04:幼女に抜いてもらったのでスッキリしました
「ふぅ……」
どうやら、助かったらしい。
マジで死ってやつを覚悟したぜ。
状況はワケわからんままだったが。
身体が風船みたいに膨らんで破裂する。
そんな恐ろしい映像が脳裏を過ぎったくらいだ。
今はもうなにも感じない。
金髪ロリ姫に抜いてもらったおかげでスッキリしたのだ。
そう、俺の中から出てきたとしか考えられない巨体な剣を、金髪ロリ姫は手にしている。
手にしている、とは言っても本当に手にしているだけだ。
柄を持っているだけ。
なにせその長さはゆうに7mはある。
とても持ち上げられるものではない。
剣は、引き抜いた時についたのであろう、引きずるような切り傷を床に残し、床に落ちていた。
金髪ロリ姫はペタンと尻餅をついたまま、その柄を握っているだけだ。
「姫様、こいつをどう思われます……?」
「すごく、おっきいです……」
確かにデカい。
こんな剣、アニメや漫画でも見たことない。
つーか、これ振れなくね?
だってこれキリンよりデカいよ?
持てないよね?
だがさっきのハンパない光といい、金髪ロリ姫の言っていた言葉といい、もしかしたらこれが俺の勇者の証なんじゃないか?
「おい、それが俺の勇者の証なのか?」
率直に聞いてみた。
「……わかりません」
え〜……。
わからないって、なんだそれ。
「申し訳ありません、勇者さま。ですが……」
聖剣。
それが勇者の証だという。
まるで宝石のように美しい刀身をもった剣を、勇者は必ずその身に宿しているらしい。
「こんなに大きくて、黒光りしているモノは、はじめて見ます……」
「でも剣だろ。じゃあ聖剣でいいじゃん」
「馬鹿を言うな! こんなもの、過去の伝承にもないのだ。こんな、禍々しい剣など……!」
怒られた。
禍々しい、か。
確かに禍々しいよな。
光を吸い込むような漆黒の刀身には、蛇のようにウネる赤い線がいくつも走っている。
蛇というよりは、まるでその剣の血管のようだ。
その刃に宿すのは聖なる力……とは思えないよな。
「言葉をつつしみなさい、レザリー。わたし達は美しい剣を求めているわけではないでしょう」
「も、申し訳ありません……」
今度はレザリーが怒られた。
ざまぁ!
「大事なのは、魔を払うその力を証明することで……」
あれ?
なんだ?
突然、金髪ロリ姫の声が遠くなった。
小さなが一生懸命な様子で動いているのは見える。
だけど声は聞こえない。
レザリーも何か言っているみたいだ。
なにも聞こえない。
キーン、と耳鳴りがした気がした。
空が見えた。と思う。
窓なんて一つもないこの空間で、確かに見えた。
何かが接近する気配。
風が沸騰する感覚。
そして確信。
全身の毛が逆立つような悪寒がした。
「逃げろっ!」
俺の叫びより一瞬だけ早く、地面が揺れた。
サブタイトル詐欺とは言わせない!