嬉しい、一緒に行けるの! ランチタイム始まる。
よろしくお願いします。
幼馴染23
いざ、行かん!
ギュッて、お兄ぃの腕を抱いてみた。早く行こうって。
「みっ、美鳥。何,俺の腕に抱きついてるの。みんなから見てるから早く離れて」
お兄ぃの腕って逞しい。
授業が終わり、お昼を食べにお兄いを誘ってみました。号令の後、席に座ることもせずに、後ろへ向かいます。
偶に授業でわからないことがあると、先生に質問することもあるんだけど、今日はしません。とにかく、お兄ぃのところへ早く行かなくっちゃいけないの。
彼の腕に抱きついたまま、廊下まで引っ張って行きます。
「みっ、美鳥。美鳥さん」
「いぃの。お兄ぃ。みんなの事は気にしなくてもいいから。行こう」
ウフフ、お兄ぃ、狼狽えてる。周りの目ななんか気にしてなんかいられません。先手必勝、美鳥、がんばります。
私、焦っていたんです。だって、トイレで聞いたんです。盗み聞きとまでは行かないと思いますが、私のいる個室のドア越しに聞こえてきまして、
『昼休みにアタック掛けるよ』
最近、何度か、お兄ぃにちょっかいを掛ける、お邪魔虫の朝比奈さんの声が。彼女もお兄ぃを狙ってるみたいなんです。
ダメなんです。お兄ぃの彼女は私なんです。朝比奈さん、悪いけど、貴女は他を当たって下さい。
『要は私がその彼女より魅力的だって風見さんに見せつけてやればいい事』
確かに、私はあなたを、お見かけしたことありましたから分かりますが、朝比奈さん、あなたは綺麗です。可愛いです。活発な感じはお兄ぃ好みかもしれません。
でも、でも、お兄ぃは私のこと好きだって言ってくれたんです。愛してるって、言ってくれたんです。
『私、負ける気は毛頭ございません。見ててよね。私の本気,見せてあげるから。早速、アタックするよ。まずは昼休みからだね』
よく言うと、思います。私も負けるつもりはないです。
朝比奈さん、それこそ私の本気見せてあげます。尻尾巻いて逃げるのは、あなたです。さあ、さあ、さあさあさぁ。
「フフッ、ウフフッ」
「美鳥、美鳥さん。今日、どうしたの? 妙に積極的なんですが、どうしたんだよ」
思わず、含み笑いもででしまいます。春に再会をして、やっと、お兄ぃと二人で学校のお昼を食べることができるなんて、天にも登る気持ちなんです。少しくらい羽目を外してもいいと思います。そう思いませんか。
「どうも、こうもしません。せっかく、お兄ぃと行けるというのに、邪魔なんかされたらたまらないじゃないですか?」
「邪魔するって、いったい、誰が俺たちに、ちょっかいをだすっていうんだ」
それがいるんですよ。おじゃま虫が。お兄ぃが知らないだけなんです。
「いますよ。私達の仲をみて、やっかむ人たちが。だから行きましょう」
「けどな、流石にこれは恥ずかしいよ」
お兄ぃが頬を染めて、周りをキョロキョロと見回している。お兄ぃの恥ずかしそうにしている顔。可愛。でも……、
「だめ……ですか?」
私、待ってたんですよ。だから、お願いするんです。じっと、お兄ぃの瞳を見つめて、
「クォッ。わ、わかったよ。そんな顔されたら断れる訳ないじゃないか………」
お兄ぃは頬を更に染めて、そっぽを向きながら返事をしてくれました。やったね。私はお兄ぃの腕を抱き続けて廊下を進みます。
「お兄ぃは、何、食べます? 私は、いつもレディースセットなんです。ヘルシーですけど、美味しいんですよ」
「俺か? 最近はパスタに嵌ってるからなぁ。今日はなんだろう」
「日替わりですもんね。楽しみです」
あぁ、こんな何気ない会話ができるなんて、嬉しいにも程がありません。余計にお兄ぃに抱き付きたくなっちゃいます。
「おい、美鳥。腕を離してくれないか? 」
「えっ? なんでですぅ」
そう、言われると、尚更抱き付きたくなるのですけど、
「歩きずらいし、周りの視線に耐えられそうもないよ」
ちらっと周りを見渡すと廊下を歩く皆さんの視線を集めています。ヒソヒソ話なんかも聞こえてきますね。
私は別に、このままでも構わないのですが、お兄ぃ逹てのお願いです。聞いてあげちゃいます。
でも、その前に、エヘッ
「みっ、美鳥!」
お兄ぃの腕をお胸で挟むくらいに抱き込んであげるんです。たっぷりとお兄ぃ成分をいただいて離してあげました。
でも、このままじゃ終われない。すかさず、お兄ぃの手を握ると、
「早く行きましょ。良い席が取られちゃいますよ」
今度は、手を引っ張って、食堂を目指します。
