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年下幼馴染は同級生 でも1/3は俺が嫌い  作者: つむら湯
変わっていくもの。変わらないもの
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放課後が始まる。いざ戦場へ

よろしくお願いします

 授業の終わるチャイムが聞こえてきた。自分がやらかしたとはいえ、今日は一日が長いというか濃いんだ。

 朝、美鳥を迎えに行って、通学路を一緒に歩いた。学校に着いて  教室に入ったところでみんなに宣言したんだ。美鳥は俺の彼女だって、あの時の美鳥の嬉し恥ずかしそうな顔は脳裏から離れないよ。

 でも昼を一緒にした時から、どうも美鳥の様子が可怪しい。浮かれているというか、妙に積極的というか。

 そう、朝比奈と出くわした辺りから、俺の腕を抱きしめたりして周りに魅せるようにしたり。昼休みが終わるまで離さなくって困ったもんだった。何とか、午後の授業は受けられたけどね。


 ようやっと午後の授業が終わる。


「起立…礼…着席」


 教室の前の方にいる美鳥の声に合わせて、


「ありがとうございました」


 本日,最後の授業をしてくれた先生に挨拶をする。

 早速、美鳥にところへ行って、部活の後、帰りが遅くなるって話をしなきゃいけない。彼女には試合といいうか、果たし合いを断るよとか言っては見たものの、断れない状況になってしまったんだ。 

 5時限目が終わり休憩時間になった途端、なぜか、さっさと教室を出て行った美鳥を追いかけて廊下に出たところで対戦相手の石動にばったり会ってしまったんだ。

 本当に偶然。神様の悪戯かと思ったね。まあ、会ってしまったのはしょうがない。


「石動。ちょうど良かった。お前との試合のことだけどな」

「何だって、試合は辞めたって言うんじゃないよな。それともビビったんじゃないのか』

「そう言うわけじゃないんだけどな。でも試合なんて………」」

「はは〜ん。やぱっり怖気付きやがったな。いいよ。もし止めるって言うんだったら、お前は女の子に二股かけてるヤバイ奴だって、みんなに言いふらしてやる」

「言いがかりだ。俺はそんなことしていない。本当に困るよ」

「じゃあ、言いふらされたく無かったら、試合をやれちゅうことだ」

「全く、俺がお前に何をしたっていうんだ」

「お前にはわからんと思うけど、私にはあるんだ。大事なものを傷つけられたってことが………」

「もしかして、朝比奈のことか、彼女に何があったっていうんだ。教えてくれよ。石動」

「あんたになんか、言う必要ないね。兎に角、私と試合しな。プライドを粉々にしてやるよ」


 石動の言う事に嘘はない。彼女は中学生の時、バトミントンの全国ランキングの上位者だ。かなりの実力を持っていたりするんだ。

 2年の闘病生活をした俺じゃあ、勝てるかどうか、やって見なけりゃ渡らんよ。


「酷い話だよ。勝手すぎる。兎に角、試合はだな………」

「まだ、ウダウダ言う。何なら、あんたが私も口説いたって噂も流すよ。三叉だよ。三叉。最低の男だね。風見」


 全く、ああ言えばこう言う。こういえばああ言う。拉致が開かないよ。しかしなあ………、まあしょうがないか。


「わかったよ」

「本当にみみっちい奴だ。こうまで言わないと腰を上げないなんて」


 ひどい言われようだと思わないか。だからと言うわけじゃないんだけれど、


「石動。試合を受けるに当たって、一つ条件がある」

「条件⁈ 一体全体なんだって言うんだ。私に効き手と逆の手にラケットを握らせようとでもするのかい」

「違う、違う。まあこう言うことだ」


 普段、部活の時に朝比奈と石動、二人を見ていて気になっていたんだな。


「条件っていうのは………」


 それを聞いた石動は、


「ふざけやがって、男だからって、私を見下しやがって」


 かなり、怒っていたけど、俺は後には引かなかった。休憩時間いっぱい粘って、石動に条件を飲ませた。

 全くトイレに行く時間も無くなったんだぞ。六時限目は我慢するしかないって覚悟を決めたんだよ。全く石動には参ったよ。なんて考えを巡らしていたら,


えっ⁈


 美鳥が消えた。ちょっとの間、意識を外したら、又いなくなってるんだ。どこ行った?

