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年下幼馴染は同級生 でも1/3は俺が嫌い  作者: つむら湯
2度目の登校。再会、出会
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春 何番目の旋風

 ホームルームが終わると歩美がポーチを持って教室を出て行ってしまった。鞄へ教科書やノートを入れていると、


「琴守さんて、このクラス?」


と言って男性が教室に入ってきた。知らない人だ。


「琴守は私ですが」

「そうなんだ。かわいいねー、聞いたよりもっと良いよぅ」

「どうだった」


もう1人、いや2人ついてきた。


「ビンゴだよ。噂以上だね」


なんか勝手に盛り上がっている。怖い。怖い。歩美もいない。怖いよぅ


朝からハイテンション上機嫌なコットンのダンスにヘキヘキしながら、やっとこさ1日のプログラムが終わった。


「一日中踊りまくっていたな、気分はどうだい?」

「上よ、上々よ、最高よ」


 コットンはいい汗かいたよっていった雰囲気を出して、こちらに顔を向けてきた。清々しい顔をしていたよ。

 でもいきなり後ろへ振り向いた。


「なんか寒い。震えが止まらない」


 二の腕をさすり出した。


「どうした?」

「なんか寒気がする」


 左の席の佐々木さんが教室の前を指さして、


「ねぇ、あの3人て3年の先輩だよね。いろいろと声掛けまくってナンパしまくってるっていう」

「部活の先輩からも近づいてきたら直ぐに逃げろって言われてるよ。確か泣き出した娘もいるとか」


 佐々木さんと話をしていた高谷さんも追認する。


 俺も美鳥の前にいる3人を確認した。居ても立っても居られず美鳥の席に向かう。


「行けぇ!ぶっ飛ばしてよいぞ!俺が許す」


 威勢のいい応援が後ろにいるコットンから飛んできた。


 近づいていくと河合さんがいない、席を外している。タイミング悪かったなあ。3人の先輩方は、あれ!こいつら見覚えがある。多少ガタイはよくなっているけど、同じ中学に居た奴らだ。

 美鳥の後ろに来て手を肩に載せた。


「ふえぇ」


 美鳥が小さい叫び声あげて、こっちを見てきた。先輩方もこちらに視線を向けてきた。


「その辺にしてもらえますか? 琴守さん怯えていますよ」

「てめぇ、誰?」

「クラスメート、その10でしょうか。丸尾先輩、音野先輩、乾先輩」


 名を呼ばれた先輩方は訝しむ目で俺を見てくる。


「俺らの名前を知ってるって」


 こっちを更に睨みつけてきた。


「おいお前、風見か?」

「はい、風見ですが」


 こちらの背格好を見て俺を思い出してくれたようだ。何、同中でも悪さしていたこいつらを折檻していただけだから、恐怖感はない。 


「あいつ、事故に巻き込まれて死んだって聞いたぞ」

「おれは高校やめたって聞いた」

「僕は圧死したって聞いた。ざまぁだよね」


 当時の混乱具合がわかります。


「いえいえ、今年から復学して1年生からやり直しですよ。先輩方」


「興が冷めた。帰るぞ」

「先輩方」


 俺は美鳥の後ろから手を回しハグした。俺のだと自慢するように。もちろん演技です。


「こいつ、俺の妹分なんですよ。以後、宜しゅう」


 (イタタタ) 美鳥がハグしている手の甲を抓ってきた。コットンの頬を抉った力で。


「そういえば先輩」

「なんだ。まだあるのかよ」

「織田先輩はこの学校ですよね。今は何組ですか?」

「この学校、締めてるのあいつじゃねえぞ」

「いえいえ話を通しておくだけですって」

「ふん」


 3人とも、そそくさと教室からでていってしまった。

 

 しばらく静かな状態が続いた。美鳥をハグから解放して、


「ごめんなさい。琴守さん。抱きついちゃて。もう大丈夫だからね」


 美鳥は未だ震えていた。こちらも見てくれない。


「こわかっ」

「美鳥!」


 河合さんが帰ってきた。教室の騒ぎを感じたのだろう。駆け込んできた。


「何かされたの?大丈夫?ふるえてるよ」


 俺の方をキッと見てきて、


「美鳥、こんなに怖がってますよ。風見さん何かしました?」


 詰問して来た。俺は両手をあげて降参のポーズをする。すると近くから、


「琴守さん、先輩に絡まれてよぅ。風見が追い返したんだよ」


 完結に説明、援護してくれた。


「そうなの美鳥」


 河合さんは美鳥に聞いた。美鳥は、まだ話すだけ回復をしてないようで小さく顎を引いて答えた。河合さんが美鳥の頭を抱き抱え、


「ごめんね、そしてありがとう」


 後は河合さんに美鳥を預けて大丈夫だろう。自分の席に戻った。

 左隣の席で一部始終を見ていた佐々木さん、高谷さんに


「風見さん、何者?」


と驚きの目で見られてしまった。


「ただのクラスメートですよ。そういうことにしておいてください」



「コットンどうだった」

「上出来だね、よくやったよナデナデ」

 

 マンションに帰るとコトリが足にしがみついて来た。


「なんか、すごーく怖かった。震えが止まらないの。でもね背中からキュとなって暖かくなって安心したの。お兄ぃありがと、大好きぃ」


 俺はコトリの頭を撫でてあげた。

怖かった。凄く怖かった。

 でもお兄ぃがハグしてくれた。怖くない。心が落ち着いた。そしてお兄ぃ風見さんの声が私の頭の芯を震わせる。抱き寄せてくれて、背中で感じるお兄ぃ一孝さんの体温が私の胸を焦がす。熱いよ。熱いよぅ。疼いちゃう。溶けると感じる直前、

(やれやれ、それは我の役目)

衝撃も熱も体から吸い上げられた。教室の後ろから頂を超えた女の声が聞こえる。私の中には悲しみしか残らない。女になれなかった寂寥感しかない。あいつが盗んでいった。喜びも楽しみもない、怒りと哀しみの器なのかな私は。

 ごめんね歩美。泣いていたのは怖かったからではないんだよ。体が震えているのもそう。ごめんね。おにぃも離れる。多分誤解している。あぁ



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