「美鳥、そんなに急がなくても、食堂は逃げないよ。席だって、きっと残ってるって」
お兄ぃの方が体重があるから、いつもの私なら引っ張り続けるなんてできないはずなんです。
でも、今日の私は一味違うんです。力が無限に湧いて来るって言うんですか。なんでもないできるんじゃないかって気がするんです。
「ダメです。お兄ぃと食べるんなら、ここって場所を決めてるんですって。だぁかぁらぁ、早く行きますよ」
あぁ、早く、あの、テーブルに行きたい。
お兄ぃの横に座って、にっこり微笑むの。そして、あ〜ンってするの。
お兄ぃへの想いの詰まった心が体を動かします。足を前に進めるの。周りの視線なんか、なんのそのです。
同じ方向へ、進む人たちを縫うように進んで食堂の入り口へ、横に掲げられている今日のメニューを、早速見ます。
「え〜っと、パスタ、パスタはっと……、あった。あった、ありました。お兄ぃ、今日はベーコンとほうれん草のクリームスパなんですって」
白いお皿に上には、クリーミソースに絡まれたベーコンの赤身と緑鮮やかなほうれん草がパスタと絡まって、見た目にも美味しそうな雰囲気を出しています。
「ホワイトソース系かぁ。なかなか、食欲を唆ってくれるよなぁ。うん、俺はこのクリームスパにするよ」
私の横で、同じメニューを見ている彼が、楽しそうに呟きます。
お兄ぃ、パスタが好きだものね。なら、私も食べてみたいな。後で、お願いしちゃお。
「私も、食べてみたいな。少しでいいから、食べさせてね」
「いいよ。ところで、美鳥の食べてるレディースセットってどんなのだ?」
「それはですね。えっと、今日のセットは、五穀米と一口カツですね。あっ、ソイミートって書いてある。オリジナソースがかけてあるそうで」
「ソイミートって、大豆だろ。本物じゃないんだ。味はどうなの?」
「食べた感じ、一緒でしたよ。ちょっとあっさりかな」
二人でさり気なく、ご飯のことで話ができる。なんて嬉しいことなんでしょう。今日もそう、明日も、これからずっと一緒に食べられるんですね。
「大豆を使っているから、とってもへルーシーなんですよ。タンパク質もとれるし、食物繊維も入ってる」
「そうか、ボクサーが減量中にカロリーコントロールに使ってるって言うからな」
「そうなんですよ。他にかぼちゃのサラダに大豆のアラビアータ。ブロッコリーと卵のスープに、野菜ジュースまでついてますって。あっ、デザートにキャロットケーキですって」
「結構、豪華だね。食べれるか?」
「それが、ワンプレートに収まってて、量も私にはちょうどいいですよ」
「そうか。以前、ダイエットて苦しんだ美鳥には、ぴったしだね」
「もう、お兄ぃったら。酷いです。昔のことなのに。あれだってコトリが悪かったんですからね。お兄ぃだって共犯なんですから」
そうなんですよ。初夏の縁日の時に、ゴッツンコしてコトリと私の意識が入れ替わってしまったんです。その時に私の体の中にいるコトリが出店のものを食べ漁ってしまったんです。お兄ぃも一緒に食べ歩いてるし。
あの時、止めてもらっていたら、お腹ポッコリなんてならなくて、その後のプールっだって、もっと大胆な水着を見せられたのに。
本当に残念でしょうがないんですからね。来年こそ、すごいの見せてあげますからね。お兄ぃ。
「別に気にするほどじゃなかったぞ」
「乙女の気持ちがわからない、お兄ぃなんて知りません」
「ごめん、ごめん。まっ、今はいいんだろ」
「なんとか、元には戻しましたけど……」
「なら、いいじゃないか。来年、またプールにでも行こうよ。その時が楽しみだよ」
「はい」
そうですね。来年もあるんですものね。まだ、暑いから、次の休みに誘っていただいても構わないのですが。
あっ、水着。新しいの買うのに、お小遣い足りない。下着とか、メイクとかに使ちゃってピンチなんです。
アルバイトでもしないといけませんね。ウチの高校、アルバイト、okなんです。
さてとメニューが決まったんで、キッチンスペースへ行こうとしたんですが、
「あぁ、美鳥。それに風見さんも⁉︎」
「美鳥さん。お隣に一孝さんもいらしゃるのですね」
突然、背中の方から記憶にある声が二人分、聞こえてきました。
私とは、別にクラスなんですが小学校から仲が良い、ミッチとカンナが私たちを呼び止めます。
昼時ですから、みんな食堂に来るのは当たり前です。他の時ならよかったのですが、今日はちょっと、タイミング悪いです。
折角、二人だけで食べようとしたのに。ブツブツブツ
ありがとうございました。