#2加護の期待と未知の世界
ここから、別の世界(異世界)に突入します。
何か夢を見ているかの様に、はっ!と、目を覚ます。
起き上がると、そこは森であるが神聖な感じのする場所。
先程までの事を思い出して、自分自身を見て見ると、身体が小さくなっていた。
「確か、神木も子供になってたとアルテが言ってたな。」
だが、身体が小さくなったとは言え、それほど幼くもなく、年齢で言えば16~17才って所だろう。
「若返ってるのか…」
そう思い自分の体を触り確かめる。
「フム、男だな。それにこの肌触り、へ~これ程違うのか…」
自分の体の一部を確め男性だと分かり安堵し、30代と10代の違いを実感する。
「しかし、これからどうするか、文明や人は存在するのか…それとも全く想像からかけ離れた違う世界なのか…」
「別の世界か…」
恐らく今まで居た世界とは違うのものと何となく理解出来る。
それもその筈、【上山 真】が今居る場所は、現代では考えられないくらいの神聖な場所だと、肌で実感出来るからである。
鳥の囀り、木々の揺めき、大地の暖かさ、何もかもが自分に心の安らぎをもたらす存在だと認識出来る。
「こんな綺麗な場所、初めてだな。」
暫く景色を眺めながら、辺りを探索する。
「ん?そう言えば、アルテから特大加護を貰ったんだっけ。」
余りにも綺麗な景色に、大事な事を忘れていた。
「確かラノベとかに、異世界転生とか異世界転移すると、特別なチート貰えてるんだよな。」
現代の小説や漫画等に登場する主人公を思い出し、自分には、どんな力が、あるのだろうかと
少し期待してしまう。
「確か…ステータスオープンだったっけ?ステータスオープン!」
確か、チート主人公はステータスとか表示されて、自分の能力を理解出来たのだが、試しに言ってみたが何も起こらない。
「ファイア!ウォーター!」
魔法とかないか?と、散々試したが反応なし。
「……おい、どうした、加護さんよ…何かこう魔法とかチート的な事ないのかよ!」
「アルテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
悔しさや、不安、加護が何かも、わからないので頭が混乱しそうに叫んだ。
少し歩きながら考えると、自分の危機的状況が手に取る様にわかる。
ステータスはわからない、魔法も知ってるゲームやアニメ漫画等の呪文も試したが、反応が全くないのだから。
「…え!いきなりピンチかも知れない。」
別の世界に来たのだから、当然、言葉の壁、その世界の常識、自分の能力や立場もわからず、武器も持たないでこんな森の中に居るのだから。
かなり凹みながらも、森を歩いてると小さなネズミかと思う程の黄色のウサギと出会う。
「お?ウサギ…小さいな。しかも黄色い。」
ウサギは警戒もしないで、走って俺の肩まで登ってくる。
「なに、なに?」
動物に慣れてない俺は、戸惑いながらウサギを撫でようとする。
「貴方は誰?」
黄色のウサギが話し掛けて来た。
「は?ウサギが喋った…え!」
ウサギが喋った事に俺は凍り付く。
「だから、貴方は何者なの?」
「えっ!あっ……俺の、俺は人間だよ?」
少しビビりながらも、曖昧な返答をする。
「人間じゃないでしょ。普通の人間には来れないし。」
喋るウサギにも驚いたが、今居る場所は人間には来れない場所らしい。
「いや、でも俺は今居るし、人間だよ?」
「嘘ばっかり、貴方からは大きな何かを感じるから出て来たんだから。」
「大きな何かってなに?俺には何も…あ!加護か?」
大きな何かと聞いて、加護と思ったのだが、俺にはわからないが、ウサギにはわかるらしい。
「加護…誰に貰ったかわからないけど、その力大事にしなさいよ。」
そう一言を言うと、ウサギは早足で去って行った。
「ちょ!加護の事教えて欲しいんだけどー!」
ウサギに加護の何かを聞こうにも、もう見えなくなっていた。
ウサギと別れ、また暫く歩くと、水の音が聴こえて来る。
近付いて行くと、川が見えて来た。
「川だ!助かった!」
喉が渇いていたので、飲めるだけ飲んだ。
「フゥ、生き返った気分だ。それにしても綺麗な水だな。魚も居るし…」
ゴクッ思わず唾を飲んだ。先程までは、余り空腹でなかったが、魚を見て腹が減っているのに気が付いた。
「捕まえてみる?か?」
不思議と釣竿を持ってなくても捕まえれる気がした。
服を脱ぎ川に入り、そっと手を握る感じで魚を捕まえてみたら、不思議と簡単に獲れた。
数十匹の魚を獲れたので、早速生で食べようと思ったが、川魚なので食べるのを止めた。
現代の川魚には寄生虫が高い確率で魚に寄生してるから、それを考えると、後で腹痛にでもなれば、大変な事になるからである。
「こうしてれば、持って行けるな。」
木の枝に頭を刺して、魚を持って行く。
「ハァ~残念。木で火を起こすにしても、枯れ葉が見当たらないし、特にサバイバル知識も乏しいからな俺。」
魚を焼こうにも、サバイバル知識や道具や材料が集まらなければ意味がないが、本当に空腹の時は食料として、食べるしかない。
更に歩くと、茸や木の実、野草等の食材が手に入り、いつの間にか俺の着物には食材だらけになっていた。