 美鳥が立っていた辺りを見ると、ドアが半分ほど空いている。

 もしかして教室の外に出たのか。そういえば、昼休みが終わってから美鳥と視線を交わしてない。俺、何か、美鳥を怒らせることをしたかなあ。

 あ〜ぁ、教室に美鳥がいないんじゃ話のしようがないな。後でどんな言い訳を言えば良いかな。

 この先暗雲が垂れ込めるよ。落ち込んでもしょうがない。仕方なく俺は体育館に行くことにしたよ。

 校舎を抜け渡り廊下を歩き、部室でユニフォームに着替えて体育館に入ると、早速、


「来た来た。イッコウ。ねえ、教えてくれない? あんた,一体、何やらかした訳。部活が終わった後、コートを貸してくれって石動に頼まれたの。お前と果たし合いするって」


 髪をポニーテールにした呆れ顔の彼女が腕を組んで仁王立ちしている。俺のことをイッコウと呼ぶ彼女の名前は高梨明日菜。バトミントン部の先輩になる。


「すいません。高梨先輩………」

「イッコウ。あんたに先輩なんて言われると、背筋がゾワゾワってするんだ。止めてくれるかな。歳は一緒なんだよ」

「すいません。一応、俺一年生だし、先輩は3年生だろ。タメ口で話なんかしたら、周りに示しがつかなくなるよ」


 実は高梨は俺と同い年だったりする。まあ、俺が怪我で二年ダブっただけなんだけどね。

 彼女は全日本のミックスダブルスの選手。折り紙つきのバトミントンの実力者なんだ。俺が中学の時のパートナーであったりする。だからか、俺の名前の読みをもじっていっこうって呼ぶんだ。

 まあ、俺のやんちゃをやっていた時の人に知られたくない所業を知っている所為もあるんだけどね。


「あんたなら、明日菜って名前で呼んでくれても良いのに、このわからんちん」

「彼氏持ちの人を気安く呼べるわけないでしょ。佐渡先輩に顔向けっできなくなりますよ」


 彼女は彼氏がいるんだ。もう高校は卒業して大学へ進学してる彼氏が。

 この高校の卒業生で俺もよく知る先輩。佐渡さん。俺が彼と高梨の仲を取り持ったんだ。

 高梨は既に彼を追っかけて、同じ大学に進学を決めている。もう推薦入学も決まっている噂もちらほら聞いていたりする。


「あ〜ぁ。全くもって、あんたって変に律儀なんだから。まあ、いいわ」


 高梨は、ため息混じりでボヤいている。

 なんでだろう。

 こう言う話をすると、なんか、がっかりしたような顔をするんだよな。何が気に触るんだろう。


「で、イッコウ。あんた、石動に何をしたの? 物凄く怒っていたわよ。イジメでもした?」

「しませんて、俺だって訳がわからずに試合申し込まれたんですから」

「ホント〜ウにぃ? …………ハッ⁈ もしかして石動にセクハラ紛いのことでもしたの?」

「ひどいなぁ。する訳ないでしょ。どう言うふうに俺を見ているんですか?」

「ムッツリスケベ。いや、ハッキリ助平。あんた、昔から練習中、私を見るときの目つきがいやらしいものね。いっつも、どこを見てるんだが。エッチ」

「エッチってせ………」


 確かに高梨はスタイルが良い。トレーニングをミッチリとしているから,体は引き締まっている。

 でも出るところは出て,引っ込むところは引っ込んでいる。独り身な野郎には目に毒な体つきをしている。

 まあ、俺には美鳥がいるから、大丈夫なんだけどね。本当だぞ。高梨には悪いが、美鳥は、本当に綺麗になってくれた。自慢じゃないぞ。


「まあ、いいわ。なんで石動が怒ってるのか教えてくれる」

「ああ,それがだな………」


 俺は高梨に昼休みに起きたことを話した。

 朝,クラスの皆んなに美鳥との事を宣言したことは話していない。俺と美鳥の仲については既に高梨は中学時代から知っていたりするんだね。

 美鳥と食堂で昼を食べていたところへ朝比奈がやってきて、一緒に食べませんかって声をかけられた辺りから、その場の雰囲気が変わってしまったこと。二人が睨み合いを始めてしまったこと。周りが緊張して温度が下がった見たいだっだんだって。暫くして朝比奈が逃げるように食堂を出でいってしまった事。

