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年下幼馴染は同級生 でも1/3は俺が嫌い  作者: つむら湯
2度目の登校。再会、出会
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週の始まり放課後

「1組の風見くん 風見くんいますか?」


 今、部活の説明会で体育館にいる。バトミントン部が説明を始めようとしたところで呼ばれた。


「はい」


 仕方なく立ち上がる。呼んだのは高梨だった。こちらにこいと手招きをしている。高梨は黒とブルーのグラデーションでデザインされた試合用のユニフォームに着替えている。髪は一纏め。解けはウェーブがかかるのな。脇に2本のラケットを挟んで立っている。クラスメートを蹴飛ばさないように慎重に前へ歩いていくと同い年でバトミントン部部長の高瀬もいる。


「じゃあさ、お手伝いよろしく」


 とラケットを渡される。


「いいのか?」


 高瀬部長は渋い顔をして首肯した。


「じゃあ、いつものね」

「いつものって」


 高梨は左手からシャトルをボトム。胸下でバックハンドで打ってきた。そして後ろにステップバック。

 俺はアンダーハンドでロブを上げてシャトルの高度を上げていく。そしてやはりステップバック。高梨がサイドハンドで返してきた。同じようにサイドハンドで高梨の右肩上にコントロールをして返していく。

 高梨は左の手のひらをこちらに向けるように構えた。右手を肩から後ろに引いてテイクバック。シャトルをフォアハンドで打ち返してきた。そして俺の右肩上の絶妙な位置にきたシャトルを打つ。もちろんさっきと同じところ。ラリーを初めて行く。

 シャトルの初速は300キロ近い、手前まで減速するとはいえコンマ幾つでとるでくる。見てから返すなんて難しい。相手に返す場所を指定するようにコントロールする。

 ラリーを続けるなんてよほど息が合っていないと続かない。

 バトミントンを始めて高梨を意識しだす頃から、このラリーを度々やっていた。集中力が、コントロール、体力がかなり削られる。しかも、高梨は一歩、また一歩と俺に近づいてくるんだ。アンボレーエリアの距離で歩は止まる。

 部長の話が終わりそうになると左手が3本になる、2本、1本になりサムアップするとフェイントで手前に落としてくる。前へ出て拾うんだが高梨へのトスになってしまう。すかさずにジャンピングスマッシュされる。

 咄嗟にが顔前にラケットを持ってきたら案の定、飛んできた。皆さん人に向けてスマッシュは駄目。ちょっとの仕返しを仕込み。なんとかボレーで返すも、俺は体勢を崩して後転する。首の後ろを手でガードして一回転した。



「あん」


(やりぃ)


 シャトルはスマッシュの後の残心をしている高梨の胸骨あたりに当たった。あの高梨の可愛い声と朱に染まった顔。家宝にします。

 高梨は小走りに体育館の壁近くに置いた自分のバックからシャトル缶を出し中身をぶちまけた。鷲掴みにしてそれを、もっと高い位置にリリース。テニスサーブみたいに打ってきた。高梨は羞恥に我を忘れている。 俺は逃げたけど追っかけてきて打たれた。


「この!この!この」


2、3個背中に当たって痛い。高瀬部長が高梨を羽交締めにしたことでやっと収束した。



 私は今、何を見ているのだろう。お兄ぃが大好きなバトミントンをしている。

 私は今、何を見ているのだろう。お兄ぃが見る人を圧倒するバトミントンのラリーしている。

 私は今、何を見ているのだろう。お兄ぃの相手をしているのは・・、高梨先輩

 お兄ぃが笑っている。あんな無邪気なお兄ぃの顔は初めて見た。同い年の人たちのなかで本当の笑顔になっている。その中に高梨先輩は入っている。私は蚊帳の外だ。なんか置いて行かれたようで悔しい。


 今日の部活動説明会は体育館でそのまま解散になった。一年生が帰っていくため、入れ替わりに本来の部活動が始まる。バトミントン部以外でのお兄ぃの同い年の人たちも周りに集まり出し談笑が大きくなっている。


 私はといえば、歩美が自分の入りたい運動部へ行ってしまったため1人になってしまった。私は静かに体育館を出て行った。


 自分の中のモヤモヤが晴れてくれないんだ。気持ちが落ち込んでいく。そんな自分を隠したい。自分を奮起するための10ヶ条を決めてから絶対に行こうとしなかった。一階階段の裏にある物置の影に私は立っていた。2年間頑張っていたことが高梨先輩にあっさり抜かれた。今までのことが霧散してしまった感じがする。いじける自分が復活しそうだ。嫌な思いが頭の中でぐるぐる回っている。

 そんな時、


「おめぇ、何、突っ立ってんだ。そんなとこに隠れて」


 声をかけられた。


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