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アポイントメント

よろしくお願いします。

これより第3章後半・havefanと合流になります

 バランスボールで体幹トレーニングをしている。

 いつもトレーニングしていると纏わりついてくるコトリの元気が最近ないように見える。今も、俺の腹の上に横たわり、ボケェっとしている。俺に乗っている時は重さを感じるんだ。まあ、気になる重さでもないけどね。


「コトリ、どうなんだ。元気ないように見えるんだけど」

「べっつにぃ、どうせ私なんて…ブツブツ…ブツ」 


 なんか悩みがあるようだ。あのコトリが? なんも考えていないスチャラ………

 すっ、すいません。天真爛漫なコトリが塞ぎ込むような悩みなんて、

あるのか? あるのだろうか。誰か教えてくれ。

 

 そういえば、最近、お菓子を用意しても、少し食べて、


『いらない』


 コトリにしては珍しい返事を返してくるようになったな。

 そうか、本人に聞いてみよう。明日、美鳥に聞けば良いんだ。どうやら美鳥とコトリは繋がっているらしいし。

 

 すると、スマホが震え着信音が鳴り出す。美鳥からだね。以心伝心かな。スーと画面に指を滑らせる。


「一孝です。どうしたのかあ」

「……… あっ、一孝さん」


 やっぱり元気がない。コトリを見ると変わらずグッテェーってしてる。


「何か、あったのか?」

「えっ」

「元気ないからさ」


  フゥー


 耳に当てたスマホのスピーカーから美鳥の吐息が聞こえる。


「一孝さんには、わかっちゃうんですね」


 まあ、こっちには彼女のバロメーターのコトリもいるし、美鳥の口調から、'どうしよう'が滲み出ているんだよ。


「………実はですね。……やっぱり…」

「美鳥、一人で抱えないでくれよ。俺がいるんじゃないのか?」

「…から…い…く……ないのに」


 声が小さくしどろもどろで、聞こえない。こっちのコトリもなんかもじもじしてるし、


「今から、そっちへ行こうか」


 コトリがガバッと顔を上げた。スマホからは、


「ダメです」


 コトリは起き上がり、俺の腹に座り込んで、腕でバッテンを組んで見せてき


「まだ、ダメです」

「ダメっていう感じしなかったよ。今から支度するから待ってて」


 俺は上半身を起こそうすると、コトリがしがみついてきた。


「だから、ダメなんです。一孝さんのばかぁ」


 コトリまで俺の胸に抱きついて怒ってくる。


「バカぁ」


 シャツにしゃぶりつくようにして話してくるんだ。くすぐったいって。


「わかったよ。じゃあ、なんで連絡くれたんだ?」

「あのですね。さっきまでミッチと話をしていまして、あっミッチって」


 なんか言い忘れていたのか、


「小学校の時からのお友達で」

「あぁ、名前なら知ってるよ。美鳥がいつも嬉しそうに話してる娘だね」

「はい。その子がみんなでプール行こうって誘ってくれたんです」

「いぃじゃないか、プール」

「そうなんですけど」


 まだ、何か悩んで乗り切れないようだ。


「どこいくのかは、決まっているのかな」

「アクアリゾートグランラグーンって知っています?」


 それなら、聞いたことあるよ。


「去年、出来たってとこだろ。大波を体験できるって聞いてるよ」

「そこのグループ招待券が手に入ったとかで誘ってくれたんだ」

「へぇ、グループって、何人ぐらいなんだ」

「4人なんだって」

「いいなあ、楽しんできなよ。次は俺と行こうか」

「うん。是非連れてって。じゃない。実は一孝さんも、どうだって言われたんです」

「俺もぉ。なんで」


 驚きなんでバランスボールの上で横にしていたのを上体を起こして座る形になった。


「キャッ。いきなりじゃ怖いよ」


 俺の上に座っていたコトリを抱き抱える形になってしまう。


「もっと優しくしてえ」


