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年下幼馴染は同級生 でも1/3は俺が嫌い  作者: つむら湯
変わっていくもの。変わらないもの
170/174

やらかしたぁ

よろしくお願いします


挿絵(By みてみん)

 後少しで授業が終わる。


 お願い,時間よ。早くすぎて。で,ないと………


 お臍の下がジンジンしてる。もしかしてお腹が膨らんでいるのかもしれない。

 さっきの休み時間は、美月やアヤ、周りの皆んなにおめでとうって言って貰えたのは嬉しいのだけれど、行く時間がなかったの。その時は、少しぐらい我慢できるかと思ったけれど、もう限界。力を込めて閉めておかないと大変なことになりそう。

 あっ,でも入れすぎてもダメなのよね。加減がなかなか難しい。 そっちに気を取られて先生の言うことが頭に入っていってくれない。後で先生にに聞き直さないといけないな。

 我慢を続けていくこと数刻。とうとう、先生がテキストをパンと閉めた。


 3時限目の授業は英会話なんです。この時間は英語で話さないといけないの。

 得意かどうかと言うと、ちょっと苦手かな。ウチではパパもママも澱みなく平気に話せるから羨ましい。

 でも,そんな2人に憧れて部活は英会話部にしました。私も英語で話しができるようになると良いな。 

 お兄ぃはどうなんだろう。気になるのよね。


''We’re finished''

 先生が今日の授業は終わりと告げる。

''All rise''

 さあ、みんな、立ち上がって、


 私はクラス委員。みんなに号令をかけなくちゃいけないの


''How was today’s class?''

 先生が今日の授業はどうでしたかと聞いてきた。もちろん


''Good, thank you''

 良かったですよ。ありがとうございます。


 先生へみんなで揃えて返事を返す。


''That’s all for today.''


 先生はみんなの返事に満足してくれだようね。本日の授業はここまで何だって 


''Bow''

 礼! みんなあ。頭を下げてくれるかなあ、


''Thank you, ashiya sensei''

 芦屋先生、ありがとうございました。クラス全員で感謝を示します。


''See you next time''

また、会いましょうだって。はい,先生,次の授業もよろしくお願いします。

先生は笑顔を残して教室から去って行きました。


「着席」


先生がいなくなったので,日本語で言うの。すると、みんなの雰囲気が変わった。授業ということで力んでいた肩から力が抜けてようで、緊張感が抜けて、教室の中の気配が弛緩する。


 ふう,私のお仕事終了しました。でも、直ぐに動かなくちゃいけない。


「美鳥、いいなあ、澱みなく話せて。私にもコツを教えてくれる?」


 ツンツンと背中を押された。後ろの席の歩美が話しを振ってくるの、でもね、


「ごめん、歩美。またの機会にさせて。私、先に行くね」


 いつもは連れ立っていくのだけれど、私の顔を見た歩美は、


「ん? 行ってきな。私も直ぐ行くから」


 私の悲壮な気配を察知して,ニンマリと笑いながら送り出してくれた。

 下腹部から,もう限界だもん。早く行ってとシグナルがひっきりなしに登ってくる。悲惨なことにならないように私はさり気なく立ち上がり、そして素早く教室のドアに向かっていく。

 ふと、振り返って教室の後ろにいる一孝さんの方へ目をやると、私の視線に気づいてくれたようで、ニッコリと笑ってくれたの。心臓がドクンって跳ねたの。胸が熱くなって頬が染まるのが分かっちゃった。

 彼の所まで跳んで行きたいのは山々なんだけど、退っ引きならないことになっているの。

 ごめんなさい。今は貴方のお誘いをお断りしないといけないの。こんな悪い私を許してね。

 せめてと思い。彼に向かって軽く手を振り笑顔を送ってあげる。そうしたら一孝さんの頬も赤くなってくれた。

 私の思いが届いたのかしら、嬉しくなったけど、直ぐに今行かなきゃいけない状況に気づいて、後ろ髪を引かれつつ、教室を出た。


 壁には『廊下は走らない』の張り紙。

 はい,私は走りません。何気なく楚々と極力早く歩いていく。真っ直ぐに前を見て眉間に皺をよせず、薄くにっこりと軽く俯くかな。もちろん足の付け根に微妙な力を入れてだよ。そうしていると廊下の先に目的のピクトグラムが見えてきた。

 そう、赤くスカートを履いた女の子の絵が描かれているの。その下をくぐり,扉を開けて中に入る。中に並ぶピンク色ドアのノブのサインを確認。空いているところを探すの。

 もう、限界。

 兎に角、空いているところのドアを押しての目の前に鎮座する便座の蓋を開けてクルリと体を翻す。直ぐに手を後ろに回してスカートを捲り上げ、返す手でショーツに指を通してベロンと下ろすの。

