一人の男
このイレモノは、嫌だ。
イレモノなんて嫌いだ。
イレモノなんて、壊してしまえ。
むかしむかし、とある国のとある小さな街の
とある小さな丘に「首吊りの樹」と呼ばれる
大きな大きな木がありました。
いつから首吊りの樹とよばれるようになったのかはわかりませんが、首吊りの樹と言われるだけあって、いままで たくさんの人がここで首を吊って死んでいきました。
そんないわく付きの木の下に
一人の男が立っていました。
ここで、あなたならどう思うでしょう。
「首吊りの樹にきたのだから、
首を吊りにきたんだな、なんで死にたいんだろう。なにか辛いことがあったのかな。」などでしょうか。私もそう思いました。しかし、男は言いました。
「このイレモノには飽きたから。僕は生まれ変わらねばならない」と。
イレモノ、容物、入れ物。
なんとなく、何かを入れる箱のような
ものなんだろうなぁと想像がつきます。
でも、それって不確かだと思いませんか。
イレモノってなんですか。
男は言いました
「イレモノはイレモノ。イレモノ以外の何ものでもない。それ以上でもそれ以下でもない。」
今日はそんな、イレモノに飽きて生まれ変わるために首を吊りにきた男のおはなし。