表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロスキルの料理番  作者: 延野正行
第7章
208/209

menu186 因縁の料理人

☆★☆★ 単行本5巻 好評発売中 ☆★☆★


Rentaランキング3位、紀伊國屋書店ランキング10位と好調です。

こちらも是非ご賞味ください。


挿絵(By みてみん)

 近づいてきた男を見て、アセルスはすまなそうな表情を浮かべる。

 一方、ディッシュは口を結び、男を黙って見ていた。


「す、すまない。もう材料がないんだ。今日は諦めてくれないか」


「え? そ、そうか」


 コックコートを着た男は項垂れ、それ以上何も言わなかった。

 恰好からして料理人なのはあきらかだ。

 げっそりとやつれ、目には隈ができていた。


 すると、唐突に男は喋り始める。


「ああ……。オレはよ。料理人でな。店を魔獣に潰されちまったんだ。それなりに流行っていてよ。街の中でも1、2を争う店とか言われていたんだ。……その店が」


 男は両膝を地面に突く。

 顎に皺が浮かぶほど強く口を締めて、泣き始めた。


「魔獣に……!」


 涙する料理人を見て、アセルスははたと気付く。


 街に到着し、初めにやってきたのがディッシュが働いていた料理屋だった。さらにディッシュは真向かいも料理屋だったことを教えてくれた。


 直感的だったが、アセルスはこの目の前の料理人こそがその料理店の店主ではないかと考えた。

 そして、ディッシュを街から追放した人間の1人……。


 アセルスは顔を上げる。

 ディッシュの方に振り返った。


 おそらくディッシュは気づいているはずだ。

 見窄らしくなった料理人が、自分を追放した張本人であることを……。


「俺の分で良ければやるよ」


 ディッシュは差し出す。

 手には椀が握られ、ストライクドラゴンのシメ飯がそのまま残っている。


「い、いいのか?」


「腹が減ってるんだろ? なら食えよ」


「ありがてぇ!」


 料理人の男は飛びつく。

 ぷるぷるの卵に、スープを吸ったマダラゲ草の種実を見て、目を輝かせる。

 それが魔獣と魔草の料理であることもわからず、まるで財宝を手にしたように掲げた。


「いいのか、ディッシュ?」


「ああ。わかってる。でも、いいんだ」


 ディッシュは穏やかに笑っている。

 さらに木のスプーンを男に渡すと、料理人は食べ始めた。


「うめぇええ! なんだ、これ! すごく! うまいぞ!!」


 うまい、と叫びながら、夢中で食べる。


「なんて奥深い味だ。鶏、それとも魚骨か……。いや、もっと優しく、深い旨み。スープ自体にもとろみがある。これは小麦粉や澱粉粉でつけたとろみじゃない。なんてゼラチン質なんだ。つるつる口の中で滑って、旨みがこれでもかと広がっていく」


 大絶賛だ。

 ディッシュが作った料理はそれほど完成度が高いらしい。


「極めつけは卵だ。うめぇ……。黄身のコクがあって、白身もトロトロ。すげぇ……。具材が口の中であっちこっち滑って、食感とスープの旨みを伝えてくれる。まるで――」



 縦横無尽に走るトロッコ列車みたいだ!



 料理人は最後に叫んだ。


 カラリといい音を立てて、空になる。

 椀こそ見窄らしいが、中身の料理は間違いなく財宝級のおいしさだった。


「どうだ? うまかったか?」


「うまい……。こんな料理、初めてだ」


 料理人の手は未だに感動のあまり震えている。今まで食べていたものが嘘ではないかと、何度か目を擦っていた。


 それでも現実であるとわかったのだろう。

 ついに料理人はディッシュの手を取った。


「なあ、あんた! 教えてくれ!! この料理はどうやって作ったんだ!!」


「お、おい! ディッシュから手を離せ」


 アセルスが間に入ろうとしたが、男はディッシュから手を離さない。離そうとしない。


「この料理があれば、潰れた料理店を3つ、4つ作ることができる。そうだ! あんたがオーナーになって、オレが料理長をなってやってもいい!」


「貴様!!」


 アセルスが興奮する料理人の肩を掴む。


「断る」


 ディッシュはきっぱりと言った。


「連れないこと言うなよ。頼む。後生だからさ。オレにとって、あの店はすべてだったんだ。店が潰れて、オレにはもう何もないんだよ! かみさんはずっと前に出て行ったし、従業員だって田舎に帰った。オレは、オレにはもうあんたの料理しか」


「まだあるだろ、あんたには」


「へっ?」


 ディッシュはおもむろに男を指差す。


「あんたにはまだスキルがある。『火』っていう立派なスキルがな」


「あんた……。な、なんでオレのスキルを……」


 料理人は自分のスキルを言い当てられて、戸惑う。

 その顔を見て、ディッシュは笑った。


ゼロスキル(ヽヽヽヽヽ)の俺でも、人生を立て直すことができたんだ。スキル持ちのあんたなら、きっとまた料理店をできると思うぜ」


ゼロスキル(ヽヽヽヽヽ)……。そういえば、ディッシュって…………。お前! まさか!!」


 ディッシュは振り返る。


「アセルス、帰ろうぜ」


「あ、ああ……。いいのか?」


「やることやったしな」


 ディッシュは街を出て行く。


 その後ろで、料理人が喚いていた。


「お前、本当にディッシュ! ディッシュ・マックホーンなのか! おい!!」


 呼び止められたが、ディッシュは止まらない。ウォンの背に乗り、アセルスもその後ろに相乗りする。


 次の瞬間、ウォンは全速力で走り出す。


 あっという間に夕闇の中に消えていった。


この料理人については、小説1巻を是非読んで確かめてください(Kindle Unlimitedでは読み放題です)


2月2日に『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』2巻が発売されます。

ゼロスキルの料理番の好きな読者の皆様には満足いただけると思うので、

是非よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今回も全編書き下ろしです。WEB版にはないユランとの出会いを追加
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』待望の第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


ヤンマガWEBで掲載中。初の単行本が2月6日に発売されます。
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


1月10日。角川コミックス・エースから最終巻が発売です。最後まで是非ご賞味ください!
↓↓表紙をクリックすると、公式HPに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



『劣等職の最強賢者』コミックス2巻 1月19日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



6月15日に書籍発売! こちらもよろしくです!
↓※タイトルをクリックすると、新作に飛ぶことが出来ます↓
『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~』


カドカワBOOKS様より好評発売中です。おいしいチーズフォンデュが目印です。是非ご賞味下さい!
↓↓表紙をクリックすると、公式HPに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