飴細工 2
「そこで、牽制なのです。 幼なじみ、名前は鈴木勇一って言うのですが。」 「ってちょっと待って、お金持ちってこの京都でならあの駅前ビルの鈴木?」 「そうなんです。けっこうに老舗で全国展開もしてますよね。母親同士が友人で、生まれた時からの幼なじみなのですが。 …ぶっちゃけ、会社も大きいので、婚約者とか作っておかないと周りがうるさいらしく。 で、それを、うちの法事の時にふらっと訪ねてきて、さらっとみんなの前で言いやがりまして。」
話を聞いてる間に、遊ちゃんの回りをじわりじわりと取り囲む"黒さん"執着してるなぁ……彼氏には悪いけど、既成事実を作らせないように…「いただきます」 "みえ"早っ! 「彩希より先に結婚とか、おめでたとか、まだ早いでしょう。 夢もまだ途中だし? …でもこの彼氏、ねちっこくて、策士タイプみたいね。 この子とは真逆の印象よ。」まぁ、名物キャストの遊ちゃんに抜けられるとかなり痛いんで、これからも見かけたら"黒さん"食べていってもらいましょう。
「私くらいの年齢の女子は、ハンターの目になりました。 プラス親達の牽制と足の引っ張りあいが凄くて。 おかげでその騒動をおさめるために、お見合いなんですよ。 勇一さん、私の一つ上なんだけど、子供の時から知ってるし、今さらお見合いも結婚もどうかと思うんですけどね。 その話を本人にしたら、そこで、飴細工職人なんですよ。」
「私、今お店で飴細工置いてもらってたりしてるじゃないですか。 こっちでできてることを何でわざわざカナダで飴細工職人になりたいのかって。お見合いの話が出た時に勇一さんに言われて。 私の中でもちゃんと理由があって。海外に行って英語でコミュニケーションとるのか第一の夢で、でもアメリカとかだと一人で何かあったら怖いしカナダはまだ治安もいいかな、と。 で、夢の最終型は振り袖着て、大道芸みたいにパフォーマンスしながらの飴細工なんだけど、それも、日本で出来るじゃないかと、言われまして。」 あぁ、行ってほしくないんだな。
「で、その会話が親戚観衆でなされたので、最初に戻るのです。「夢見る夢子ちゃん」って。 で、うちの親もややキレて、「とにかく、1度お見合いしてみてしっかり話なさい。お互いに利用出来るところもあるだろうし、知らない仲じゃないんだから。」って。 ぶっちゃけ、場の空気最悪で、この空気を何とかしてくれ、と、親戚同士のぎすぎすした落としどころを求めていたのかと。」
「それは大変だったね。 で、遊ちゃんはどうしたいの?」 「そうですね…実は、彩希さんにこの話するまでは半分夢を諦める方向でした。お見合いするにしても、勇一さんなら知らない人でもないし、前向きに結婚も意識してました。 でも、今は自分は自分だし、やりきってから結婚とか考えても遅くのかな、と。 一応お見合いはしますけどね。」 「そっか。じゃあ聞いたかいがあったかな?」 「はい。ありがとうごさいました。」
すっきりした遊ちゃんは、休憩を終わらせて恭ちゃんと交代している。まだコーヒーを飲んでいた私の横に恭ちゃんが座って「で、どうだったんですか?」って聞いてきた。 「うん。遊ちゃんの未来の旦那様とそれにまつわる親戚の確執の話。」 「なんですかそれは。どこの二時間ドラマですか。そもそも遊さん、予定では僕の嫁ですよ?」 え!まさかの社内恋愛結婚宣言?! 「まぁ、まだ僕の心の中だけですけどね。」 話てると恭ちゃんからじわりじわりにじみ出す"黒さん"「いただきます。」早いわ。"みえ"の食べるの。
「店内が恋愛感情で溢れると私もおなかいっぱい、相手もすっきりでウィンウィンで良いじゃないの。」
そういうものかなぁ。てか。私にも相手プリーズ。