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年下幼馴染は同級生 でも1/3は俺が嫌い  作者: つむら湯
変わっていくもの。変わらないもの
174/174

あ〜ん

よろしくお願いします


挿絵(By みてみん)

 ちゅるっ


 パスタが唇に吸い込まれていく。お兄ぃは目を瞑り、満足そうにクリームスパを食べているの。いかに美味しいっかってお兄ぃの解れた顔を見ればわかります。そんな、幸せそうなお兄ぃの顔を見ていると、


「ねぇ、美鳥。聞いてるの、私の話」

「なんだっけ。ごめん。聞いてなかった」

「聞いてなかったって、酷お〜いなあ」


 お兄ぃを見ていた所為で、ミッチの話を聞き逃してしまったみたい。ミッチと、隣に座るカンナは、私が小学校からのお友達なんです。気心の知れた親友と言っても良いのかな。


「今度は、よく聞いてね。私たちが食堂に入った後、二人でなんかしてたの」

「なんかって………」


 カンナが、おっとりとした口調で聞いてくる。 


「私たちが先に行って、ちょっと遅いなって、振り返って見たら、お二人、何かしてたでしょう?」


 でも、有無を言わせないって圧を感じるのよね。


「そう、丁度、風見さんと背で隠れてわかんなかったのよ。その後、美鳥、酷く泡食っていたみたいだし」


 えぇ、ミッチ、見てたの? あれはあなた達が私で遊ぶからでしょ。特にカンナ、


「あの時、カンナが2号なんて話するから、私、ちょっとカチンってきたんだよ。そうしたら、お兄ぃが宥めてくれたの。俺の彼女は、お前だけだよって」

「へぇ、風見さんも言うねえ。美鳥もいい男に好かれたモンだね」

「えへへ」


 そうなんです。お兄ぃ、私の肩をそっと寄せてくれて囁いてくれたんです。そして、ミッチとカンナが先に食堂へ向かった隙にに…………、

 


 えへへ。その時、実はぁ、


『美鳥』


 名前を呼ばれて、お兄ぃの顔を近づいたと思ったら、



 額に柔らかい感触がしたのね。もう、驚いちゃって。頬は熱くなるし、胸も破裂するんじゃないかってぐらい、バクバクするし、モヤモヤした気分なんて、どっか行っちゃいましたよ。

そして、私の耳にお兄ぃの言葉が入り込んでくるの。


『安心しな。俺の彼女は、お前しかいないんだから。周りなんて気にすることなんかないよ』


 もう、嬉しくって心のアルバムに入れちゃいました。永久保存です。


『おっ、おにっ、お兄ぃ⁉︎ 一孝さん⁉︎』


でもですょ。わかりますか。その時、どんなに私の心が揺れまくっていたのを。動揺して混乱して、何言ってるんだか分からなかったんですよ。


『何か、心配することでもあったのか? 今ので少しは気が紛れたんじゃないか』


彼の心尽くしの言葉が私の心を和ませようとしているのはわかるのですが、胸のドクン、ドクンが止まらない。顔が熱ったまま、興奮が冷めやらず、言葉が出ない。もう、コクッコクッて、うなづいて返事するしかなかったの。


『じゃあ、行こうか。櫟さんや鏑木さん、待ってるよ』


 あぁ、お兄ぃが笑いながら私に背を向けて食堂に入っていく。

 朗らかな笑顔も素敵な、お兄ぃだけど、私の胸のドキドキが止まらないのは、貴方の所為ですからね。心の準備もできてなかったのに突然♡してくるから。こうなった責任は取ってください。


 それに、♡は額じゃなくてぇ、


『お兄ぃ、いきなりすぎます。してくれるなら、一言、言ってください。それに♡は唇にしてくださいよう』


 お兄ぃ、向こう向いてないで、こっちを向いてください。そして、私の唇に…………、


 してくれないと、背中、叩いちゃいますよ。


 エイッ、エイッ、エイッ。どうですか? 私のお願い聞いてもらえますか?

 ダメ?

なら、もう一度。


 エイッ、エイッ、エイッ。どうですか? 食堂の中へ逃げようとしたって逃しません。


 エイッ、エイッ、エイッ。どうですか? 私のお願い聞いてもらえますか? お兄ぃ!


 でも、願い空く、逃げ切られてしまいました。お兄いは、先にキッチンスペースへと行っていたミッチとカンナに追いついて、自分の食べる分を頼んでいるんですよ。もう!