 まあ、美鳥と新婚さん見たく食べ物を食べさせ合うなんてことをしたことについては黙っておく。高梨に冷やかされてしまいそうだからな。衆心の前で俺たちの仲を見せびらかすことをしてたんだぁ。お熱いですねって。


「ええっ、朝比奈、美鳥ちゃんにあれをされだんだ。私もやられたんだ。美鳥ちゃんって思い詰めると、その時の感情を相手にぶつけてくる感じがするんだよ。イッコウも感じないかい?」

「美鳥が? 感情をぶつける? スマイルパンチかな」

「それ、それ! 今度のは,逆だけどね。そうね。ジェラシーアッパーかな。強烈でしよ」

「確かに」

「私も,それでお前とのことを………したんだぞ」


 ボソッと高梨が顔を背けて呟く。


「えっ何がですか。よく聞き取れなくて」

「なっ、なんでもない! 兎に角、イッコウ。いつの間に朝比奈と仲が良くなったんだ。この前、放課後、二人だけでいたんじゃないの」

「仲がいいわけじゃないよ。実は朝方、朝比奈が変なやつにビルの陰に連れ込まれて乱暴されそうになったのを助けたんだ。大した怪我もなくて良かったよ」

「へえぇ、そんなことがあったんだね。それでイッコウに靡いたんだね。よっ、男だね」


 やっぱり、高梨は茶化してきたよ。しょうがないなあ。


「違うってば。その後、お礼がしたいって朝比奈の奴、何度も俺のところに来るんだよ。別に構わないって言ったんだけどな」

「それが、どうしては果し合いの試合になるのかな?」


「石動と朝比奈は友達らしくって、どうやら、俺が朝比奈を蔑ろにして美鳥に靡いてるって思ったらしいんだ。乙女の純情を踏みにじりやがってとか言われたよ。そうだよな。タイミング悪くア〜ンってこれみよがしに朝比奈に見せつけたみたいになってなもんな」


