三人娘?なら,やりましょう
よろしくお願いします
美鳥が具を選んだ巻き寿司は美味かった。俺の好みに合ったものを出してくれた。
「そっかぁ,ありがとう」
返すものが笑顔だけっていうのが、寂しいものだね。逆に美鳥の笑顔がデザートになってしまう。
ほっこりしそうになったけど、視線を感じる、それも複数。ちらっとテーブルの反対側を見ると女性陣皆さんが呆れたって顔をしてる。
「美鳥も風見さんも幸せな笑顔ね。ご馳走様」
顔に血が昇ったよ。恥ずかしすぎて誰が言ったのか、識別不能。顔を背けるしかできません。頬も熱いです。
美鳥も手で顔を覆い俯いてしまう。
そこで気がついた。
あれ、美鳥の指先。ネイルチップをつけたって言ってたな。
「ん?、美鳥。その爪の色って」
「はい?」
俯いていた顔をあげた。手も離れた。
そして指先から覗くのはチークカラーの緑色。その指の向こうには、緑色のアイラインが見える。
「緑色だよな」
確か目が覚めた時に、虚ろに見えたのは緑のラインと赤のライン。俺はテーブルの反対にいる美華姉を見る。
「一孝、何ジロジロ見てきてる? それとも私に惚れたか?」
美華姉は頬に手を当てて,恥ずかしそうに頬を染める。そんな美華姉の指先の爪は朱。
「一孝さん?」
美鳥が慌てて、声を荒げた。
「あらあら、一孝くん二股?」
違うんですよ。美桜さん。そんな紛らわしい事言わないでください。
と思いつつ、イヤンイヤンと頬に手をつけて悶えている美桜さんを凝視してしまう。アイラインはシアン、指先は青。
「なぁに、私もって、三股! なかなかやりますね。でも私には主人が」
ダメだ、これ以上言われると俺も持たないし,美鳥も尚更だよ。案の定,緑は下唇を噛み、涙で潤んだ目で俺を睨んできました。
「一孝さん………、ぐすん」
あー,やっぱり誤解しだしたよう。
俺は手を伸ばして美鳥の頭を抱き寄せた。そして耳元にそっと囁いてあげる。
「俺が好きなのは美鳥だよ。誤解するなよ」
「本当ですか? 信じてもいいですか?」
俺の服の胸の辺りの生地をギュッと握りながら、か細い声で聞いてくる。
「美桜さん,美華姉! 誤解を招くような言動はやめてください、見てよ。美鳥、泣いてますよ」
美鳥を一層抱きしめながら二人に抗議する。
「「ごめんね。やりすぎたかな」」
やりすぎたかなじゃないですよ。しかもユニゾンで。
揃って舌をチロって出して。
可愛いじゃないですか。まったく。
「そのアイメイクやネイルカラーってこと、またまあやるんですか? ダイナーガールズ」
藍染めの浴衣に
空色と紅梅色の花咲かせ
マゼンタとパープルの花咲かせ
緑に紅の花咲かせ
山吹、菜の花,からし色の帯締めて
ダイナーガールズ、浴衣バージョン顕現です。
「正解! 景品は美鳥、お持ち帰りでどう」
美桜さんは,指を立てていうし、隣ではピンポンピンポンと美華姉言ってるし。美鳥は美鳥でギュッと抱きつき返してくるし。
「そんなこと言って。本気にしちゃいますよ」
二人とも笑顔になる。
「「いいわよ」」
そこに、
「二人とも何言ってるんだい」
奏也パパの声が遮る。
「一孝くんで、遊んでるんじゃないよ。用意はできてるからみんな外に出て,出て」
と急かしてきました。
俺って遊ばれたんですか? 本気にしたのに。お持ち帰り!
ありがとうございました