する。


「1匹見つけたら、あと「100匹はいるっていうでしょ」



「「「私たちはGじやなーい」」」


3人に抗議されて、流石に川合さんは縮こまってしまった。



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