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玄関劇場、再び

よろしくお願いします

 玄関は美華姉があけてくれた。


「ただいまぁ」


 背負っている美鳥が家の中へ告げていく。


「一孝です。お邪魔しますね」


 俺は,足先を振ってスポーツサンダルを片足ずつ脱いでいく。


「一孝さん。すみません。こんなことまでさせちゃって」


 耳元で、消えそうな声で謝ってくれる。なんかこそばゆい。首をすくめてしまう。


「別に良いよ。でもね、美鳥。こういう時は’すみません’じゃなくて’ありがとう'だよ」

「うん、うんうん。ありがとう。一孝さん」

「おう、どういたしまして」


 ふふ


 2人して小さく笑ったよ。

すると、玄関へ続く廊下の奥から、


「あらあら、一孝くん、ありがとうね。美鳥が手間を取らせちゃって」


 美鳥の声がしたと思ったら、着ているエプロンで手を拭きながら亜麻色の髪をショートボブにした娘がでできた。二重の瞼とバッチリと可愛く開いた目、ライトブラウンの瞳が申し訳なさそうに俺を見てきた。いつもながら驚いて頭を後ろに捻って背負っている美鳥と比べてしまぅ、


「えっなになに!」


 美鳥を驚かせてしまう。そう美鳥の母親の美桜さんです。 

 本当にそっくりで親子というより姉妹と言って差し支えないです。そんな美桜さんのは、


「美鳥、そろそろ一孝くんの背中から降りてあげたらどう?」

「もう,ちょっといたいよぅ」


 美鳥が体を揺らして駄々を捏ねる。ちょっとやめて、背中には柔らかい感触を押し付けられて嬉しいけど、落としてしまいそうで怖いよ。


「我儘言わない。一孝くんも疲れてるんだから。困ってるよ。ねえ」

「大丈夫ですよねえ。一孝さん」


 しまった! どっちについても角が立ってしまう。


「うーん」

「「ねえ」」


 返事に窮してしまった。


 そこへ、


「こちょこちょこちょ」


 玄関を閉めてくれて,そのまま、俺の後ろにいた美華姉が美鳥の脇腹を擽ぐる。わざわざ擬音を声に出して。


「キャハハ、ハハハハハ。やっ、やめて、み、みかね、え、さぁハハハハハ」


 笑いながら美鳥が体をくねらせるもんだから、脚を持っている手が外れそうになってしまう。


「ちょっと、美鳥。危ない。美華姉もやめてぇ」

「そっ、そっそうヒャハハ、そうですハハハ、あぶにゃはははは」

「そうだね、じゃあ。トドメ」


 美華姉は手刀を作り、あろうことか美鳥の脇腹に突き刺す。


「きゃん!」


 哀れ、美鳥は体を硬直させてしまった。堪らず俺も抱いていた太ももを離してしまう。そのままズルズルと美鳥は俺の背中をずり落ちてしまい。地面でしゃがみ込んでしまった。


「お姉ちゃん、ひどい! 私が脇腹弱いの知ってて」


 美鳥は美華姉を仰ぎ見て抗議する。


「いつまでも駄々こねてる、あんたが悪いよ。一孝だって疲れてるだろ。ここまでお前を背負ってきたんだよ」


 美華姉と俺を交互に見て、美鳥はしゅんとうなだれる。


「ごめんなさい、一孝さん。我儘言いました」

「別に気にしてない。大丈夫だよ。美鳥の1人や2人、軽いもんだよ」

「一孝さん」


 お、美鳥の笑顔。いただき!


「ダメよ。甘やかしちゃ。こういう時は、しゃんと言わないと」

「ママまで」


 美桜さんまで一気呵成と美鳥を責める。


「まあ,まあ」


 俺は美鳥の前に体を移し、2人を宥めにかかる。

「こいつもプールに落っこちたりと、大変な目に遭ってるんです。勘弁してやってください」


 しゃがんでいる美鳥の頭がちょうどいい高さにあったんで,撫でてあげる。そのあたりから嬉しそうな雰囲気が上がってくるんだね。

そんな時、


「玄関がにぎやかで楽しそうだね」


 奥のリビングから奏也さんの声がした。美桜さんのダーリンで美華姉、美鳥のパパさんです。

 

 「一孝くん、美鳥が色々とお世話してもらったみたいだね。せめてというわけではないけど、珈琲を入れるから、こっちに来ないか?」


「はい、わかりました」


 俺に撫でられて,とろけている美鳥にも声をかける。



「さあ、美鳥も行こう」

「はあァーい、一孝さぁん」


 ちょっと撫ですぎたかな。


「ほらっ、捕まって」


 しゃがんでいる美鳥に手を差し出して捕まってもらう。そして引き上げた。


 のだけれど、一瞬視界がふれた。


「あっ」

「きゃあ」


 俺の体制が崩れて、引き上げていた美鳥のバランスが崩れた。手を振って立て直そうとしているけどうまくいかないようだ。終いには俺に抱きついてきて事なきをえている始末。


「ごめんな。びっくりしただろう?」

「えぇ、もうそれは。でも、どうしたのですか?」


 驚いて目をパチクリしていたんだけど、だんだん顰められていく。


「なんか、立ちくらみかなあ。ふらっときたよ」

「大丈夫なんですか?」


 美鳥は下から俺の顔を覗いてくる。


「わリィ、もう大丈夫だよ」


 心配そうな顔をさせてしまった。ごめん。俺のせいでーそんな顔をさせてしまった。誤魔化しではないのだけれど,、


「奏也さんが呼んでいるから早く行こう」


 俺は彼女の背の方に回り込み、背中を押してリビングに通じる廊下を進んでいく。


「誤魔化さないでくださいよ。立ちくらみって疲れてるのなら休まないと」


 美鳥は振り返り,振り返り、俺を見ようとしているけど、俺はぐんぐん押してやってリビングに向かった。


「ちょっとちょっと一孝さん」

「大丈夫。俺は大丈夫だろからね」


 そして馥郁たる珈琲の香りに迎えられてリビングに到着した。







ありがとうございました

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