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愛離愛再~命の奇跡~  作者: 緋紗奈
2/2

~持病~

不良グループの相手を終えた俺は、少し汚れた服を見て急に脱力感に襲われ、その場に座り込んだ。


「………意外と強いんだな、お前。なか…ざわ、だっけか」


近づいてきたのは北城だった。


「………なんだよ、ボロボロになってるか疲れているかしているだろう俺を、追い討ちに来たのか」

「誰がそんなことするかっての。ほら、じっとしろよ」


北城はどこから持ってきたのか、小さいメディカルセットを持っていて、中から袋に入った綿と消毒液を取り出した。


「いてっ………、お前、何でここまで………」

「うるさい、ケガ人は黙ってろ。仲澤がボロボロになってるかと思って保健室から貰ってきたんだ。それと、あたしはお前じゃなくて北城」


頬に傷テープを貼ってくれた北城は、少し言葉を詰まらせた。


「どうかしたのか?」

「………いや、なんでもない」


なんでもないわけがない、というのが分かるほどに北城の肌が汗で濡れていた。


「………あ………」


北城が胸元を掴み、苦しみだした。


「おい、大丈夫かよ!?」

「………カバン、中、薬………」


カバンの中にはペットボトルと白い袋が入っていて、箱にはカプセル薬があった。


「………ほら」


北城の体を抱き起こし、カプセルを口の中に入れて水を少しずつ流し込んだ。


「………んくっ………」


口の横からこぼれ出た水がそのまま胸元へと流れ落ち、薬の影響か北城は瞼をゆっくりと閉じた。


「保健室………まだいるのか?」


眠っている人間を背負うのは簡単じゃなかった。どうにか頑張って背負うことに成功し、カバンを持って保健室に向かった。


「失礼しまーす」


中に入ると、ちょうど担当の人が帰るところだった。事情を説明すると、完全下校までは保健室にいていいことになった。


背負っていた北城をベッドに下ろして靴を脱がせ、俺も久々の疲れを癒すためにベッドの端に座った。


「………こんなに可愛いのに………」


なぜこんな性格になったのだろうか。異性に興味がないとか言っておきながら、気になっている自分がいる。もしかして俺はコイツのことが………?


結局北城が目を覚ましたのは完全下校の8時だった。見回りの警備員が鍵を閉めてくれて、少しフラフラしている北城を連れて自転車置き場に向かった。俺の自転車を取りに行くためだ。


「北城、家どこ?」

「家………なんで………?」


いつもより女の子っぽい口調に、少しドキッとしたが、それを隠すように話を続けた。


「おくっていくよ。そんなフラフラじゃ帰れないだろ」

「………家、あのマンション………」


北城が指さしたのは、俺が住んでいるマンションだった。うちの親は仕事一番でずっと働いていて、家は俺が住める広さがあればいいからとあのマンションを買った。ちなみにかなりの高級マンションらしいが、他のマンションに住んだことのない俺には全く分からない。


「なんだ、同じマンションだったのか。何号室?」

「………515………」

「じゃ、後ろ乗れ。落ちないようにどっか掴んどけよ」


2つのカバンをかごに入れ、自転車に跨ると北城も後ろに跨る。掴めとは言ったものの、胴に腕を回されると恥ずかしい。まあ、北城が落ちないならそれでいい。

マンションまではだいたい5分ほどで着くため、それ程辛くはなかった。

マンションに着き、駐輪場に自転車をとめて中に入る。エレベーターに乗りると、北城が5階のボタンを押した。


「………1度発作を起こしたら12時間以内はいつまた発作が起こるか分からない。前の学校なら連れがたまに泊まってくれたから大丈夫だったけど………」


北城はそこでまた言葉を詰まらせた。今度はただ言いにくいだけのようだ。


「分かった。明日まで、いや発作が起きたら世話してやるよ」

「………悪いな、迷惑かけて。別に好きでお前を選んだんじゃないからな、勘違いするなよ………」


そう言って北城は顔をそらした。あれはツンデレとかいうのじゃなくてマジな目だったことに、少しだけ残念な気持ちになっていた。やっぱり、俺はコイツのせいで変わっている気がする。


5階に着き、左1番奥が515だ。扉を開け、北城はカバンのポケットに入っていたカードを玄関の扉にかざした。このマンションは普通の鍵とカードの2つがあって、どちらを使うもその人次第。

中はだいたい同じ造りで、やはりきれいに掃除されていた。


「入って」


玄関で靴を脱ぎ、廊下を真っ直ぐ行くとリビングになっていて、テレビやテーブル、ベッドも置いてあった。


「北城、飯どうする?」

「あたしはいらないから適当に頼んで」


そう言って、こっちに出前のチラシが入ったクリアファイルを投げてきた。


「いらないって、食べないと駄目だろ。どうせろくに飯食ってないんだろ」

「………しかたないな」


悩んだ結果、俺はカツ丼、北城は親子丼を頼んだ。10分ほどで届いたそれは、程よく温かくてうまかった。


「風呂入ってくる。覗くなよ」


北城は釘を刺して風呂場に向かった。誰が覗くかっての………。でも、内心ホッとしている。あれから発作のようなものは一切ない。あの発作は何なのだろう。気になったがどうにも出来ないわけで………なんて考えていると、一気に眠気に襲われた。いろいろあって今日はいつも以上に体力を消費したからか、抗えずに眠ってしまった。

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