表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
年下幼馴染は同級生 でも1/3は俺が嫌い  作者: つむら湯
2度目の登校。再会、出会
18/174

状況開始

 6限目の授業中はコットンを膝の上に載せていた。意気消沈して見てられないぐらいだったからなぁ。載せてあげると俺の胸に頭を預けてリラックスしている。たまに空ら空らしていた。ホームルームも終わり。

「では終わりにする。琴守」

千里先生が言うと同時にパシんと何か叩く音。

「起立、礼、着席」

 シャンと声を出している。

「琴守、自分の頬を叩いて気合いを入れるのも良いけど、そっとやれ」

「はひっ」

 美鳥も空ら空らしていたのだろうな。

 みんな帰り出したのを見届けて、ゴミ当番の活動開始。両手にゴミ袋を持って廊下を移動する。ふと窓下を見ると男女が向き合っているのが見えた。で、女の子が両手を重ねて頭を下げて丁寧にお辞儀をしている。亜麻色の長髪がさらっと靡く、美鳥か。

「琴守さん、モテるなぁ。すでに3人目に告られてるよ」

「うあっ…えっと二瓶さん?」

 臨んで見ていたところに後ろから声をかけられた。確か同じクラスの二瓶ななみさん。明るいブラウンの髪をロングボブにしている女の子。少し垂れ気味の目で愉快そうに下を覗いている。

「で、今のところは、お断りしていると。あなたはどうなの?」

「俺は、すでに対象外。塩対応されてます」

「そう、良い線まで行くかと思ったのに。がっかり」

 と、二瓶さんは背中越しに手をヒラヒラさせて歩いて行ってしまった。確か二瓶さんに新聞部。ゴシップを探しているのかも。縁がないように気をつけないと。

 しかし美鳥はモテてるんだね。可愛くなったからなぁ。2年はおおきいな、ちょっとは自慢かな。

 教室に戻って自分の机まで行く。机の上ではコットンが仰向けで寝ている。

「もう、いっぱい。いっぱいよぉ。風見成分いっぱい。漏れちゃう。溶けちゃう」

 なんて呟いている。

 さてさて昨日の続きをしよう。机からペインティングナイフを取り出したのだけれど、

「それで私の円らな目を抉るつもりかしら」

 と怖がられてしまった。

「それも良いなあ。その口を塞いでも良いかも」

 少し脅かしておいた。静かにしていてくれると良いのだけれど。

 それではと、昨日、傷の上にゲル状のプラーナを厚盛りして瘡蓋みたいにした。それをペインティングナイフで削っていく。流石にプロ仕様、綺麗に削れました。そして家庭科室のシンクにあるスポンジ借りてきまして、多少均された傷跡をスポンジで撫でていく。真壁君に借りた専門誌ホビーホビー別冊 作ろうクレイフィギュア!プロはこう作る を読んだけど、流石にリューターや彫刻刀、金属ヤスリは、こいつには使えないと思う。考えたのは紙ヤスリがわりのスポンジ。目の荒いのと細かいのと分けて使って見た。コットンにプラーナを出させてスポンジに染み込ませて擦って見た。なんとか表面が滑らかになって傷が見えなくなり艶が出てきた。よかった、うまくいきそうだ。

「コットン、どうだ?」

「いいねぇ、ツルツルになったよ。彫刻刀やリューターで切り刻まれるかと戦々恐々だったね、スプラッタになるところだったよ」

「形になってよかったよ。美鳥の方も良くなるね」

 美鳥とコットン、お互いに影響がて出てしまっていた。赤ニキビ然り、みみず腫れ然り。快方に向かうだろう。

「そういえば、その木炭は何に使うんだ。あれはキャンバスのデッサンに使うのだろ」

「ここに書いてもらうのさ」

 とコットンは自分の指で瞼の縁をなぞった。

「鏡が見られれば自分で描いてみるけど、鏡はないし、持つこと出来るかわからない、ましては映るかどうか、だから』

 確かに俺以外はコットンを見ることはできないのだから、鏡が使えるものかわからないね。

「だからお前に描いて欲しいのだよ」

「描くと、どうなるんだ」

「瞼が二重になる」

「別に今のままでも良いだろう」

「昔からの憧れなんだよぅ、二重瞼。頼むよー」

「充分可愛いのに」

「なんか言った?」

「いえいえ何も、申してはおりませぬ」

仕方なく画材木炭でば瞼から気持ち内側に線を描いていく。細すぎず、ちょうど良い太さと掠れ具合を出してくれた。

「なんか、パッチリ目が開いた気がする。ありがとな」

やっとこさ仕事を終えて帰途に着いた。


「おかえり、ねえ、ほっぺツルツル!」

 帰宅すると満面の笑顔のコトリが迎えてくれた。ここでやっと、ホッとしたよ。

今日、告白してくれた方には大変、失礼なことをしたと思う。真剣にお話をしてくれた。優しそうだし、私を大事にしてくれそう。でも、ダメ。頬が気になってマスクが外せない。

「ごめんなさい」

 その一言しか言えなかった。肩を落として彼は帰って行った。私も1人トボトボと自宅に帰る。途中から頬がポッカと温かくなった。みみず腫れの痛みも感じない。急いで家に帰って自室に入り鏡を見てみた。

「えっ」

 何、肌の透明感。艶々でスベスベ。みみず腫れなんて何処かへ行ってしまった。これはキチンと手入れしないと。シャワーで体を洗い流し、ゆっくりと洗顔。化粧水も慌てず丁寧に肌に染み込ませていく。仕上げに乳液で保湿と。明日が楽しみになってきた。少し瞼が気になるかなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