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おもてなし…?

よろしくお願いします

おもてなし?


 リビングには、美華姉の彼氏の和也さんも、既に来ていた。ちょっと前はライバルとして争った仲だったんだけど、意外に気さくな為人だった。一度受け入れれば、懐は深いって事だね。

 奏也さんが入れてくれた珈琲を楽しみながらみんなで話をした。プールでの美鳥の顛末を話してみんなも楽しんでいたよ。彼女には涙目で睨まれてしまったけど。


「もう知りません。恥ずかしくって、この家にも居られなくなりました」

「ごめん,ごめん。 そこまでの事かぁ」

「はい、私の居場所が無くなりました。ついては一孝さんのとこで一緒に住もうかと」

「ハハハ。冗談だよね」

「本当にそう思いますか?」

「えっ」


 俺は、キッチンで洗い物をしている美桜さんを見る。俺の視線に気づいたのか、こっちを見て意味深に微笑んでいる。


 すいません。どうなんでしょうか?

 奏也さんもチラッと見たけど、目が座っていて話す雰囲気ではなかったね。


 美鳥は傷心したのか俯いてソファに座っている。そんな美鳥を見てオロオロとしていると、


「美鳥。ちょっと手伝ってぇ」

「はぁーい」

 って、2人は何気ない,家族のやり取りをしているんだよ。えっ、その前の深刻な話はどうなった。


 美鳥はキッチンに行く時に俺に近づいて、チロって舌を見せた。やられた。担がれれたんだ。でもなぁ、俺も腹括っていたんだぞ。ならばって。今は単身マンションだから他に借りるにしてもって考えたんだぞ。まあ今は腹の中に仕舞おう。

 いずれはだね。


 しばらくは、キッチンで2人が洗い物をしているのか、カチャカチャっていう音を聞きながら、ぼうっとしていた。

 まあ、1日美鳥達とプールで遊んでいたんだ。疲れもするよ。もしかしてて少し微睡んでいたかな。


 2人の会話が聞こえてくる。


「ねえ、美鳥。夜は手巻き寿司パーティしようかと」

「いいよ。お寿司好きだもん」

「そうね。美華達も帰ってきて、大勢だからね。そこで美鳥のお友達もよぼうかと思うんだけど,どうかな?」

「ミッチとカンナも呼んでいいの!喜ぶよう。ウチに来たいって言ってたの」


 2人が来たら、美鳥のあれやこれやと話してくれるに違いない。真っ赤になってプルプルと我慢している美鳥が見えるよ。

 ふと、視線を感じる。そちらを見ると美鳥が俺を見てる。ジト目で凝視してくるんだ。


『余計な事言わない』


 はいはい、静かにしてますよ。

おかげで瞼が重く…


 2人の会話が耳に入ってきた。


「そうそう、具は何にしようか?」


 美桜さんは美鳥に聞いている。


「漬けカツオは外せないよ。タレの味が染みて美味しいの」

「多分そういうなって思って仕込みは終わってる。マグロも細切りにしてあるよ。マグロのたたきもあるしね」

「烏賊とか甘エビは?」

「細切りしてるし、頭もとったよ」


 美鳥はゴクンと唾を飲み込む。


「じゃあさ、サーモンとかハマチは?」

「もちろん、そっちも用意してるわよ」

「大根やにんじんの細切りやブロッコリーの新芽や貝割れ大根も入れて、マヨネーズであえて」

「ツナも解してね。コーンも入れて。さけるチーズも入れたりして」


 美桜さんものってきたのか指をフリフリ、


「厚焼き卵も用意しましたぁ」

「いくらは?」

「美華ちゃんが好きだからね」

「私も好きだし」


「それでね、今日は和也さん、一孝くんも来てるでしょ」

「うん、そうだね」

「だから、お肉も用意しました。牛や豚肉を甘辛くして」

「じゃあ、海苔じゃなくてサンチェかなあ」

「用意してあります」

「さすが,ママ」


 そして美桜さんが美鳥の額に指を当てて、


「美鳥ちゃんのために蒸したササミを解してあります」

「そうなの」

「ごまだれや味噌タレも作ったからね。これならいいでしょ」

「ありがとう、ママ」

「えへ、内緒でひきわり納豆も用意してあるの。味噌とかキムチを混ぜて食べるのよ」

「私も食べられそう。えへ」


 おっ、美華姉も入ってきた。


「生ハムはあるの? 鯖の水煮とか烏賊の塩辛なんかもいけるよ」

「なんか,お酒のツマミみたい」

「これが美味しいのよ。大人になればわかるよ」

「どうせ,私は子供舌ですよー」



 聞いていて、豪華で美味しそうで、みんなでワイワイ楽しめそうだよ。




「さあ食べようか。みんな」


 時間も過ぎ、用意も整ったんで、奏也の音頭で、手巻き寿司パーティが始まった。

 すると美鳥が近づてきた。


「一孝さんは何にします?」


 手に四角く切った海苔をのせ、酢飯をよそっている。

 

「巻いてくれるんだね。ありがとうな」

「はい」


 周りを見ると、美桜さんは奏也に寄り添い、手に持つ酢飯に大皿から具をとり、のせている。その近くでは、美華姉が和也さんのリクエストを聞いてサンチュに肉をのせて巻いている。それを微笑みながら、和也さんの口に運んでいた。

 美鳥もリクエストを待っていてくれる。


「じゃあ、カツオに干瓢に胡瓜かな」

「はい」

「ああっと、卵焼きの切ったものね」

「はい」


 ニコニコと最高の調味料を一緒に巻いてくれた。

そうして、巻き終えるとあろうことか、


「アーン」


  と美鳥まで口を開けて巻いたものを俺の口に差し出してくれたんだ。羞恥を期待と喜びと感謝が隠してしまう。

 俺も口を開けて受け入れることにした。唇に海苔の感触がって思ったところで………



⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎



「一孝さん? 一孝さん? ねえ、ねえってば!  お兄い!」

 


◇ ◇ ◇



 後で聞いたんだ。巻き寿司を口に含んだまんま、フリーズしたと、どうやら寝落ちしたらしいと。


 美鳥、ごめん。子供みたいってごめん。俺も同じだったよ





ありがとうございました

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