真夏の戦士たち
ジリジリと身を焦ぐ様な日照りが続き、ジージーと耳障りな程に蝉が鳴くこの季節。
青々と茂る草が広がる原野に、早朝であるにも関わらず幾人もの武装した人間が集まってきていた。
原野の東側には青い腕章をつけ、鉄筒や片側の先が鋭く尖った金属の棒、黒くて硬そうな板等、様々な物を所持した人々が立っている。
大して西側には赤い腕章をつけ、東側の人間と同じ様な物を手にした人が立っている。
東と西。向かい合い、両軍共に一歩も退く事無く睨み合っている。
両軍の間の距離は約1Km、人数はそれぞれ約500人と行ったところ。
その東軍の最後尾。軍の陣営にあたるところに、一人の若い男が駆け込んできた。
「ちょ…いえ、司令。各部隊、準備は整いました。力の無い者は前衛部隊の後ろで待機させております」
そう言われ、司令と呼ばれた貫禄を持つ中年の男は低く短く、「うむ」と頷いた。
それから少し間を開け、蝉の鳴き声が止み、しん…と静まり返った時。司令は口を開き、自軍の者共に対して言葉を放った。
「いいか! 我々は今から一つの合戦を起こす。敗北は許されん! 我々には勝利を手にするしか無いのだ! さぁ武器を持て! 敵を蹴散らせ! 勝利を手中に収めるのだッ!」
「うおおぉぉぉ!」
司令の言葉を皮切りに、東軍の者が皆一斉に雄叫びを上げた。
「諸君、持ち場に付いて構ぇい! 法螺貝の音が合図だ…音が聞こえ次第、突撃部隊は進軍せよ!」
そう言われて、東軍は臨戦態勢に入った。時を同じくして西軍も臨戦態勢に入った。
真夏の熱が籠り、体の中にある水分が全て出て行かんとする勢いで溢れ出る汗が、静かに地面へ吸い寄せられていく。
ある人間の身体から落ちた一雫の汗が、土の上で弾けたその時、法螺貝の低く唸る様な音が原野一面に響き渡った。それと同時に両軍の前衛が一気に駆け始めた。
前衛は鉄の板を持った人間で構成され、彼らが横一列に整然と並んで走るその姿は、まるで一枚の黒い壁が動いている様である。
東軍の黒壁と西軍の黒壁の間はだんだんと縮まって行き、やがて――――。
ガッキャァン!
壁と壁は激しくぶつかりあった。
「く…! 今だ! 今のうちにやれ! 俺達もそう長くは持たんぞ!」
壁になっている屈強な肉体を有した男共が声を荒らげて叫ぶ。その言葉を聞いてか、鉄筒を持った、細身だがしなやかで美しい筋肉を持った人々が、壁になっている男共の元へと走り、そのまま跳躍。男共の肩を強く踏みつけて更に跳び、何人もの人間が宙を駆けた。
跳んだ人々の撃ち、約半数は敵の長鉄筒部隊の攻撃を受け、地面へと落ちていったが、残りの 半分は敵陣地に乗り込み、内部から敵を乱そうと試みた。
鉄筒部隊が乗り込んだその頃、壁の後ろでは金属製の鋭く尖った、杭に似た物を持った部隊と、同じく鉄製で金槌の様な物を持った部隊が、せっせと手早う金属の棒を地面に等間隔に打ち付けている。
「よっしゃあぁ! 野郎共! もう一踏ん張りだ! 一気に押し返すぞ!」
壁部隊は皆で声を合わせて、敵の壁により強い力をかける。先程の鉄筒部隊の強襲もあって、敵の陣地へゆっくりと、だが確実に侵攻して行く。
それからも戦いは続き、太陽が最も高い位置に来た時、再び法螺貝の音が原野に響いた。
その音を合図に、激しい合戦がピタリと止んだ。
広い原野のうち、その大半を青い腕章を付けた東軍が占領していた。
鉄杭には紐が括りつけられ、完全に仕切られていた。パイプは、他のパイプと組み合わさって、何かを乗せるための台となっていた。
「司令! 今回も我々の圧勝です」
「うむ」と司令はゆっくり頷いた。
そこへ、敗北した西軍の司令と思しき人間がやって来た。
「いやぁ、やはりお強い! 全く適いませんわ!」
「まだまだ負けはしませんよ、堀川町会長」
「次こそは勝ちますぞ? 品島町会長」
司令…もとい町会長と呼び合った二人は、先程までの殺伐とした雰囲気を一転させて陽気に話している。
数分経った後、堀川町会長は「では、敗者は去るとします。また今度」と言って軍勢を率いてその場を去った。
パイプの上には鉄板や網が乗せられ、その上には色々な食材が乗り、鉄板焼き&BBQパーティーが始まっていた
真夏の戦士たち。それはパーティーをする為の町会VS町会の陣取り合戦に参加した町会の人間の事なのである。