 ハァハァ、お兄ぃったら、もう知りません。

 折角、ここでお兄ぃと食べられたらよいなってところを見つけて、やっと、一緒できると思ったのに。ミッチとカンナに見つかるとは思わなかったです。二人とも、本当に間が悪いのですよ。私とお兄ぃの貴重な時間を邪魔して欲しくはなかったの。もう。


 ふと、テーブルスペースのローケーションがいい場所へ目が向いてしまった。ここは二人にお話をして。お兄ぃっと二人っきりにさせてお願いするしかないかしら。

 と思ったら………、


『あぁ、やっぱりだぁ。いい所取られてる。折角、お兄ぃと二人でって思ったのに』


 またしても、私の願い空く席が取られていました。窓際の観葉植物が影になってるカウンター席で上級生でしょうか、知らない女子生徒が二人、お昼を食べながら和かにお話ししているのが見えました。

 のんびりと、お兄ぃと話をしてしていたせいですか、ミッチとカンナの絡まれて時間を取離すぎたせいでしょうか、先に座られてしまいました。

 今日は、いい日かと思ったのに、急転直下に運勢が落ちてしまった見たい。ショッ、ショックです。この場所でお兄ぃにしてあげたい事あったのに〜。


『ところで、美鳥。どこなんだ? お前の、お勧めなとこって』

『う〜ん。内緒。でも、残念だなあ』


 本当に悔しいです。もっと早く、教室を出れば良かったのかなあ。お兄ぃと、メニューの話なんてしないで、席を取りにテーブルスペースに行けばよかったかなあ。そうすれば、ミッチとカンナイに声をかけられることもなかった筈です。


『いいじゃないか。別に今日だけって訳じゃない。明日だって、いつだって、一緒にたべられるんだぞ』


 と、お兄ぃは慰めてくれるのだけれど、残念でしょうがないけど、なあ。

 よっぽど、私が気落ちしているように見えたのでしょうね。お兄ぃが頭を軽く叩いてくれた。おかげで頭の中でループしていた残念感が止まってしまいました。


『みんなで食べるのだって美味しいよ。それが美鳥の親友の櫟さんと柊木さんなんだから、尚更じゃないか』

『でもぉ、でもぉ。私、楽しみにしていたんだよ』

『じゃあ、明日は早めに教室出ようよ。その時まで、お勧めの場所がどんなだか、楽しみにしておくよ』

『お兄ぃ』

『今日は、仲良しの二人と食べる。そんな日なんだよ。そう思えばいいよ』

「そっ、そうですね。明日も一緒できるんでした」


 そうですよね。今日だけじゃ無かったんです。明日も、明後日も、その後もあるんでした。


『じゃあ、いいね。二人が待ってるから、行こうよ』

『はい、一孝さん』


 納得した私にお兄ぃは、大きな手で優しく頭を撫でてくれた。

 何、此れ。気持ちいい。ささくれた心が解れて行くの。

 ねえ、お兄ぃ、このまま撫でて貰えないかな。いつまでも、この気持ちよさを感じていたいの。


 でも、時の流れは残酷、周りが私の願いを許してくれない。


『美鳥、テーブル確保できたよ。早くきなさいって』


 ホールの中程からミッチの声がする。案の定、お呼びが掛ってしまったの。


 私たちは、人が座り始めた椅子の間を抜けて、二人の待つテーブルへと急いぎます。四人掛けのテーブルが空いていたようで確保してくれました。 

 二人は並んで椅子に腰掛けて、私たちを待って居ます。おかげでお兄ぃの横に座ることができます。

 近い、近い。お兄ぃと距離が近いんです。恋人同士の距離ですね。


『遅〜い。ランチ冷めちゃうじゃない。何してたの?』

『お二人とも、仲良く、おしゃべりしていたみたいですけど、何を話していたんですか』

『べっ、別にな何でも無いよ』


 別に何にも疚しい事なんてしてません。貴女達が見えない所でお兄ぃが私の額に♡してくれただけなんです。嬉しい事なんです。

 そうして、お兄ぃが引いてくれた椅子に座り、トレイをテーブルに置こうとした時に、


『ふーん。なぁんでもないね。怪しい』

『ところで、小耳に挟んだのですが、朝方、風見さんが教室の皆さんに、美鳥は俺の彼女だと宣言したとか、なんとか』

『聞いた、聞いた。美鳥に手ぇ出すんじゃ無いぞって、風見さん周りに息込んだって』


ガタッ


 え! もう、そんな話がミッチ達のところへ伝わってるの。噂って、そんなに早く伝わるの? 朝の話でしょ。ミッチともカンナとも私と教室違うんだよ。驚きです。

 思わず手が緩んでトレイを落としてしましました。中のものが飛び散らなくてよかったぁ。


『『その話、本当なんですか?』』


 すかさず、二人は真相を聞いてくるんだけど、


『本当だよ。みんなの前で打ち明けた。美鳥と付き合うって覚悟を決めたんだから、別にどうってことないよ。こうすれば、美鳥に言い寄る奴が居なくなるはずだし。居ても、側に俺がいれば守ってやることができるはずだしね』