川の近辺には、人が住み着くかもと、考えながら歩き、食材を集めながら歩いてると、木で造られてる小屋が見えて来た。
日も暮れてきてるので、出来ればあの小屋で休みたいと思い、様子を見る。
小屋からは、人の気配は感じない。
「人が居るかな?」
恐る恐る小屋に近付き、様子を伺うと、誰も居ないが、調理道具らしき物や釜戸や薪等の火を起こせる道具が揃ってる。
暫く待ってたが、人が来る事もないので、日没の為、早々と小屋に入り、火を起こし、魚を焼き始めた。
「うめぇぇぇ!」
かなりの空腹だった為に、早速、魚の塩焼き、鍋には魚と野草と茸のスープを作り、木の実はデザートとして食べ始めた。
塩や鍋は釜戸の近くに置いてあったので、遠慮なく借りた。
「この後どうするか…」
空腹と喉を満たした後、小屋で寝ながら森から今までの事とこれからの事を考えてた。
「先ず、この森には食材はある。小屋もあるから人が近くに居るかも知れない、包丁ポイ刃物、少し重く大きい鍋、何個かの大きい革袋、釜戸、塩が置いてあるから、この別世界は、多少の文明がある事がわかったな。だけどあの時のウサギ、喋ったな。しかも話せた。」
異世界で、言葉が通じると言う事は、言葉の壁には不安があったが、あのウサギとは喋れたので、多分この世界の人と会話が出来るんだと、少し希望が持てた。
「今日はこのまま寝て、明日は川沿いを歩いて街か村を探そう。」
外は暗闇に包まれているので、火を消して眠る事にした。
「朝か…」
あくびをしながら、起き上がり昨日の出来事を思い出していた。
「黄色のウサギか…喋るし少し気味が悪いが、小さくて可愛かったな。あと、魚が簡単に素手で捕れるって、凄いよな。」
俺は、現時点で、この凄さの意味を、まだ全く理解出来ていなかった。
「昨日の残りの夕飯、朝ご飯にしよう。」
昨夜の残飯が目に入り、早速朝食を食べてると、味が少し変化している。
「あれ?腐った感じでもないし、なんだ?美味い事は確かなのだが、どうも昨日食べた味と違うよな。」
夕食で食べた魚の味は現代で言うと、鮭だったのが、朝食で食べてる魚は脂の乗った鯖である。
「まぁ美味しいなら、大丈夫だろ。」
味の変化はあるが、余り気にしないで食べる事にした。
「今日は川沿いを歩いて調べるか。いや、折角小屋があるのだから、この付近を調べてみよう。何かあるかも知れないし。」
そう思い、早速小屋を出て、小屋の周辺を目印を付けながら探索して歩いて、約3時間後、これまで見た事もない大きな大木を発見した。
「でっかいな~。これ、御神木って奴だろ。」
余りにも大きい大木を見上げながら、暫く感動していた。
「お!木の実が落ちてる。此方には果物もあるな。」
よく見ると、大木の周辺には胡桃の様な赤い木の実に、林檎の様な形の銀色や金色の果物が落ちていた。
「この木から落ちたやつだよな。」
見上げて大木をゆっくり確認して行くと、大木には何故か、幾つもの種類の木の実や果実が実っていた。
「果物はちょっと気持ち悪い感じもするけど、この木の実は食べてみよう。」
力を入れパキッと胡桃を割り、実を取り出して食べてみた。
「まぁまぁかな?」
それから、何十個か赤い木の実を拾っては食べ
て、腹を満たそうとしたが、当然木の実なので満たされない。
「この…銀と金、食べてみるか?毒なんてないよな…。」
少し戸惑いながらも、空腹な為、小さくコリッと噛り、毒味も含みながら食べると、濃厚な甘みと酸味が程良く、食欲を沸き立てる。
「これ、旨すぎないか?」
金と銀の果物は物凄く美味しく、しかも、食べると力が溢れて来る気がした。
「この木の実や果物で、昼食にしようと考えたけど、疲れが抜ける処か、力がみなぎって来るぞ。」
大木の周辺の果物や木の実を、小屋から持ち出した革袋に入れて、小屋に戻る事にした。
あれから目印を頼りに4時間は歩いたが、小屋が見付からない。
「もう夕暮れか、不味いな。」
どんな場所だろうと、森なのだから何が出るかわからないので、不安になってくる。
「兎に角、川を探せば小屋にたどり着くだろう。」
数分後、川を見付け、歩いて行くとあの小屋が見えた。
「助かった。早く帰ろう。」
不安と焦りからなのか、他人の小屋なのに、自分の家みたいな言動に何故か笑みがこぼれる。
「ただいま~。」
誰からも返事は帰って来ないが、助かったと言う気持ちから、つい言ってしまう。
「疲れた~。んじゃ早速夕飯にしますか。」
昨日、川で冷した下処理済みの魚と野草と赤い胡桃を使い鍋にする。
その間に、大木の果物を一つ食べ疲れを癒す。
「この果物、日本のエナジードリンクよりも遥かに高性能だ。本当に一瞬で疲れが抜けるのが良い。」
鍋も出来上がるが、赤い胡桃が原因か、鍋の汁が赤い。
「…辛い?なかなか良い感じじゃないかww」
味見をすると、口の中で辛さが広がる。
「胡桃良い仕事するじゃないか。」
胡桃を茹でると、辛味が出て来るのを知って新しい調理方法の発見で嬉しくなる。
まだ、人にすら出会えてません。
予定としては、次の話で出す積りです。
主人公の能力ですが、まだ明かせません。
作者が考えて無いだけかも知れませんがねww