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クラッときた。身構えていなくて、まともに美鳥の笑顔をもらってしまった。

よろしくお願いします。

 一孝さんの頭が振れた。彼の胸に飛び込んで、思わずも告白してしまった。

 彼は目を見開いたかと思ったら、力一杯に目を瞑って、そして私を抱きしめてくれました。


「おぉっーと、ここで勝者の彼女が登場したァ。そして胸に飛び込んでいる! ラブラブたあ!」


 いきなりのハプニングに司会の人がエキサイトして叫んでいます。


「これは、是非とも祝福のキスをー! 女神のきすをー!」


 囃し立ててきます。煽られたせいでしょうか。彼が私に顔を近づけてくるんです。

 ハグしてきて動けない私の唇に自分の唇を寄せてきてるんです。

 私は頭を振って周りを見ます。

 みんな見てる。興味深々に見てる。期待してたのしんでいるのよぉ〜。


「美鳥、それは用法、容量は要注意って言ったのに!


 ミッチが近くに寄ってきて、なんかヘンテコでわからないこと言ってくるし、


「美鳥ちゃん。そんな情熱的なキスって羨ましい。私にもわけテェ」


 カンナまで支離滅裂なことを言い出してのあるのぉ。

 一孝さんが望めば、いつでもハグ&キスはOKなのよ。

 でも、でも、でもでも、衆人監視の中だと、経験不足で私の心が持ちません。ごめん。もっと経験を積んでからにしテェ! 


 私は、一孝さんの顔の間に手を入れて顎勉強当てて思いっきり押した。頭を離そうとしたの。最初は動かない。比丘ともしませんでした。

 でも、少しづつ、だんだんと隙間が空いてきたんです。だから、ポカポカと叩いてみました。


「おおっと、これはぁ、甘叩きだぁ。彼女が彼氏に甘えてるぅー、みせびらかせているぞお」


 司会の人までエキサイトしてきました。再び、彼が唇を寄せてくる。


「お兄ぃ、やめて! 恥ずいよぉ! お兄ぃのヴァキュアぁ」


 手で防いでいたところに、


「私か変わる! 一孝さん、私が変わってチューしてもらえます」


 カンナが大変なことを言いながら、 


「えい!」


 お兄ぃの脇腹の急所に抜き手を叩き込んだ。その小さな一撃が効いたのでしょう、


「はっ、俺は何を」


 お兄ぃが意識を取り戻してくれた。良かった。でもね、今言ったことは覚えておくわ。    一孝さんの意識がお陰で戻ったから不問にするけどね。


 「ごめんな。美鳥。俺、見境なくなって」


 なんでかミッチがプンスカしながら、


「美鳥の笑顔って強烈なんだからね…気をつけてよね。どうなっても知らないらわよ」


 てっいうと私の笑顔って危険物なの。なんか酷くない?

 一孝さんを交えてワイワイやっていた。司会役スタッフの人も近づいできて彼にいくつか質問をしているみたい。




 そうこうしているうちにこんな言葉が耳に入ってきた。恐る恐る、そちらを見ると、


「和也さん」


 底冷えのする酔えない声が耳に入ってきた。


「勝って、ウォータースライダーへ誘ってくれるっていったのに」

「あ、いや、で、そのな、あぉ、ごめんな」


 力無い呟きが聞こえてくる。背も高いし身体の厚みもあるはずなのに、だんだん縮んで見えてくるのは気のせいでしょうか。


 それでも一孝さんへのインタビューが続けられている、

 そんな裏で、寒風引き荒ぶ空間ができているんだ。

 彼女が期待を裏切られて落ち込み、恨めしいさ滲む目で彼奴をさげすんでいる。ひざまづいてさえ彼女よりも背が高いはずなのに萎縮して縮んでいる様に見える。

 私も鳥肌が立ってきた。


 なんとかぁしてぇ。


 見られている彼は手を目一杯握って耐えている。そろそろ限界を超えて爆発でもするかって時に


「惜しくも惜敗なれど疾風怒濤の走りと勇猛優雅の飛翔を見せてくれた彼奴はスタッフ満場一致、文句なしのスペシャルなリワードだあ。カップルチケットをギフトさせていただきます。おめでとう。ギャラリーの皆さんも拍手!」


