琴守宅、訪問 その2
テーブルの上の鍋には野菜ペーストとトロミを少し足したカレーが湯気をたてている。中皿には一口サイズにカットしたジャガイモ、人参、かぼちゃ、ズッキーニ、パプリカ、ブロッコリー、カリフラワー。もう一つにはサイコロにカットした牛、豚肉。6面を焼き締めて、鳥肉は唐揚げ用、後はウインナーやフランクフルトソーセージ、それらを圧力鍋で加圧加熱して柔らかくしたものが山になっている。また、多分琴守家オリジナルで米粉で作った皮でごはんを焼売包にしたもの。それをフォンデュフォークで刺してカレーにつけて食べる。お酒が入った大人は肉を頬張って食べている。俺はどちらかと言うと野菜が多めかな。カレーを楽しんでるよ。美鳥はウインナーやウズラの卵。でも柔らかくした人参やパプリカも食べている。元々このカレーフォンデュは野菜嫌いな美鳥が食べやすくする為に考えたものだったりする。
「美鳥、パプリカも食べているんだね」
「ママが美味しく作ってくれるから食べられるもん、人参だって」
「一孝くん、君が中学を卒業した頃から美鳥が変わったのよ。好き嫌いしないし、気持ちもポジティブになってる、着こなしだって勉強して良くなってるの。私ともよく話をしてくれるのは嬉しいし。ねえ、何か美鳥にしたの?」
美桜さんが優しい目で美鳥を見ながら聞いてきた。
「確か、くよくよイジイジしない。人の後ろにかくれない。階段下に逃げるな。とか言ったような気がします」
美鳥は小さく頷いている。
「素直で謙虚、だけど前向きなろうとか、気遣いを忘れないとか」
「好き嫌いなく食べて、ハッとするようなスタイルになれ、とも」
やはり頷いている。
「そっかぁ。一孝くんが美鳥を変えてくれたんだね」
美桜さんの笑みが深くなった気がする。
「そんな一孝くんにお礼。アーン」
とフォークに刺した肉を差し出してくる。
「ママはパパにしてあげればいいのに、お兄ぃには私が、アーン」
とボイルしたエビを差し出してきた。
そのまま、私が、私がと言い争いを始める。
「では、代わりに。この肉のミルフィーユ美味しいよ」
と奏也さんがフォンデュフォークに刺し、ルーをつけて俺の口元まで出してきた。アムって食べてしまう。確かに肉汁が出て美味しい。
「なかなかですね」「だろっ」
「「パパ」」
2人して抗議している。
「そんなパパには、こうだ」
と美桜さんがズッキーニを奏也さんの口に押し込む。ルーをつけ忘れて。
「私もこうだ」
美鳥も倣って押し込んだ。
「ルー無しズッキーニはやめて」
奏也さんは力無く抗議している。
「一孝くんも」「お兄ぃも」
俺には人参と大根!のダブルコンボ。
「「イェーイ」」
と女性陣はハイタッチして笑い出した。つられて俺たちも微笑んでいる。
(いいなぁ、こういう雰囲気)
知らず知らずに涙が流れている。それに気づいた美鳥が、
「大根がへんだった? ごめんね」
「違う、違うよ。俺の親、仕事で外っていうのが多かったんだよ。団欒ていうのを感じたんだ。良いねえ、こんな雰囲気」
涙を手で拭ってから、
「すいません。シンク借りますね」
いい女の条件 10箇条
1つ、くよくよイジイジしない。逃げるな、陰に隠れるな。
2つ、好き嫌いしない。食べ物も人付き合いも。
3つ、スタイルが良く。色気もある。凛として媚びないるな。
4つ、誰にで着飾らず自然体で自分自身の考え方や価値観をもって。
5つ、私は私、ブレるな。
6つ、気遣いも気配りも出来る。
7つ、誰に対しても平等に接する。素直で軽挙に
8つ、どんな人、どんなことでもきちんと受け止めて包み込む、包容力よ。
9つ、相手をとことん愛せる愛情深さ。
10 笑顔、笑顔で相手も持ち上げる。
最後にいい女になりたいなら先達のママを尋ねよ。
お兄ぃが高校に行くことになり言われたんだ。これからは別々になると、一緒がいいと泣いて告げると。俺はいい女が好きだ。いい女になったら、一緒になってやると。
だから、まず'コトリ'をやめた。美鳥は美鳥だ。いじられたって階段下に隠れて泣くもんか。
食べるものも好き嫌いしません。ボンキュッポンのナイスバディになってやる。
今日のカレーフォンデュは苦手な食べ物が多い私のためにママが考えてくれたもの。おかげで食べられるものが増えたのが嬉しい。美味しい。自分も手伝って作ったから美味しい。お兄ぃが一緒だからもっと美味しいよお。
ふと、ママと一緒にパパとお兄ぃに親愛をぶつけた。あれあれ、お兄ぃが泣いてしまった。大根がだめだったのかな? それとも悪戯がダメ、ごめんなさい。