 膝下まで下ろすんだよ。でないと大変なことになってしまいます。スカートのサイドは脇で閉めてと、残りは膝の上に集めて、お尻を便座に下ろします。

 あっと、操作リモコンの音姫のスイッチを押すのは忘れないで。だって恥ずかしいもの。


…………


 せせらぎ音が聞こえてきます。ホッとしますね。

 溜まったものを出し切ったと言うか、間に合ってよかったと言うか、幸せな気分に浸っていると、隣から壁越しにドアが開く音が聞こえてきました。

 私より先に入っていた娘がいたみたい。もう一回聞こえた。二人も入っていたんだ。手を洗う水音も聞こえて来た。それが二つ。


「蘭華、聞いたよ。昨日の放課後,風見の所に行ったんだって」

「葉月、どっから聞いたの。勿論、行ったわよ。どうにも気になっちゃって、スッキリしないのよ。痴漢から助けてくれたって言うのに、ハンカチ一枚洗っただけでよかったのかって」


 えっ、風見って一孝さんのこと? 蘭華って、朝比奈さんのことだよね。昨日の放課後、一孝さんに絡んでいた別のクラス娘。


「蘭華も物好きだねえ。あんな奴のどこが良いって言うんだ。彼奴が、もういいって言ってるんだから」

「私の気が治らないの。昨日も部活終わってから追っかけたんだけど、見つけられなかったし、目にゴミが入って痛かったし、踏んだり蹴ったりよ」


 そうだ、彼女、学校の裏山にある公園まで来たんだ。一孝さんと折角いい雰囲気になったのに、邪魔をされたんだ。思わず、ドアを開けそうになってしまいました。

 いい加減にして、一孝さんは私の彼氏だと言いたくなってしまって腰を上げたんだけど………、迂闊にもショーツをまだ履いていませんでした。

 彼女の話に気を取られてしまったの。飛び出したのはいいもの、物笑いの種にされるところでした。

 危ない。危ない。

 仕方なく、ソォ〜とショーツを引き上げてスカートを下ろして壁越しに2人の話しを聞くしかありません。


「だからね。昼休みにもう一度アタックかけるよ」

「もう、いい加減にしときなよ。さっき、小耳に挟んだけど風見、彼女がいるらしいよ。教室でぶちまけたらしいよ。『俺の彼女だぁ』って。彼奴、馬鹿じゃないの、止めとき、止めとき。馬鹿が映るよ」

「そこまで言う? 酷いなあ。でも………、そっかぁ………、彼女いるんだあ」


 そう,そう。一孝さんには私がいます。正真正銘、真の彼女です。

 拳を握り締め、目を個室のドア越しに朝比奈さんを睨みつけて、1人うん、うんと頷いてしまいます。


「だからさあ、彼奴のことなんか忘れて、他の優良物件にしなよ。この前、告って来たラグビー部のバイスキャプテンなんか、どうよ。体も逞しいし、しっかりとしてると思うよ。真剣な顔で蘭華見てたしね」

「ああ、あの彼ねえ…………、やっぱ辞めとく」

「蘭華ぁ。じゃあさ、じゃあさ」

「葉月、ありがと。私のこと気遣ってくれて。でも、私の気持ちは変わらない。彼女がいる。関係ない。要は私がその彼女より魅力的だって風見さんに見せつけてやればいい事。ああ、燃えてきたぁ」