 コトリの声がスマホ越しに聞こえたんだろう。


「一孝さん」


 なんか言葉に棘が生える。


「コトリに変なことしてませんか」


 体勢が体勢なんで、誤魔化してはおく。


「してない。してないって、コトリをウエイトがわりにトレーニングしてるんだよ」

「アン」

「一孝さん」


 声が剣呑なものになっている。


「コトリ、ふざけるんじゃないの」

「えへへ、ごめんなさい。でもいきなりお兄ぃが起き上がるんだもん。驚いちゃって」


 コトリは頭の後ろを手で掻いている。


「私がそっちに行ってとっちめていいですか」

「こっちにくるのか。いいぞ」

「もう、一孝さん」


 プンスカさせてしまったけど、声に力が戻ってきた。


「ごめんな、美鳥。あまりにも元気ないから」

「もう、一孝さぁん」

「悪かったよ。ところで、なんで俺も数に入るのかな」


「カンナ覚えてます?」

「あぁ、あのポアッとした娘。よく、美鳥の家に遊びに来てたから覚えているよ」

「それ、本人に言っちゃダメですからね」

「そうか、気をつけるよ。ありがとうな」

「へへ、その娘と私とミッチの3人はすぐ揃ったんですけど」

「ど?」


「他になかなか見つからなくて、それでミッチが一孝さんを見たいって言い出して」

 

 そういえば、ミッチさんは話にはよく聞いたけど会ったことなかったな。


「それに一孝さんがいれば変な男たちが寄り付かなくなると」

「俺は番犬か何かかな?」

「それでいて、いい男、見つけたい。彼氏欲しいなんていうのですよ」

「ははは、わかりました。番犬引き受けましょう。俺でよければ行きますよ」

「ありがとうございます。ミッチに伝えますね」


 美鳥の声は、いつもと同じ感じになってる。話始めは落ち込んでいたけど、元気になってよかったな。


「じゃあ、頼むよ。俺も楽しみできたよ。美鳥とプールに行けるんだよ」

「私も楽しみです。そうかじゃあ…」

「ん?」

「なんでもないです」


「うおっ」


 いきなり、うめき声を出してしまった。少し目線を切ってコトリを再び見ると紺色のポリエステルの生地のスクール水着に、いつの間にか着替えているんだ。

 コトリは人じゃない何か。前もいきなり浴衣姿になったっけ。


「どっ、どうしました? 一孝さん」

「いやっなんでもない。バランスボールの上で体勢崩れただけだ」

「驚かさないでくださいね」

「ごめんな。じゃあ、ミッチさんによろしく」

「わかりました。伝えておきます。おやすみなさい」

「おやすみ」


 お互いに無理矢理、話を切ってしまった気がしなくもない。


「脅かさないでくれよ。いきなり水着に変わって」

「私がじゃないもん。私もいきなりで驚いてるんだよ」


 そうなんだ。すると美鳥が水着を意識したってことかな。まあ、当日、美鳥がどんなのを着てくるか楽しみにしよう。

 すると、コトリがお腹に手を当てて、ショボンとしてる。

「あれ、コトリどうした? お腹でも痛いか?」

「なっなんでもない。乙女の秘め事」

「秘め事って」


 もしかして、美鳥が元気なかったのって、


「コトリ、さてはお腹ぽっこりか? この前の祭りの時に結構食べてたもんな」

「もう、お兄ぃ、デリカシーないの」


 珍しくコトリが怒って俺の胸を可愛い拳で叩いてくる。美鳥も、これを気にしていたのかな。そう気にすることないのに。


「おほぉ、ごめん、ごめん。大丈夫。コトリは可愛いよ。気にしない」

「えへへ、ほんとにー。コトリ可愛い? なら許すのぉ」


 コトリは機嫌を直して私もニッコリと笑ってくれた。うん、美鳥もコトリも笑っている顔が好きだよ。


「さて、俺も当日のを新調するかな」


 俺に乗っているコトリをおろし、バランスボールを降りてデスクに座り直してパソコンり起動した。






ありがとうございました

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