 司会のスタッフがあいつを指差し、奮戦を讃えて、称賛している。賞品もつくようなんだね。良かったのよ。彼は報われた様なんだね。

 ひざまづき、肩を落として萎縮していたあいつも呆然として司会を見てる。周りから称賛の拍手を聞いて、合点がいったのか、


「なんとか面目がたったか」


 彼の顔に安堵の色がつく。萎縮して緊張していた体もほぐれていった。そこへ彼女は静かにそっと優しく手を先伸ばしていく。

 彼の首を掻き抱き、小さな声で彼の耳に、言葉を注いでいったの。


「ありがとう。あなたは私の願いを聞いてくれた。私もそれ相応のものをお返ししないといけないかしら」


 搔き抱いていた腕を解き。彼の顔をじっと見つめるの。そして唇を綻ばせ、告げた。


「か、ず、やぁ」


甘い、甘い、溶けそうに甘い言葉を彼に与えていくの。


 彼の顔が歓喜に彩られていく。エクスタシィー。


「嬉しいの。私のために頑張ってくれて、とても嬉しいよ』


 再び、彼の耳口に唇を寄せていく。一言二言、話をしていくと彼奴の顔が溶けていく。


「か、ず、やぁ」


 そういうと彼女は彼奴と唇を合わせていったの。情熱に彩られた目で彼奴の目を見て、彼の頭を抱いていく。二人の唇があった途端、二人はお互いを貪りあっていった。

 

 ちょっと待て、周りに私たちも含め、司会の人や参加者の人がいるんだよ。でも、唖然として誰も動けなくなった。声を出せなくなっている。

 あまりにも情熱的でいて、甘愛い二人の仕草が周りの時間さえ止めていく。


しばらくして2人のショータイムが終わった様で


「ほぅ」


 と、吐息を出して彼女が唇を離していく。


 場の雰囲気も下に戻り、


「女神のキスは、こちらの勇者がいただいた様です。さて皆さん、ビーチフラッグは楽しめましたでしょうか? ここ、アクアリゾートでは、今後もいろんなアトラクションをご用意いたします。是非ともお楽しみください」


 司会役スタッフが最後を締めくくってくれた。

 そうしてビーチフラッグの参加者やスタッフの人混みの中から抜けて一孝さんが私のところへ来てくれた。

 もちろん私も笑顔で迎えてあげるの。それとも彼奴みたいな出迎えの方がいいのかな? 

ううん。あれは、エロチックなのね。大人すぎて私には似合わないな。


「美鳥!」


 彼が私を呼ぶ。


「はい」


 私は笑顔添えて返事をする。彼は肩口に手を掲げてにぎにぎしてる。ああそうか。私たちはこれで良い。私も肩口に手を掲げて。


 かれはいう。


「約束通り、とってきたよ」

「はい、ありがとうございます」


 そして、


   パァン


 お互いの手を伸ばしてハイタッチをする。


「やりましたね」

「おう」

「えへへ」


 笑顔で彼を迎えてあげることができた。


「で、ちょっとあの人に挨拶してくる」

「じゃあ、私も一緒にいいですか」


 そして私は一孝さんの腕に抱きついて付いて行った。

一孝さんは、彼奴のところに私を連れて近づいていく。

 近づくに連れて私は彼奴に腕を掴まれた記憶が呼び覚まされて、一孝さんの影に入ってしまった。そんな私にきがつかないまま。そういえばお姉ちゃんはどこ?


「今日はありがとうございました。なんか勝ちを譲ってもらったみたいで」

「譲るも何も、勝ちは勝ち。君がフラッグを取ったんだから、勝ちは勝ち。君の勝ちだよ」


 一孝さんは彼奴に手を差し出していく、握手をするつもりなんだろう。


「ありがとうございます。俺、風見一孝って言います」

「俺は、桐生和也という。お前のことは覚えておくよ。せっかくのご縁だ」


 彼奴も手を出して一孝さんと握手した。仲良くなったのなら仕方がない、今後は名前で読んであげる。

 私は一孝さんの背中の影に隠れていたのだけれど、仕方がないな。

 

 すると、和也さんの背中の影からローズレッドのセパレート水着を着た女の子が顔を出す。


 何かくれてるのよ。


「だあーめ、和也。これから長いおつきあいになるるだから、もっとフレンドリーにしないとね」


 亜麻色のショートヘアにオフショルダーのトップスを着て顔を出したのは、


「美桜さんの?」


 一孝さんは、見事に騙された。確かに私もこの子も顔立ちは美桜ママとそっくりなんだけど。


 一孝さんは、以前に散々いじられてるのに忘れてる。海外へ行ってそのまんまだと思い込んでいるに違いない。


「もう、少しぶりだっていうのに、忘れられたのかなあ」


 一孝さんは彼女と私を交互に交互に見だす。


 仕方ない、助け舟を出してあげよう。私は一孝さんの背中から前に回る。


「おお、美華にも聞いていたけどほんとにそっくりだ。さっきすまんことした」


 でも前に出たことで和也さんは私が誰かー気づいた様だ。


「和也、すまんかったって美鳥になにかしたの?」


 ぎくっとする和也さん。私に何かしたってバレバレだよ。


「もう、私の大事な妹なんだよ。優しくしてくれないと嫌だよ」

「あぁ、いえ、なあ」


 しどろもどろに和也さん。ここまでしてやっと、


「美鳥を妹って美華姉かぁ!」


「そうなんですの。この鈍チン」


「美鳥がぶれて2人に見えたのって俺が疲れているわけじゃなかったんだ」


そうなんですよ、一孝さん




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