 あれは、本当に魔が悪かったとしかいえない。美鳥が積極的で断る事ができなかったんだ。それに乗った俺も悪いんだけどね。


「イッコウ、食堂でそんなことしてたんだ。バカップル丸出しだねぇ」

「反論できません。十分反省してます。もうしないよ。恥ずかしいし」

「それにしちゃあ、石動の怒り方が凄まじかったけど、他にもなんかあったんじゃないの」

「ああ、それなら、俺が石動に試合を受ける条件を彼女に投げたからだよ」

「負けたら、ひとつなんでも言うこと聞くとか? 裸になれとか言ったの? 鬼畜ね」


 高梨はジト目になって、俺を疑ってかかる。


「違う、違う。言う訳ないだろ。頼むから、その線から離れてくれ。至って真面目な頼みだ」

「じゃあ、何さ」

「なあに、朝比奈とペアを組んでダブルスなら試合してやるって言ったんだよ」

「ペアで? イッコウ、ダブルスで試合するなら誰と組むの。私?」

「違うよ」

「チッ、残念。久しぶりにあんたとペアを組めるかと期待して損したわ」


 高梨と俺は中学の時にミックスダブルスでペアを組んでいたんだ。一応、全国大会で二位になっている。

 俺が怪我でリタイヤしたから同級の八重垣と組んでインターハイ、全国大会で優勝して全日本の選手に選ばれたんだ。

 実際のところ、俺と組んでいたらそこまで上り詰められるか怪しいところ。まあ、結果オーライなんだろうな。


「俺は一人で受けて立つって言ってやったんだ。二人して掛かってきなってな」


 それを聞いた高梨は、呆れたって言う顔をして、


「イッコウ。何を考えているの。ダブルスとシングルって。ダブルスの方が有利なのわかってるでしょ」

「わかってるよ。それでもな………」


 そこへ、体育館のフロアの入り口の方から、


「やい、ヴァカ風見。よく来れたもんだな。だが、お前が逃げずにきたことだけは褒めてやる」

「葉月ちゃん」


 怒声が耳に入ってきた。この声は石動だ。後に朝比奈も付いてきてるな。 


「だけどな、蘭華とペアなら試合するなんてふざけた事を言いやがって、どんだけ強いか知らんが、私を見下しているってか。ヴァカにするのも大概にしろよな」

「葉月ちゃん、言い過ぎ」


 彼女は怒髪天をつくような物言いで、俺に詰め寄ってくる。朝比奈も取りなしてくれるようだけど、治る気配なし。

 俺と高梨は少し寄り合い,二人でひそっと、


「イッコウ。試合するのはいいけど、彼女は強いよ、一年生の中でも群を抜いてる。全国でもトップクラスだよ。イッコウ。それを………」

「勝てるなんて、思ってない。高梨は知ってるだろ。俺が最後まで試合できないの」

「まあね」


 事故で首の骨を折る大怪我をして、復帰に二年掛かったけど完治とは行かず後遺症が残ってしまった。理由はわからないけど、試合を最後まで出来ないっていう。体力が続かない訳じゃないのだけれど、


「でも、どうするの。リタイヤする? 負けになるんじゃない」

「そん時は、そん時。石動も目一杯、体を動かすから怒りもどっかにいっちゃうんじゃないかな。それとも土下座でもすればいいかな」

「そんな訳ないよ。私がとりなしてやろうか。でも、何で朝比奈とペアになれなんて言ったの」

「高梨は何もしなくていいよ。ペアの件は、ちょっと興味があってね。見てみたいんだよ。あの二人がダブルスで試合するの」


 そう、石動に朝比奈。石動はパワーもあるし、テクニックも持ってる。でも,性格が一本気で融通が効かない。揺さぶりに弱いはず。

 その点、朝比奈は頭が良く回る。機転が効くんだね。バトミントンは初心者だけど運動神経もいいから、練習次第で化ける可能性大なんだ。攻撃の石動、参謀役の朝比奈。いいコンビになりそうだ。


