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ユー・ガット・メール


何かが弾ける音とモーターが回り始める音がしている。

シアン、マゼンタ、ライムにディフューザーを向けて、撮影の手伝いをしているんだ。

3人は椅子に座ったり、伝票を持ち、オーダーを受けている姿だったり、トレイを持って歩く姿だったりを奏也が撮影していく。


「オーナーの守道とは大学以来の付き合いでね。あいつが独立してこのレストランを始めるっていうんで、パンフの撮影ぐらいやってあげるよって話から、いつも撮っているんだ」


奏也さんは撮影を続けて、色々と指示を出しながらも話をしてくれた。


「僕はカメコだったんだよね。コスプレやってるのを撮影する。美桜ともそうやって知り合って、こ

このモデルも頼んだりしてたんだよ」

「美桜さんもレイヤーなんですか?」

「友達に無理やり誘われたって、まあ、その友達つっていうのが守道の奥さん。いやぁ楽しかったね。あの頃。あぁ、今も楽しいよ。美桜と娘たちを一緒にとれるんだからね」


言葉尻からも奏也さんが笑っているのがわかる。


「君も美鳥と一緒に楽しんでくれると親冥利に尽きるかな」

「奏也さん。俺も楽しいですよ。美鳥の笑顔がこんなに見られて」

「ならっ、よかったな」



「ダイナーレストラン シェインズ ダイナーガールズで〜す」


ビデオでの撮り終わった。そうして一通り室内での撮影が終わって休憩に入った。


俺は、モデルになっている3人に汗とりのリフレッシュシートとドリンクを渡していく。


「シアンさん、お疲れ様です」

「ふふ、ありがと」


「ライム、お疲れ様」

「ありがとう、一孝さん。どうでしたかわたし?」

「よかったよ。硬いのがとれたっていうのかな、はじめに比べて表情もほぐれてるし、笑顔も眩しかったよ」

「一孝さんのおかげです。いっぱい撮ってくれたから、慣れちゃいました」


美鳥がニコニコしながら俺に話してくれている。さっきまででも笑顔も満腹と思ったけど、もっと笑顔の御代わりが欲しくなったよ。


「あっ、これリフレッシュシート、汗をとっておいてね?」

「えっ匂いますか?汗」


美鳥は腕を上げ脇の香りがあるか確認している。


「違うよ、汗が流れる前にシートで吸収しておくんだ。メイク崩れるからね。」


と言いながら、俺はライムの耳元に唇を寄せて、


「美鳥の良い香りがする。とても甘いんだ。ドキドキしてるからね」ち


と囁いてあげる。


「もう一孝さん」


美鳥がポカポカと叩いてきた。痛くない。照れ叩きだね。


ふと、シアンさんを見ると俺に笑顔でサムアップしている。


「ナイスよ。一孝くん」


 

 さてさてマゼンタさんはと、探していると壁際にいた。じっと手元に持つスマホの画面を見ていた。肩を落として寂しそうにしている。パッと見てわかるぐらいだった。強気な言動で元気な美華さんがどうしたのだろう?


「マゼンタさん、リフレッシュシートです。汗をかいてないですか」


 とマゼンタさんに近づきながら聞いてみた。


「あっ、ありがとう。気が利くじゃないの。そうそう美鳥の方は?」

「もう渡してあります」


 一瞬、元気な顔を見せたんだけど、また眉尻が下がってシュンっとなっている。


  もうしょうがないな。


「話変えるけど、美華さん。和也さんって誰なんです。この前から名前だけは何度か聞いてるんですが」


 俺の後ろにいたライムが、小さい声で抗議してきた。


「一孝さん。ダメですよ。彼氏の和也さんから置いてけぼりにされて、お姉ちゃん落ち込んでるんですから」


 美鳥にまあまあと手のひらで制して美鳥を止める。


「会ったことないんで?」

「あいつは、    生意気なやつだよ」


 ポツリ、ポツリと美華さんは話し始める。


「どこぞのボンボンなのね。キャンバスでいきなり 『 可愛いな。付き合え』 だよ、思いっきり凹ましてやったよ。それからは下僕扱いしたんだ」


 言葉を紡いでいるうちに美華さんに元気が出てきたと思う。表情が違うんだ。


「背丈は、一孝と同じくらい。肩幅はあいつのほうがあるかな。何をやるにもしょーのないことやって、どついているのだけど、ちょっと気になり出したら止まらなくなってた。大切な人になってたよ」


 美華さんが微笑んでいる。その微笑みに俺も美鳥も言葉が出ない。綺麗なんだ。元気も出たようだ。

 しばらく、美華さんの話が続くけど、中身は関係ない。美華さんが和也さんのことを思い出して、彼女の心に元気が戻れば、それで良いんだ。



 すると微かな振動音に続いて着信音が美華さんの手に持つスマホから鳴る。それも2つ。

画面を覗いた。美華の目が見開く。


「早速、和也からだ!  え〜となになに」


 美華さんは笑いを噛み殺しながら画面のをスクロールさせていく。画面をタップして、また読んでいく。


「えー!」


 彼女は驚きの声をあげて美桜さんの元に走っていってしまった。なんか話をしだした。美桜さんにスマホの画面を見せている。そのうちに美桜さんに抱きしめられている。そうして美華さんはこちらに戻ってきた。因みに美桜さんは奏也さんのところへ行っている。


「なんだったのかな?」

「だね」


 こちらを見る美華さんの顔を見ると、良い連絡なようだ。微笑んでいる。心配はなさそうだね。隣にいる美鳥もそう感じたようで、安堵の表情をしている。


 俺たちの元に来ると美華さんはスマホの画面をかざしてきた。


「ジャーン、このバーコードはシンガポール行きファーストクラスの航空券なんだよ」


 美鳥も俺も訳がわからずに、美華さんの顔とスマホの画面を往復してみている。


「香港にいる和也から連絡が来たの。『俺たちシンガポールに移動するから、私にも来いだって』 航空券も送ってきたよ。きゃあァだよね」


 美華の彼氏って、かなりのセレブなんだ。話の通りだった。ファーストクラスをリザーブするなんて。


「お姉ちゃん、行くの、いつ行くの?海外ならパスポートとかはあるの?」


 急転直下の状況で美鳥はアワアワしながらも美華さんに聞いていく。 


「それが今夜23時、羽田の国際便」

「本当に急だねぇ」


 美鳥も呆れている。


「海外だとパスポートは? ビザもいるんじゃないの?」

「バスボーはホテルにおいてあるサムソナイトに入れっぱなし、シンガポールはビザ要らないし」


 美華さんもウキウキと とびっきりの笑顔を振りまきだした。

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