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イレモノ  作者: アメツチ
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神さま

その男は少し変わった男でした。

背が高くスラッとしていて、とても美しい顔をしていました。そんな男を女たちが放っておくわけがありません。しかし 皆、その男のことを知ると逃げていきました。


この男は、自分は神さまだと思っていたのです。

人が神さまなわけあるか、罰当たりめ!など言われるのはいつものことです。

しかし 男は自分が神さまだと信じて疑わないのでした。それどころか、人間は皆 神さまだと言って回りました。殴られることもありました。それでも男はあきらめませんでした。


「人は何万年も前までは、神さまだった。」

どうして人間が神さまなのですか。

「そもそも神の定義とはなんであろうか。

絶対的な力、生命を生み出すことのできる力、また生命をなくすことのできる力、ものを裁く力。考えてみろ。これはすべて人のできる所業ではないか。人類は絶対的な力で自然をも従え、また人と交われば子を孕む。そしてそこらへんのものでいとも簡単に命を奪える。裁判所では公的に裁いているが、我々も毎日何かしらを裁いている。これは悪いだの良いだのと。それに神の子だといってパンを空から降らせたわけでもない。そこにはかならず人の、何かしらの手が加わっている。わたしも私の自論すべてが正しいとは思わない。ただ、反論はすぐにはできないだろう?」


……そうですね。でも、なぜ人は神をやめたのでしょう?

「それは、人が神さまになるには重過ぎたからだ。人を生むのは良いが、ものを裁き奪うというのは、人には荷が重かったのだ。だから、神さまという架空の人物を作り上げ、それに責任を押し付けたのだ。もしかしたら そうした人間のほうが生き延びたのかもしれない。精神的に耐えられなくって、人は神をやめた。」


なるほど。では、なぜあなたは死のうとしているのですか。

「死ぬ?何を言っているんだい。僕は生まれ変わるのさ。神になるのに、このイレモノは使えない。」


生まれ変わる?イレモノ?

「そうさ。人は神をやめてしばらくすると、自分たちが神であったこと自体忘れてしまっている。それを思い出すには、このイレモノから開放される必要があるのさ。イレモノとはね、肉体のことだよ。僕たちは肉体に縛られすぎている。もっと開放されるべきだ。このイレモノに僕たちの、いわゆる魂は不釣り合いなんだよ。」



「だから僕は、生まれ変わろうと思う。

君がわかるような言葉で表すとするなら、死だね。僕は死などと言う言葉で表したくないのだが。」


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