「高梨も見てみればわかる………」


「やい、風見。先輩と何話しているんだ。コソコソしないで、こっち向きやがれ」


 高梨と二人でヒソヒソ話をしていて石動が痺れを切らしてしまったみたいだ。さて、どうやって宥めたものか。


「石動。ごちゃごちゃ言ってると試合は許可しないよ」


 直様、高梨が石動へ声を飛ばす。


「そんなぁ」

「二人とも来たんなら早速、ウォームアップ始めてくれる。フロアのランニング。いいね」

「先輩、試合のことは?」

「部活が終わるまでに考えとく。しっかりやらないと本当に認めないよ。朝比奈も同じ。さあ、始めて始めて」

「はひぃ〜。蘭華、行こ行こ」

「うん。葉月」


 助かった、高梨がうまい具合に助け舟を出してくれた。

 二人は、慌てて体育館の壁に向かって行き内壁に沿って走り出していく。


『イチ、ニッ、イチ、ニッ』


 掛け声が体育館に広がり、フロアに集まっていた他の部員もそれの習って走り始めた。


「高梨。すまんな。あのままだとみんなの前で言われっぱなしになるとこだったよ」

「本当に困ったもんだね。石動も。じゃあ。イッコウもランニング始めてもらえる。二人だけで話ししてたら他の部員にも何かあるって勘繰られかもしれないから」

「了解。で、試合は認めるのか?」

「もちろん、やってもらう。あの二人がイッコウの言う通りなのか、見てみたいし。アンタの試合を見るのも久しぶり。審判席でかぶりつきで見てやる。楽しみだよ」

「こりゃ、無様なプレイは見せられなくなった。全力でプレイしないとな」

「そうして。楽しみにしてるよ。じゃあ、練習始めて頂戴。さあさあ」


 俺は、高梨に背中を押されるようにランニングを始めていく。ストレッチをしつつ壁に沿って、軽く走っていると、


「風見さん」


 後ろから声をかけられた。朝比奈か,


「ごめんなさい。葉月ちゃんがわがまま言って。昼休みの後、話をしても収まってくれないんです」


 俺は、朝比奈に走りを合わせて走っていく。


「そこまで怒り心頭なんだ。でも、いい友達じゃないか。あれは朝比奈のことを思って怒ってくれってくれているんだろ」

「それは、そうなんですけど、風見さんの事、ああまで言わなくてもいいのに」

「いいよ。そんなに気にしてないよ」

「なら、いいんですけど。ところで風見さん」

「何?」

「何で葉月に私とペアでなら試合するって言ったんですか? それも風見さんは一人で相手するって。それで彼女一層怒っちゃって。なんでです?」

「何でって、俺の実力じゃ、石動に勝てないからだよ」


 石動は、全国屈指の実力の持ち主なんだ。本当のところ、やってみないとわからない。部の悪い試合になりそうなんだよな。


「習いたてで、ほぼ初心者の私をつければ足枷になって勝てるとでも思いましたか」

「バレた? やっぱり、わかちゃうかなぁ」

「嘘ですね。風見さん、葉月にダブルスならって試合するって言う話をした時の目が違うんです」

「どう違うんだ。朝比奈」

「何か企んでいると言うより、興味津々な感じで葉月のこと見てました。それに私のことも」


 ほう。良く俺のことを見ているな。勘がいい。この娘は,やはり頭が切れる。


「鋭いな。確かに俺は石動の実力を見たいってのもあるんだけどな、もう一つ、朝比奈には知って欲しいことがあったんだよ」

「知って欲しいことですか?」

「そう、バトミントンにしろ、何にしろ、試合には流れって言うものがあるんだ。それを試合の中で感じてほしい。その流れの中で朝比奈ができることが、きっとあるはず、ここがポイントだと言うのが」

「流れですか。私にわかるって言うんですか。まだ、練習ばかりでそんなに試合なんてしてないのに」

「試合の数なんて、関係ない。俺は朝比奈ならできるって思ってる。だから敢えて、石動との試合を間近で見せてやるんだ」

「風見さん」

「朝比奈には、凄い才能が眠ってるって思ってる。今まで見ていて気づいたんだよ」

「私にですか。そんな見ていてくれたんですね。なら、もっと早く私に話しかけてくれればいいのに。黙ってみてるなんて、ムッツリさんなんですね。風見さんのエッチ」

「エッチはないだろう、エッチは………。とにかく、コートの中に居て感じてくれれば、いいんだか」

「男の人なんて、みんなそうです。分かりました。わかるかどうか分かりませんけど風見さんの言う通りにしてみます」

「ああっ、頼む」

「そうだ、もし、私たちが勝ったらデートしてください。デ、エ、ト」

「そんなことできるわけないだろう。俺には美鳥がいるんだぞ」

「勝ったら、一つ望みを叶えてくれるのですよね。でしたら、いいじゃないですか」

「朝比奈、お前なぁ」

「なんか、俄然やる気が出てきました。今度の休みが楽しみです。じゃあ、部活終わったら、よろしくお願いしますね。風見さん」


 と、朗らかな顔をして、走るペースを上げて俺から離れていく。

離れ際、ちらっと唇から舌の先がちらっと見えた。この小悪魔め。俺を揶揄いやがったな。

 とにかく、俺は全力を出して、石動と対戦する。やって見るしかない。勝つことはできないけど、いい結果が出ますように。


『イチ、ニッ、イチ、ニッ』


 しばらくランニングを続けていると、


「ねえ、蘭華。風見と何を話していたの。止めときなよ。風見菌がうつるよ」


 前の方から石動の声が耳には入ってくる。朝比奈が石動へ追いついたみたいだ。

 しっかし、風見菌ってなんだ。俺はバイキンか⁈ バイキンったって,善玉菌だて,あるんだぞ。

 これは、試合でちょっと仕返ししないとな。さあ、どうやろう。



ありがとうございました。

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