ダイナーガールズ レッツ ダンシング
マゼンタが鼎さんに話をしている。
「トレイを3枚借りられますか?」
「いいけど、何に使うんだい?」
鼎さんはキッチンカーに戻りながら聞いてきている。
「もちろん、これからのダンスに使うんですよ」
「なら、はい」
キッチンかーから3枚を取り出してマゼンタに渡していた。
「一孝、ちょっと」
指先をクイクイっと俺を呼んでいる。近づくと首根っこに腕を回され、キッチンカーの陰になるところに連れて行かれた。フニっと何か当たるけど。うん、美鳥の勝ち。
「一孝、頼みがある。次のダンスを美鳥のスマホで撮影してくれないか」
「いーですけど、なんで? 家でタブレットに撮ってましたよね」
マゼンタは更に顔を俺に近づけて、耳元で囁く、
「いやあ。美鳥のやつ、………」
中身を聞いて、マゼンタの方へ顔を向けた。近い近い、近すぎた。
「流石に美華姉ですね。お姉ちゃんですねー」
すると、表の方から、
「お姉ちゃん、一孝さんと何やってるんです?」
ライムが仁王立ちして詰問してきた。
「いくらなんでも、近いです。いちゃつきすぎです」
俺たちは、パッと離れた。
マゼンタは、後頭部をカキカキして、
「いやー何。ストーカーみたいな奴らいるだろ」
「うん、いる」
「あいつらの対策頼んでいたんだよ」
ウソである。
でも、ライムは、
「そんなこと、話すのにくっついてコソコソはないですよぉ」
プンスカが止まらない。
「わかった、わかったって、取りはしませんて、美鳥の宝なんだろ」
「お姉ちゃん!」
マゼンタが、キッチンカーの陰から出つつ、
「はい、トレイ。使うからね」
広場のオープンスペースに歩いていく。
「ライム、始めるよ」
「一孝さんも、しっかりしてくださいね」
後についていった。
スペースではシアンさんが待っている。
「やっときたぁ、何やってなの」
「ハイ、トレイ。作戦会議」
そして、スペースに3人が揃った。俺は急いでキッチンカーに行き、さっきマゼンタから聞いたところにあるライムのスマホを預かって3人の前というより、ライムの前に陣取った。
マゼンタがセンターになるように、ポジショニングして、彼女は手を上げ、口上を始める。
「皆さぁーン、ダイナーズレストラン、シェインズ イン ハーバープレイスへ、ようこそ」
マゼンタは上げていた手を下ろしつつ、両手を左右の腰へ持っていく。
「ただいまより、アメリカンダイナーガールズ、scromtic RGBのオープニングダンスを披露します。撮影は自由ですが、ここには食事を楽しみにした方が大勢います。くれぐれも邪魔しませんように。お客様も楽しんでます。私も楽しみたいですね。ぜひご協力お願いします」
口上がおわり、マゼンタは下がり、シアンが前に出て、センターを勤めるようになる。
「ミュージックスタート」
の掛け声でキッチンカーに備え付いているスピーカーからBGMが流れだす。
「ワン・ツー・1-2-3 GO!」
腰に拳を載せて、肩を降り出して、ウォーキング、両手を左右にスイングさせてトップに上げたところでスピン。
リズミカルな音楽に3人は合わせていく。片手に持ったトレイが陽を反射してキラキラと周りに光を飛ばしていく。
俺は、持っているスマホをライムに向けて撮影する係になっている。だから、常にライムを目線で追っかけているんだ。
美華姉に言われたんだ。
『ライムは上り症気味だからな、アイツのスマホで撮影するフリをしてあいつをずっと見ててやってくれ。そうすりゃあ、お前を意識してライムは、いい動きになるから、好かれてるね。ヒューヒュー』
確かに、ライムは、俺を見てるというより、俺にダンスを見せつけているように見える。
その内にセンターにライムが入り、観客たちをシューティグする振り付けになった。
ライムは俺に狙いをつけて撃つ振りをする。俺はそれにサムアップとスマイルを返してやった。
ライムの顔に笑顔が出始め、ダンスにもキレが出てきたんだ。
流石、お姉ちゃん、美鳥をよく知ってるよ。そうして、3人でダンスを続けていく。最後に両手を広げてロールしていってクロージングへ。
「ようこそ、レストラン シェインズ イン ハーバープレイスへ! アメリカンダイナーガールズでしたぁ」
拍手が起きる。3人のダンスに観客の惜しみない拍手が送られていった。
最後に「皆さーん、ご注文よろしくねぇ」
マゼンタの口上で締めくくった。笑い声も上がった。3人はシェインスのキッチンカーの裏に引き上げた。
「お疲れ様」
俺も含めースタッフ全員で迎えました。
「一孝さん、疲れましたぁ」
ライムは、俺に抱きついてくる。
「ダンス良かったよ。かっこ良かった」
「ふふん」
頭を撫でで、褒めてあげたよ。




