週の始まり 放課後 その2
「おめぇ、何、突っ立ってんだ。そんなとこに隠れて」
「どなたですか?」
「怖い、怖い。泣いてる女の子がいるのに素通りはいけないだろ」
多分、上級生だと思う。長い髪は脱色したようなライトブラウン。後ろで一纏めにしている。一応、規定に沿ったブレザーを軽く着崩し、スラックスのポケットに手を入れた立ち姿。気だるそうに見えてしまう。日本人には珍しい青みのかかった瞳で見つめてきている。
「……」
「その瞳で亜麻色の髪。俺も大概だがお前もだな。どこぞの天使かねえ」
「褒めたって何も出ませんよ」
褒められて少しだけど気分がほぐれた。
「少しは落ち着いたか。威殺してやるみたいに睨みつけてきたからなぁ」
諌めるんじゃない落ち着いたか語り口に拍子抜けしてしまう。
「いじめられて逃げてきた訳じゃなさそうだし、悔し涙かな」
かっとして相手睨みつけてしまった。
「男がらみか?」
「だとしたらどうだっていうのですか。お兄ぃに認めてもらおうと頑張ってきたのに」
壺支を突かれてしまって心内を吐露してしまう。
「同い年、パートナー? 私だって一緒にいた時間なら負けない!」
まあ、後ろに隠れていた時間なんだけど、思いはずっと抱いている。
「今、流行りのNTRかい。なら、」
「なら、なんですか?」
「着いてきな。もっと綺麗になって相手を見返してやればいい」
「なっ」
「俺っちの周りには、色々と飾る奴らが多くてな。見てるだけでも勉強になるぜ」
焦っていたのかもしれない。勉強という言葉は引っかかるけど、
「教えてくれますか。私はお兄ぃにもっと見てもらいたい。私を認めてもらえれば良いの。あの人との勝負じゃない」
「いいねえ。『勝負じゃないか』気に入ったよ。…お兄いって兄弟かい?」
ちょっと力が抜けてポカンとしてしまった。
「ちっ、ちがうぅ。慕ってる人だよ」
「いやね、禁断の営みの手伝いかと」
「だから違うって言ってます。早く連れてってください」
4階まで上がった。やっぱり最上級生だったんだ。彼について教室に入ると3人の女の先輩が談笑している。
「あんたたちに頼みがあるんだが良いかね」
「下級生連れてきて、なんですか」
長い髪をふんわりと内側ロールにしている人が返事をする。
「こいつを磨いて欲しいんだ。素材としては良いだろ」
「いきなりなんだから。あれ!、この子、もしかして昇降口の天使じゃないの?」
「なに、それ、うけるぅ」
「今朝、笑顔がいい娘が下駄箱に降臨したって男どもが騒いでたんだよ。聞いてのと一致する」
「なんか騒ぎになってしまって、すみませんでした」
「いいってヴァカどもが勝手に騒いでるだけなんだろから」
「気にしない。気にしない」
「確かに素材としては極上だね」
「お肌の手入れだけで、ここまでなんて、歳をかるじるなぁ」
「二つしか違わんと」
「あんましコスメ持ってないから、手持ちでパパッといこう、良いね」
「お願いします」
BBクリームで下地を作り、CCクリームて肌色を調整。薄くアイシャドウをしてアイライン、アイプロウを書いていく。最後にリップを塗り、唇の真ん中に濃い色をを載せて終了。
「インスタントにしては良い出来だわ、素材と手入れが良いのね。はい鏡、どう?」
鏡に映った自分の顔を見てビックリ。ピントがあったというか、いつもよりキレがある。
「気に入ったなら、明日もやろう。小物やコスメも増やすから。あーなんか目覚めちゃいそう」
「いいんでしょうか? 私もやる気出ました。是非お願いしますわ」
「あとは、ビューラで眉を、マスカラもして、頬はチークかな。楽しみは尽きないね」
「お手柔らかにお願いします。先輩ありが、あれいない」
「見ていて飽きたのね。いつもそうなのよ。もっと関心持てって言ってるのに」
私はお姉様方に挨拶をして帰って行った。
家に帰ると、ママに、
「なんで化粧なんてしてるの?」
「先輩がしてくれた」
「なんでまた」
「素体研究だそうで」
「美鳥には早いかなぁ。しなくても若さで綺麗なのに」
やっぱりママに相談しなくてよかったかも。勉強できたよ。あれっ。
就寝前ケアでクレンジングでしっかりおとし、化粧水をたっぶり、乳液で保水をする。
早めに寝ようとベットに横になるとスマホにショートメールの着信。
'おやすみ'
の4文字と表示。相手はお兄い。嬉しかった。安堵した。明日への意欲が出た。
…しまった返信するの忘れたことに気づいても夢の中でした。
クラブ説明会が終わり、同い年の奴らが乱入してきて揉まれてしまった。這々の体で体育館を出てから美鳥をさがしたけど見つからない。仲の良い川合さんを偶然見かけて聞いたけど、知らないとのことだった。保健室にもいない。諦めて家に帰った。
「おかえり」
いつものコトリの声を聞いて安心している自分がいる。そのあと、スクラッチからバランスボールを使っても体幹、ウエイトトレーニングを実施してから夕食。後は勉強。机の上にノートを置いて書き込んでいくと、亜麻色の髪がノートから浮かび上がってくる。目がでたところで動きが止まった。じーっと俺を見てくる。
「寂しいよー。お兄ぃが見てくれない」
「ちゃんと見てるよ。話もしてるよ。なんでさみしいの?」
「お兄ぃ、見てるようで見てない。気持ちはあさって向いてる」
ドキッとした。よく見てるなぁ。
「今日、美鳥お姉ちゃんと話しをしたかな」
確かに、一度は冷たく呼ばれた。後は号令だけだった。確かに会話していない。高梨と会って浮かれてたかもな。
「確かに」
「でしょ。すごく寂しいの。どうするのよー」
「どうすると言っても、電話するには遅い時間だしな。メールアドレスは聞いてないし。そうだ、ショートメール!」
スマホを操作して4プッシュ、矢印をタップして送信と。
ショートメールには既読マークはない。たけど、
コトリの顔が笑顔になった。向こうでメッセージを読んでくれたのだろう。
既読にっこりだね。




