人間ハザードが来た。その2
「体操服を着ているのお前だけだよ。またパフォーマンスでもやるのか?」
副委員長の桐谷に言われてしまった。確かに俺1人だけ着替えている。ましては今日は文化系の部活動説明会だ。運動するわけではない。
「これが終わった後の頼まれごとだよ。高梨…先輩からの」
「羨ましい限りだなあ、あの先輩からだぞ。昨日のラリーもすごかったしなあ」
「代わろうか?」
「滅相もない、役者が違いすぎるよ。ああいうのは見てるだけで充分、最後のはご褒美だしな。風見よくやった」
「本人の前ではいえないね」
「だね」
「なんのこと」
後ろから高梨本人が来た。今日は普通にブレザーにスカートだけどスカートからジャージのハーフパンツが見えている。桐谷と、がっかりのアイコンタクト。終わったらすぐに部活動を始めるのだろう。
「いえ、何も。高梨先輩キレだなーって話してたんですよ」
「あっ、ありがとうね」
和かに話をしているが目つきが変わって、
「昨日のは、お墓の中まで持っていきなさい。ネタなんかにしたらお仕置きよ」
「そっちもご褒美です」
「ヴァカ」
バレてたか。
「風見君、終わったらよろしくね。すぐ準備始めるから」
「で俺は何を」
「あのヴァカのお守り、チョーと遊び、いや、試合をね」
「俺で良いのですか?2年試合から離れてますよ」
「それで、私とラリー続けられるんだから大したもんよ」
「高梨先輩の技量ならできたわけで」
「謙遜しない。兎に角見てあげて。あのヴァカのためでもあるんだから」
「あー、情でも……」
その後の言葉は続けてられなかった。真剣な顔をし俺を睨んできたから。
「これで部活動説明会を終わります」
「じゃあ、みんなぁ、ここで解散になりまぁす。気をつけて帰ってください」
美鳥の声。しっかりいいんちょをやってるね。と思いきやいち早く体育館を出ていくのを見つけてしまったょ。
一年生が三々五々帰っていった体育館に、
「早くネット組み立てて」
高梨の声が響く。さすが最上級生、貫禄があります。そのうちに体育館の出入口からやつが入ってきました。
「なんだ、明日菜。頼みがかるからって、来てやったぞ。水臭いではないか」
「あー、ありがとう」
なんか返事がフラットになってる。
「風見君と試合をしてほしいんだ。あんたなら、どれだけ体が鈍ってるわかるでしょう」
「俺ぐらいの力量ならな。……なぁに風見と試合だと。なんであいつと試合しないといけないんだあ」
「先輩としての度量を見せてほしい訳だよ、今後の資料としたいんだよ。お、ね、が、い」
「かざみー、ありがたく思えよー。全日本選抜の力を見せてやる」
「ありあっとます」
俺は姿勢を正して最敬礼をした。
「これで部活動説明会を終わります」
「じゃあ、みんなぁ、ここで解散になりまぁす。気をつけて帰ってください」
立ち上がってみんなに告げていく。
「歩美、ごめんね。行くところあるから先に行くねぇ」
私いといえば、ほぼ先頭でそそくさと体育館を出ていく。そしてトイレに併設されている化粧台の鏡に向かっていく。
「さてと」
前髪をクリップで止めて、洗顔ムースを使って洗っていく。吸水タオルで水気を取ってから、化粧水を使っていく。手のひらに500円ぐらいの大きさでのせ、指で額、頬、顎、鼻とにつけていく。それを顔の中心から外に向かって伸ばしてプレス。指をつけて離すとミシッといった、OK。顔だけじゃなくて首、首筋にものせていく。その後は浸透するのを待つの。焦らない、焦らない。
5分を過ぎた頃に違う容器を出す。乳液を手のひらに10円硬貨ぐらいのせて広げていく。初めは頬から内側から外に円を描くように伸ばしていく。後は額、顎、最後にお鼻。なんか潤いを感じできたな。これで下準備終わり。外すのもあれなんでクリップはつけたまま、トイレを出て階上へ登っていく。
お兄ぃは試合の時はこんな感じなのかな、コートにいく高揚感。
あっ、また見かけてしまった、あの3人の男たち。なんか私を見てヒソヒソ。視線を合わせないように階段を登っていく。心は冷えたけど、冷静になれたんじゃないかな。
階段を登りお姉様方がいる教室へ。
ドアを開けると皆様方がいらっしゃいます。
「お待ちしておりましてよ。さあ、始めていきましょう。こちらにお掛けなさってくださいな」
胡蝶様は鏡の置いてある机を指し示してくれた。奈央様が椅子を引いてくれる。由乃様がコンパクトやらペンシルやらブラシやらを机の上に用意して頂いてくれている。椅子に座って机に置いてある鏡を見た。
「これって3面なんですね。私は丸いの使ってます。LEDライトもある。ハリウッドミラーでしたっけ」
「良くご存知でいらっしゃる。さあ始めましょう。昨日は手早くBBクリームを使いましたが、今日はしっかりとファンデーションからやっていきましょう」
「はい」




