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第十二話★ 懺悔の刻

今回は、美沙ver.です。

 ひかり‥‥またこうして会ってしまった‥‥。

 私はそれ以上足を進める事はできなかった。今の私にはひかりに会わせる顔なんてとてもない。

「‥‥な訳ないじゃない!」

 またひかりの話している声が聞こえた。一体、誰と話しているの? そんな疑問を考えている最中、重大な事に気がついた。‥‥ここにいたらいつか見つかる。私はさっと物陰に身を隠した。あんまり広い屋上じゃなかったら、ひかりの声は私に充分すぎるほど聞こえた。ふーっとため息をつくと、私の気持ちとは裏腹に蒼く澄みきった空を見上げた。どうして神様は私達をめぐりあわせたんだろうか‥‥。

「のぞみちゃんって、何にもわかってないよね〜。」

 まただ。最近増えたひかりの独り言。やっぱり表では気丈にふるまっているつもりでも、精神的に限界がきてしまっているんだろうか‥‥‥。

 ‥‥逃げよう。いますぐここから逃げよう。今ここにいたって、何にもならない。そうだ、逃げるんだ。ここから出て行って、安全な教室に戻るんだ‥‥。そう決心して一刻も早く屋上から去ろうとしたときだった。


『逃げるな』


 どこかからそんな声が聞こえた。え?と思いあたりを見わたしたけど、周りには誰もいなかった。そのかわり、冷たい風が「帰るな」とでも言うように、逆風を吹いて私を教室へは帰してくれなかった。


『逃げるな』


 また聞こえた。これは何なの? 幻聴? それとも、神様の声? 恐ろしさのあまり、私は下にドサッと座り込んでしまった。これは‥‥一体何なの!? 怖いよ‥‥。でも、次に聞こえてきたのは得体の知れぬ声じゃなく‥‥

 

「‥‥みだの数だけ、強くなれるよ‥‥」


 それは風のような、透き通った歌声だった。これは‥‥ひかりの声? ひかりに気付かれない出来るだけ近い所で、そっと耳をすました。


「アスファルトに咲く 花のように‥‥」


 この歌は‥‥この歌は!!


 その瞬間、私の脳裏を幼い頃の記憶が横切った。それは、平和で毎日が楽しかった日々の記憶。この歌は‥‥私とひかりにとって忘れられない想い出の歌だった。確か‥‥泣いている私にひかりが歌ってくれたんだっけ。あの時はノドが枯れるまで歌ったな‥‥。

 その直後、美しい想い出の後ろを汚れた思い出がついてきたーーーーーーーーー。


『ねえねえ、浅野さん! 悪いんだけどこの教科書、全員分持っといてくれる?』

 初めてひかりをパシリにしたあの日。あの日の私にはまだ、迷いという人間味が残っていた。


『浅野さん! この授業のレポート代わりに書いてくれるかな〜? 全員分、ね。』

 ひかりをパシリにするのに慣れてきたあの日。あの日から徐々に迷いは無くなってーーー。


『浅野さ〜ん、万引きしてくれないかしら?』

 そしてーーーあの日。あの日の私にはもう『迷い』なんて言葉はなかったーーーーー。


 ”ねえ、美沙。涙の数だけ強くなれるって言うけど、美沙はもう充分すぎる程泣いてると思うんだ。もう泣かなくていいんじゃない? まあ、辛い時には枯れるぐらい泣いちゃったりしてもいいと思うけどな。”


 ーーーひかり ひかり、ごめんね 私ーーーゴミ以下の価値の人間だよーーーーー

 ーーーひかりだけじゃなくて たくさんの人を 私は傷つけたーーーーーーーーー


 どこからともなく押し寄せてくる罪悪感と罪の重さで、私は膝を抱え込んで音もなく溢れ出た大粒の涙をたくさんこぼした。

 ひかりは、あの時泣いていた私をあんな風になぐさめてくれた。それ以外にもひかりは、私をいっぱい助けてくれた。なのに私はーーーそのひかりをその分傷つけてしまったんだ! 自分でも私は悪い、最悪な人間だってわかっているつもりだった。だけど、それでも私は心の隅で『私は悪くない』って思っていた! 悪いのはあの時のひかりなんだって、ひかりはパシリにされても仕様がないんだって。そんな事許されるはずもないのに! そうやって私は罪の重さから逃れてきたんだ‥‥。そんなんで、変われないのも当然よ!

 ごめんなさい。謝って許される事ではないけれど、私が今まで傷つけてきた人達本当にごめんなさい。

 私は‥‥‥どうしてこんな人間になってしまったの?


 

 神様ーーー。私は、ここにいてもいい人間ですか?



 座り込んだまま手をあわせ、遠くの空に向かって祈った。

 どうか、神様。私に罰をお与えください。それでひかりや、私が傷つけた人達の傷が癒えるのならーーー。

 私の懺悔は、鐘の音が遠くに聞こえてそれが途切れても、途切れて消える事はなかったーーーー



 

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