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boisterous dance

よろしくお願いします


 ダイナーガールズのビデオ撮影が終わり,スチル撮影をしている。三人揃って団扇を持っているところ奏也さんが撮影している。立ち姿、テーブルについての撮影や団扇を構えて踊りの型をとって、それを撮っているんだ。

 ライトは瞬いている時に俺たちはと言うと,ただ見ているだけ、暇してしまう。


「風見さん。まだ残りありますから、私たちだけで楽しみません?」


 ミッチさんが提案してくれた。


「そうだね。どうせ見ているだけだし、スチルの撮影なら音とか出ても邪魔にはならないかな」

「そうそう、楽しまなくっちゃ」


 早速、ススキ花火を持たされた。点火用の蝋燭も消されていたんで点火用のチャッカマンで点けておく。


「風見さん、美鳥の浴衣が綺麗でしたね」


 カンナちゃんが近づいてきた、


「ああ、確かに綺麗だね。俺のイメージは白地に金魚柄の浴衣だったんで、新しい浴衣にドギマギしてるよ」

「ですよね。私もドキドキしちゃてます。なんか、胸の奥で新しい扉が開いてしまいそうで」

「おいおい,美鳥を変な世界に連れて行かないでくれよ。美鳥はノンケだよ」


 花火の光がカンナちゃんの顔をゆらめくように照らしていく。彼女は怪しい微笑みを見せた。美鳥と同様で、この子も大人に成長しているんだね。


「ふふ、そうでしょうか? 実は、そちらの住人かもですよ」

「やめえぇ、やめよう」


 怪しくなり出した雰囲気を散らすつもりで手扇を左右に振る。


「とにかくダメだからね」

「はあぁい」


 本当にわかっているのかな。俺を揶揄っているだけなのかはわからない。本人の胸の内だからね。

 花火の火が白銀色に変わる。1番明るくて1番長く持続する色だ。


「カンナちゃん,見てて。みんな,やるだろ」


 俺は花火の持ち手を上下に振るう。光の残像が波の形を描く。左右に振るうと、残像が蛇行していく。持ち手の先で円を描くと幾つもの輪っかが目の中に映し出されていく。


「そうです。手持ち花火って残像で色々と描けるんですよね」


 早速、彼女は花火の先で波型や、輪っかを描いていく。


「これ、読めるかない?」


 俺は、手首をコネコネっと動かしていく。おお、なかなか難しいぞ。

 上から下に一本下ろす。跳ね上げてまた下ろすけど、クイって手首を返すんだね。そしてクルッとクイっと,フルフルスィ、フルフルスィンそしてまた、クルッとクイっ。


「どう? わかるかな」

「え〜っと」


 カンナちゃんは花火の筋を指でなぞる様に動かして、


「ケイ、ええ、ウンヌ、エー あっ! カンナ、私だあ」


 パァッと彼女が笑顔になる。


「正解。よかったよ。読んでもらえて、アハ」


 筆記体で一筆書きをしようそうとするだけと、すごく考えるんだ。なかなか一通りには行かないんだね。


 「じゃあ、私の名前も書いてもらえますか? カンナばかり狡いです」


 俺の側に来たミッチさんが抗議の声を上げる。


「了解、了解。怒らない! じゃあこうかな」


 俺は,新しいスズキ花火に火をつけて、空中を謎するっていく。緑色に燃える火種から、尾を引く様に火花が噴き出している。


  フルフル,フルフル,スイン。スイットン、クルン,スイスイスイン、ストン。


「どうだ」


 描き切って、ミッチさんに聞いてみた。


「凄い。ちゃん読めた! 読めたよ。一孝さん! 一孝っち!」

「一孝っち?」

「お見事なお手前、褒めて遣わす。褒美じゃ。一孝っち」

「ははあ、有難きしわわせ。なんてね」


 ははは、ふふふ、ほほほ


3人みんなで笑いました。

 そこへ、


「なんか楽しそうな声がしますね。私を除け者にしてえ」


 ズンズンと

肩を怒らせ、眉を怒らせて美鳥がやってくる。

 うゎ,ちょっとご機嫌斜めだあ。なら、これで、


 「美鳥! これ読めるか」


 下から上へ,花火を擦り上げる。上へ来たところで下にループ、クルリン、クゥイン、クリクリン。


 俺は美鳥からでも読める様に逆さ文字で描いてみる。なかなか難しい。最後にクリュクリンクッ、クルン。


 美鳥は、目を細めて、光の筋を追う。読めてきたのかな。段々と表情が解れて、笑顔が溢れてくる。


「一孝さん! こんな,みんなのいる場所で………」


 彼女は赤く,染まっていく頬を手で押さえながら、


「恥ずかしい,でも,でも,嬉しいですぅ」


 立ったまま,クネクネとしている美鳥を見ていると、こっちも嬉しくなるね。 

loveのスペルを綴ってみました、最後にハートを添えて。


 そんな俺たちを


「やりますねえ、男の子」


 美華姉も微笑ましく見ていました。


「私もやろっと」


 早速,美華姉も花火に火をつけていく。


「和也,見えてますか」


 手を振り上げて、空に大きなハートの残像を残していく。

そして、持ち手を持ってクルンクルンと捻って回っていく。


「美鳥も一緒に」


 誘われて、美鳥も花火に火をつけた。

 2人並んで,クルンクルンと回って光の軌跡を残していく。

 持ち手の先で円を描いたり,波を描いたりしている。向かい合って腕を交互に上下させてシンクロさせていったりした。

 

 美鳥が笑顔を見せる。美華姉も笑顔になっていく。美桜さんも奏也さんも和也さんも笑顔になって、2人の舞を楽しんだ。

 その2人にミッチさん、カンナちゃんも混ざっていった。琴守家のガーデンで光のページェントが始まった。


 そうして宴もいずれは終わっていく。


「すいません。私たち,帰らないといけないです。今日は、ありがとうございました」


 と、美鳥の友達2人の帰宅で花火の終了。2人は美桜さんが車で自宅まで送っていった。


「一孝くん、この後どうだい? みんなでワイワイやろう」


 奏也パパさんが口元でコップを煽るジェスチャーをする。


 俺は、


「いえ、もう少し、美鳥と楽しんでから,そっちに行きます」


 と答えた。


「もう,花火も残っていないんじゃないのかい?」


「いえ、まだありますよ。線香花火が」


美鳥と2人で楽しもうと思う。

ありがとうございました。

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