第一話 もう一人の自分”のぞみちゃん”との出会い
『第一話 もう一人の自分”のぞみちゃん”との出会い』
自分の中にもう一人の自分がいるかもしれない。しかも性格が自分とまったく正反対の自分が‥‥‥そんな事を考えた事はありますか?
「マジ?」
学校の廊下を藤田さん達が楽しそうに喋りながら歩いている。その後を、彼女達荷物を持った私がついて行く。だけど
誰も私に話を持ちかけたりしない。
「ホント、ホント!田代ったらさー、ちょっといじめてやったらセンコーの山下にチクりやがって〜。危うく説教される
し〜。も〜、マジメにウザイし!」
「でも、浅野さんにはお礼しないとね〜。」
藤田さんがちらっと私を見る。きっと、また何か言われちゃうんだ。
「だって先生に言ってくれたもんね〜。『藤田さん達は田代さんなんかいじめてません』って。」
「単にお人好しなだけだろ?なあ、久しぶりに万引きでもしね?あ、そうだ!浅野、おまえがやれよ!」
「え‥‥‥?」
「だーかーらー、お前がやれっていってんじゃん。」
万引き?犯罪を犯すなんて‥‥‥‥ そんな事、できないよ‥‥‥‥。
「や、やです。」
「は?あたしらみーんなやってんだよ?なのにあんただけ何もしないって、裏切り行為だよね?」
「だよね〜。友達なくしたくなかったら、これぐらいやりなよ?」
私、どうしたらいいんだろう?黙り込んで考えていると、シビレをきらしたのか谷岡さんが
「ふーん。あっそ。じゃああんた、このままずっーと一人でいれば?」
と言って、私を独り置いて行こうとした。
や、やだ! 一人にはなりたくない!
「‥‥‥‥‥やります‥‥‥‥」
何故なら私は‥‥‥何よりも『独り』が怖いから‥‥‥。
「それじゃあ、浅野さん。いまからこの店のやつ盗んできてね。見つからないようにするんだよ?」
藤田さんが子供をあやすようなような口調で話して来る。私に出来るかな‥‥‥。
「んじゃ、ヨロシク☆」
何を盗んだらいいんだろう?私はお店に入って中を見渡した。何処もかしこも防犯カメラがついている。こんな所で万引きなんて無理だよ‥‥‥あきらめかけてお店の奥に行ってみた。そしたら‥‥‥あ、ここなら映らない角度だ‥‥‥‥。
(やるならいましかない!)
そう思い私は素早く棚にあった缶ジュースをバックに入れようとした。ところが‥‥‥‥
「君。何やってるの。」
いきなり店員のおじさんに肩をつかまれた。その顔は明らかに怒っていた。
(つ、捕まる!)
そんな恐怖から私は持っていた缶ジュースを投げ捨てて一目散に逃げ出した。藤田さん達を無視してしまうほど、そのときは早くどこかへ逃げ出したかったんだと思う。
「ただいま‥‥‥‥」
泣きたいような思いで家に帰ってきたときは、もう夜だった。
「おかえりー。遅かったわね。何かあったの?」
「なんにもないよ。」
「そう。着替えたらきてね。用意してあるから。あと、お父さん今日帰って来れないのよ。残念ね。」
何が残念なんだろう?色々考えながら着替えて台所に行くと‥‥‥‥
「ひかり!お誕生日おめでとう〜!!」
お母さんがクラッカーを鳴らして出迎えてくれた。うそ、今日って‥‥‥
「お母さん、今日って‥‥‥」
「あらやだ!今日はひかりの十三才の誕生日じゃない!はい、プレゼント!」
半分びっくりしながらプレゼントを開けた。中には、昔おねだりしたあのネックレス。これ、高いんじゃ‥‥‥‥‥‥私のために‥‥‥‥こんなに私の事を愛してくれる人がいるのに、私、万引きなんてしようとしたんだ‥‥‥涙をこらえて部屋まで行った後、中で大泣きした。嬉しくて、悲しくて‥‥‥‥‥‥もう、こんな自分やだ。人に何も言えない自分なんて‥‥‥‥変わりたい‥‥‥変わりたい!!
「じゃあ、変わればいいじゃん!」
え?部屋まで響くような声がした後、ボムッという音がして部屋中が煙りにつつまれた。
「誰!?」
煙がひいて後ろを振り向いてみると‥‥‥驚いた事に‥‥‥‥私そっくりのひとがいる!?
「そっくりとかじゃないよ!あたしとひかりは全く同じ!」
わ、私の心を読んだ!?すると、また読んだらしく
「読めるよ!同じ心だから。」
「あなた誰?」
「あたしはひかりの中にいるもう一人の”ひかり”。」
「もう一人の?」
夢でも見ているのかと思った。もう一人の自分だなんて‥‥‥‥でも夢じゃないのは自分でもわかってる。
「そっ。だけど性格は全くちがうよ!今のひかりみたいに、友達に何も言えない性格じゃない。」
少し腹がたったけど、話を続けた。
「なんで出てきたの?」
「元々あたしは心の奥にいるんだ。だけどひかりが強く”変わりたい”って気持ちを持ったから反動で出てきたんだよ。」
「”変わりたい気持ち”‥‥‥」
そんな私の気持ちを悟ったのか、彼女が
「安心しろよ、ひかり!あたしがひかりを”強く”してやるからな!」
「強くしてくれるの?」
「ああ!」
なんだかよくわからない所もあるけど、もう一人の”ひかり”が私を強くしてくれるんだ。そうすれば、藤田さん達とも対等に話せるんだ‥‥‥
「ありがとう‥‥‥えーっと、ひかりちゃん。」
「同じ名前ってのも紛らわしいね。あたしのことは‥‥‥そーだな、”のぞみ”って呼んで!」
「のぞみちゃん?」
「なんだか意味は似てるだろ?これからよろしくな、ひかり!」
「こちらこそよろしくね、のぞみちゃん!」
こうして私と、もう一人の私”のぞみちゃん”の生活が始まった。
ところがこの出会いが、私の人生を大きく変える事になる事を、まだ私は知らない。
続く