「蘭華、あなた」

「さあ、さあ、休憩時間終わっちゃうよ。早く教室戻ろ」

「蘭華」

「私、負ける気は毛頭ございません。見ててよね。私の本気,見せてあげるから。早速、アタックするよ。まずは昼休みからだね」

「ちょっと、待ちなさい。蘭華、蘭華ってばあ」


 ドアが開き、2人の話し声が遠ざかる。カチャッと音がしてドアが閉まり、人がいる気配がなくなった。

 私は、そおっとドアを引き、外を探る。


 えっ、朝比奈さん、お兄ぃにアタックかけるって、どう言うつもり。お兄ぃには私がいるんだよ。それを知ってて、どうして。


 ドアノブを握る指先が震えてしまう。昨日,見たけど彼女は,私から見ても綺麗だ。それに可愛い。天真爛漫で話方もハキハキしてる。私なんかじゃ勝てないかもしれない。

 でも、私だってお兄ぃ歴10年以上あるんだよ。想いの深さは負けない。

 それでも,微かに不安があるの。お兄ぃは、私を好きだと言ってくれた。

 でも、本当なの? もしかして,本当は明るくて、綺麗で可愛い朝比奈さんみたい娘が好きなんじゃなの。

 もしかして………もしかして…… ずぶずぶと気分が沈んでいく。


    カチャッ


 するとドアが開く音が聞こえてきたの。ピクンと肩が震える。わたしは何もしていないのに、悪い事をが見つかってしまったみたいに、


「あ〜、美鳥いたぁ」


 開いたドアのところには歩美が立っていた。彼女は中に入ると後手でドアを閉めた。


「どう、大丈夫? 間に合った?」


 宥めるような口調で聞いてきた。私を心配して様子を見にきてくれたみたい。


「もう,世も末みたいな顔なんだもん。よっぽどだったんだなってピンッと来たわよ」


 え〜っ、そんなに私って,切羽詰まった顔してましたか。我慢していたのが顔面にモロに出ていたかと思うとカァーッと顔が熱くなってしまう。

 恥ずかしー。

 教室の他の人には見られてないよね。見られていたらどうしよう。考えると教室に戻れなくなっちゃう。


「私も何度か経験あるから、その気持ち分かるわぁ。安心して、他の子達、気づいてないから安心していいよ」

 

 え〜。歩美、貴女、いつも何食わぬ顔で、席を離れていたのに気づかなかったよ。流石としか言いようないな。

 そっかぁ。皆んなにバレて無いかぁ。よかった。よかった。

 安心して思わず、フゥーって吐息が出てしまいます。気持ちも落ち着いたところで、


 あっ


 まだ、手を拭いていない。慌てて洗面台に向かい、ハンカチを出そうとスカートのポケットに手を入れようとして、


 あれ?


 上手に指が入らない。

 なんでえっ。くしゃくしゃになった生地が指先の行く手を遮るの。


「み、美鳥、貴女」


 歩美の驚く声が聞こえて来た。


 えっ、何?


「あんた、やらかしてるっ言う自覚ある?」

「えっ?,何を」


 思わず、キョトンとした顔をしたと思う。一体、何をやらかしたんだか、


「プフッ、あなた、もっと大人っぽいの履いてるかと思ったけど、縞パンなのね。まあ、キャラパンよりはマシかな」


 歩美、なんで私の履いているショーツのことわかるの。確かに、今,履いてるのは………、


「えっ?」


 思い当たることがあって、頭をできるだけ後を見るように捻ると、丁度、見えた洗面台の鏡には、捲れ上がったスカートの下に黄色いストライプが見えた。

 幻かと思ったの。だから反対側に体を捻って見てみる。


あ〜


 ショーツを引き上げながら立ち上がる時に、スカートを下ろしたつもりが裾を挟んでしまったみたい。柔らかそうなお尻が丸見えになってました。


 いやあぁー! 乙女のピンチです。

 この場にいるのは歩美だけで良かったです。私は手でお尻を隠すと


「見た?」

「ばっちし」

「いやあぁー!」


 先ほどとは違う意味で頬が熱くなる。足はジタバタしてしまうし、困ってしまいました。


「ねえ、歩美」

「なあに」

「このことは、貴女とだけの秘密にして。お願い」

「うん、いいよ。実は、私も、よくやらかすのよ。美鳥の気持ちはう〜んと分かるから、内緒にしといてあげるよ。安心して」

「あっ、ありがと………」


 よっ、よくやらかす!? 歩美が? なんか、そんな感じしないるだけど。まあ、ガード固そうな彼女も、しでかすぐらいなんだから、私がやらかすのも頷ける。安心できるかも。

 ちが〜う。もし、あんな恥ずかしいカッコのまま、知らぬ顔して廊下を歩いてみなさい。アイツヤバくねって言われちゃう。一孝さんにも知られちゃう。そんなのいっやあ〜。

………気をつけないと、


 そんなこんなで、一人あたふたしていると、ドアを開き、ガヤガヤと女の子たちがトイレに入って来た。

 慌ててをスカートの裾をショーツから引っ張り出して、バンパンと整えると、そそくさと洗面台から離れてドアへと向かう。歩美以外に見られませんように。


「じゃ、歩美。先に教室に戻ってるよ」

「了解」

「さっきの件、内緒でね。絶対だよ」

「はは、了解」


 なんか、含みのある歩美の笑顔に押されて、廊下に出て教室へ向かいました。恥ずかしくって朝比奈さんのことも何処かへ飛んでいってしまいました。

 でも、ううっ。恥ずかしいかったよぉ



 そして、教室に戻り、次の授業が始まった。でも、朝比奈さんの話が頭の中でぶり返し気になってしまって授業どころじゃなかった。

 放課後、先生の所に行って聞き直さないとといけない。怒られるなぁ。


 そして、授業が終わり、


『起立、礼、着席』


 皆んなに号令をかける。

 さあ、行くよ。お兄いのとこ。ランチを一緒に食べるの。

 私はギュッと手を握り、踵を返して一孝さんの元へ向かった。亜麻色の髪とスカートが翻る。



「お兄ぃ、一緒に食べに行こう」

とびっきりの笑顔を一孝さんに向けて彼を誘うの。誰にも邪魔はさせない。











ありがとうございました。


挿絵(By みてみん)

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