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ゼロスキルの料理番  作者: 延野正行
第6章
176/209

menu154 名物を広めるニャ!

☆☆ コミカライズ更新です! ☆☆

ヤングエースUP様で更新されました。

こちらの方も読んでいただけると嬉しいです。

 吸血鬼族(ヴァンパイア)名物、レッドバーンの腸詰め(ソーセージ)は、飛ぶように売れていった。


 予想以上の反響だったが、対策を用意していなかったわけではない。


 こんなこともあろうかと、あらかじめ多めにレッドバーンの腸詰め(ソーセージ)を作っておいたのだ。


 レッドバーンの鱗は建材などにも使われる。


 加工業者は鱗しか使わないため、捨てられていた肉の中で使えそうなものをピックアップし、次々と腸詰め(ソーセージ)に加工していった。


 加工業者にとっても嬉しい話だ。


 これまでレッドバーンを焼いて処理するしかなかったそうだが、1体焼くだけでもかなりの燃料や薪が必要になる。その代金が丸々浮くと加工業者は色めき立ち、ほぼ無料(タダ)同然でレッドバーンの肉を譲ってくれたのである。


 さらに竜種の固い鱗は、業者が取ってくれているため、一石二鳥だ。


 おかげで鮮度が命である魔物の肉をすぐ調理することができた。


「にししし……。もしダメだったら、みんなでやけ食いと思っていたけどよ。なあ、エーリク」


「ここまでうまくいくとは思いませんでした」


 横で腸詰め(ソーセージ)を焼くエーリクの顔は実に清々しく、また額に汗をした姿は頼もしくもあった。


 生まれ変わったエーリクを見て、ディッシュの顔も綻ぶ。


 エーリクの覚醒こそ、ディッシュにとって1番の嬉しい誤算だったかもしれない。


 吸血鬼名物と銘を打っているが、中身はまさしく魔獣料理。


 これまで人間たちが忌避し、ディッシュしかその魅力を知らなかった。


 それがアセルスたちと出会い、その後徐々に仲間を増やし、今や押しも押されるヒットメニューになりつつある。


「アイツが見たら、どう思うかな……」


 ディッシュは空を見上げる。


 自分探しの旅に出て行った偏屈な竜のことを思い出すのだった。



 ◆◇◆◇◆



「うんまぁぁぁぁああああああ!!」


 声を上げたのは、アセルスだった。


 手には、ようやく口にすることができたレッドバーンの腸詰め(ソーセージ)が握られている。


 食べた瞬間、寒さと緊張で固まっていた顔が、氷のように溶けていった。


 いや、普段ディッシュの前で見せる、食いしん坊のアセルスに戻ったといったところだろう。


「肉汁の味が独特にゃ。さすがは竜の肉ニャ」


「食感も面白いですね。粗挽きで引いていますが、普通の粗挽き腸詰め(ソーセージ)と違って、さらに食感のアクセントが効いてるような気がします」


 ニャリスと、キャリルも驚く。


「そしてなんと言っても、不思議に身体がポカポカしてくることだ。辛さというよりは、熱さを味と表現した理由も確かにわかる」


 大蒜(カルナン)やショウガを入れると、身体がポカポカするが、それと似て全身が温まっていく。


 色々なものを食べてきたが、こんなことはアセルスも初めてだった。


 これが魔獣料理の不思議なところだ。


 そして、それをうまく制御するディッシュもさすがだった。だが、今回はエーリクたち吸血鬼族(ヴァンパイア)の協力がなければ、実現しなかっただろう。


「これは商売のしがいがあるニャよ」


 ニャリスは一気に腸詰め(ソーセージ)を食べ、飲み込んだ。


 そんなに急いで食べなくても、とアセルスは思ったが、彼女には彼女の使命があったらしい。どん、と胸を叩くと、アセルスとキャリルの前に立つ。


「もっとこの吸血鬼名物を広めるニャ!」


「え? それってまだ宣伝するってことですか?」


「もういいんじゃないか。これ以上、客を呼んでも」


 アセルスが諫めるが、すでにニャリスの意志は固い。


「いいや。ダメにゃ! この場所は、実はそんなに立地はよくないニャ。大通りから少し離れているし、それに吸血鬼名物があって、今大ヒットしてることも周知することも重要ニャ。ちょっとでも、1人でも吸血鬼族(ヴァンパイア)に対するイメージを変えることが大事ニャ」


「…………」

「…………」


「ど、どうしたニャ? ニャリス、なんかおかしいこと言ったかニャ?」


 アセルスとキャリルが、キョトンとすれば、ニャリスも2人に向かって目を瞬いた。


「いや、すまん」


「今日のニャリスさんが、まともすぎて」


「どういう意味ニャ!!」


 ニャリスは地団駄を踏むと、自分の旅行鞄を2人の前に差し出した。


「これを着るニャ!」


 2人は覗き込む。


 鞄の中から取り出すと、1着の見慣れた(ヽヽヽヽ)服を取り出した。


「ちょ! これを私が着るのか、ニャリス?」


「ダメです! アセルス様に、これを着せるなんて」


「アセルスぅ、ディッシュのために(ヽヽヽヽ)何かしたくないかニャ」


「ディ、ディッシュのため……だと…………」


「今回のアセルスって、何をやったかニャ?」


「わ、私はディッシュの護衛を……」


「ほっほー。でも、ディッシュにはウォンがいるニャ。いざとなれば、任せることもできるニャ。だとしたら、アセルスいらないニャ。お腹を鳴らして、御飯を食べて、奇声を上げる要員ってだけニャ」


「そそそそそ、そんなことは――――あるかも」


 アセルスは認めてしまった。


 確かに王都まで案内したのは自分だが、かといってもディッシュの商売を助けることができたかと言えば、そうでもない。


 むしろニャリスの方がいい仕事をしてるだろう。


 こうやって指摘されてみると、アセルス自身も何か自分にできることはないだろうか、と考え始めた。


「あ、アセルス様! ニャリスの言葉に騙されてはいけません! アセルス様は十分ディッシュの役に立ってるとわたくしは――――」


「わかった。着よう!」


「いい覚悟ニャ。その潔さに免じて、アセルスにこれを進呈するニャ」


 ニャリスはアセルスに仮面を差し出すのだった。


☆☆ ヤングエースUPにてコミカライズ最新話更新 ☆☆

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コミックス3巻の方もどうぞよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 今回も美味しく頂きました。 腸詰め旨そうなですね。 吸血鬼名物は、もしや、冬の腸詰めと夏の腸詰めが有るのではと勘ぐりますね。 冬は暖かく、夏は涼しげになるその様ものでは? は、夏は、ブルー…
[良い点] >お腹を鳴らして、御飯を食べて、奇声を上げる要員 結構大事な要員!(・∀・*)
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