表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/175

転落

遅くなりましてすみません

ザブン!


「美鳥」


 言わんこっちゃない。水の中に落ちてしまった。

 浮島を渡るアトラクションだけど、一筋縄にはいかないようだ。トラップで沈むものがある。美鳥が見事に踏み抜き、落ちてしまった。

 でも、池の底はそんなに深くはない。腰の辺りまでの深さだったよ。

 美鳥は暫く固まっていたけど、ゆっくりと振り向いてきた。顔には落胆の色が、


「ごめんなさい。落ちちゃいました」


 申し訳なさそうに美鳥はいう。

兎に角、心配なこともあるんで、俺も池に飛び込んだ。


   ザップン


「きゃっ、一孝さんまで、入らなくても良いのに」


 俺が飛ばしてしまった水飛沫を顔に当たらないように手で防いでいる。


「大丈夫か? 水とか飲んでない? 捻ったところとかないか?」


 あんなに落ち込んでいたんだ。どうかしたんじゃないかと気にしてしまう。

ジャブジャブと水をかき分けて美鳥の元へ向かう。


「うん、あっ、もう、大丈夫だよ」


 健気にもガッツポーズをして笑ってくれた。

俺は更に顔を近づけて、


「本当かぁ? 前みたいに誤魔化すなよ。あんなのはごめんだからな」


 美鳥は一瞬目一杯見開くと、満面の笑顔に変わり、


「ありがと、一孝さん。本当に大丈夫。心配してありがとう」


 って微笑んでくれた。

相変わらず、美鳥の笑顔の威力はすごいよ。幸せすぎてクラっときてしまう。そんな笑顔を曇らせたくないから気にしているんだけどね。


「じゃあ、次へ行きましょう」


 最寄りの浮島はトラップはみられない。美鳥は手で足場をなん度も推して確かめている。


「今度はよっ…」


 最後までは言わせない。

 俺は水中にしゃがみ込み、美鳥に手を差し向けていく。片手を膝裏に、片手を肩甲骨に沿わせて、首の後ろまで入れていてく。そして、


  ザバあぁ


 立ち上がる。まあ、お姫様抱っこだね。


「えっ、きゃっ、かっ、一孝さん,何を?」


 いきなり抱き上げられて美鳥は慌てているけど、


「このまま、底を歩いていくよ。早いしね。足場も柔いから美鳥だと間違って捻ってしまうかもしれないからね」


 美鳥をぎゅっとだき寄せる。


「足首の捻挫も治ったばかりたんだから、また捻ったりなんかしたら癖になるかもしれない。そうならないように、行くよ美鳥」


 そのまま水をかき分けて歩いていく。


「手を俺の首に回せるかい。そうすれば安定するから」

「はひぃ」


 美鳥は素直にいうことを聞いてくれた。手を回して俺の頭を掻き抱いたんだ。柔らかい感触を胸に感じる。そして美鳥の息遣いと体の熱が伝わってくる。熱いんだね。

構わず歩いていったんだ。


「フゥ、フゥ」


 足を前に動かす度に美鳥の吐息が聞ける。気持ちの良いものだね。

そうこう歩いていきながら、ふと池の淵が見えた。その向こうには、


「美鳥。池の淵見えるか?」


 胸に当たる柔らかいものの圧力が減って彼女が首を回わして、外を見たのがわかった。


「うわぁ」


 美鳥が嬌声をあげた。






一孝さん、すごい

ありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