 毅然として、お兄ぃが答えてくれた。よこから顔を覗くと真剣な眼差し。そこまで覚悟してくれるんだ。嬉しい。

 私の胸の中で、ポッポッと熱いものが生まれます。それが顔を熱くしてくれるんです。キュンキュンしちゃいます。



『ヒュ〜、ヒュ〜。風見さん、やるねぇ。美鳥。あんたの彼って、すごいや。羨ましい』

『風見さん、美鳥のことは宜しく願いしますね。でも、ほんのちょっとでいいから、私のことも………』

『カンナァ』

『カンナ、あんた、そんなことばっかり、言ってると、後ろから美鳥に刺されるぞ』

『まあ、怖い』

『そんなことしません!』

『ですよね。美鳥さん、昔から優しいから。私、美鳥さんの笑顔とか大好きななんでよ』


 その後も、二人の絡みが止まりません。これじゃあ、折角のランチが食べられないじゃないの。二人は食べなくてもいいのでしょうか。

 話が止まらず、私は食べることもできずにフォークで皿の上の料理を突くぐらいしかできませんでした。


 ふう、どうしよう。声がしないけど、お兄ぃはどうしているのかな。二人の話の隙をついて横にいる彼を見ると、黙々とパスタを食べているじゃありませんか。ずるいなぁ、一人だけ食べられて。

 でも、よく見ると、本当に美味しそうに食べてる。満足そうに目を細めてパスタの味を満喫してる。

 今日のクリームスパって、そんなに美味しいのかな。少しでいいから食べて見たいな。そういえば、私にも分けてくれるって言ってたっけな。

 私が、お兄が食べているのをじっと見ていた所為でしょうか? 気づいたようで、


「どうした。美鳥。俺の顔についてるのか? ソースでも残っているのか」

「ううん、違うんです」

「じゃあ、何?」


「えっと、ですね。お兄ぃが私たち、そっちのけで食べているじゃありませんか」

「そっか、先に食べててごめんな」

「違うんです。お兄ぃの顔があまりにも満足そうで。そのクリームパスタって、どれくらい美味しいのかなって、思っちゃいまして」

「なるほどね。うん、美味しいよ。美鳥も食べてみるかい?」

「えっ、いいんですか。じゃあ。お言葉に甘えて」

「どうぞ、召し上がれ」


 お兄ぃは、自分は食べるのを止めて、クリームパスタの入った皿を私の方へ差し出してくれました。


「好きなだけ、食てくれていいからね。あっ、フォークある?」

私は、ここで欲が湧きました。ここは是非、お兄ぃ自ら………、

「そうなんですけど、違うんです」

「どう言うこと?」

「では、こう言うこと……」

私は目を瞑り、口を開けて、


アーン


 お兄ぃの持つフォークで私に食べさせて欲しいなって、切に思ったの。

 ミッチ達も見てるから、ちょっと恥ずかしいのですけど、ここは是非、お願いします。


「美鳥、流石にこの場でそれは、恥ずかしい」


ダメです。お願いします。私は口を開けて、


アーン


「だから、櫟木さんも、柊さんも見てるし」


いやです。お願いします。


アーン


「他の、みんなも見てるから」


アーン


周りの目なんか気にしません。


アーン


お兄ぃ、お願い。



 目を瞑っていたのでよくわかりませんでしたけど、微かにお兄ぃが動く気配がします。そのうち、あったかいものが唇に当たりました。私はそれを口の入れます。

 口元を手で隠しモグモグと食べていくと本当に美味しかったんです。濃いクリーム味に塩がピリッと効いてアクセントがあるって言うんですか、とにかく美味しいのです。

 お兄ぃの満足そうな顔をするのも頷けますね。


「美味しい。お兄ぃ、ありがとうございます。本当に美味しいんですね」


 ゆっくりと目を開けて。お兄ぃを見ると、辺りを見渡して盛んに周りを気にしてます。あっ、仕草が可愛い。


 では、お返しです。お兄ぃが気にしていたソイミートのカツを小さく切ってソースに絡めるの。

 フォークの先に刺して、お兄ぃの口元まで持ってきます。もちろん、ソースが垂れて、テーブルを汚さないように、フォークを持たない方の手のひらをカツの下に添えて。


アーン


さあ、召し上がれ








 

ありがとうござました。

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